ダラダラと出血が続いて生理が止まらない場合は、過長月経の可能性があります。経血量が多いと貧血になる可能性もあり、日常生活にも影響が出てしまうことも。生理が止まらない原因や受診の目安について説明します。
生理が長く続く場合は、過長月経や過多月経の可能性あり
正常な生理は8日以下、1周期あたりの総出血量が20~140mlとされています。(※日本産科婦人科学会雑誌第71巻第6号より)
生理期間が9日以上続く場合は過長月経、経血量が140ml以上の場合は過多月経といわれます。ただし、思春期や更年期の女性はホルモンバランスがゆらぎやすいため、正常範囲におさまらないこともあります。
そして、過長月経の場合は経血量が多いため、めまいや立ちくらみなどの貧血症状に悩まされることも。こうした身体的な不調がなかったとしても、長期間生理が続くことで、生活の質が下がってしまう可能性があります。
生理の出血が長く続く原因
生理の出血が長く続く場合は、以下の原因が考えられます。
・女性ホルモンバランスの乱れ
・無排卵周期症、黄体機能不全
・婦人科系の病気(子宮筋腫、子宮腺筋症など)
・子宮頸がん、子宮体がん
・子宮内避妊器具の使用
・妊娠や自然流産
女性ホルモンバランスの乱れ
女性ホルモンバランスの乱れが原因で、過長月経が起こっている場合があります。
無排卵周期症
無排卵性周期症は、月経のような出血はあるものの排卵を伴っていない状態のことです。月経周期が不順で、月経期間が長かったり、短かったりします。
黄体機能不全
黄体機能不全とは、女性ホルモンの分泌不全により排卵後も子宮内膜が変化しなかったり、完全に剥がれ落ちずにダラダラと出血が続いたり不正出血がでる状態です。
婦人科系の病気
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、子宮がんなどの可能性があります。
・子宮筋腫
子宮筋腫は子宮の壁にできるこぶのような良性の腫瘍で、筋肉が異常増殖したものです。
子宮腺筋症とは、子宮の筋肉内に子宮内膜やそれに似た組織ができてしまう病気です。生理のたびにその組織が収縮と出血を起こすので激しい痛みを伴います。
子宮内膜症は、子宮以外の卵巣などに子宮内膜のような組織ができてしまう病気です。炎症や痛み、癒着などを引き起こし、不妊の原因になることもあります。
・子宮がん
子宮がんは子宮体がんと子宮頸がんの2種類があります。子宮体がんは早期で出血の症状がみられることが多いですが、子宮頸がんは不正出血が確認されるときには症状が進行していることが多いです。
子宮内避妊器具の使用
子宮内に挿入することで避妊効果があるIUS(ミレーナ)やIUDによって、不正出血が起きることもあります。
妊娠や自然流産
気づかないうちに妊娠していて流産していた場合、出血がだらだらと続くことがあります。生理周期と重なっていた場合、生理が長引いていると思ってしまう可能性があります。
婦人科を受診する目安
婦人科系の病気が原因の場合は、根本的な病気の治療が必要です。病気が原因でなかった場合も、出血量が多いために貧血を引き起こす恐れがあります。生理日数が9日以上になる月が続く場合は、婦人科を受診しましょう。
過長月経の治療
過長月経の治療は、原因や治療方針によって異なります。
薬物療法
止血剤
生理の出血が多いときにトラネキサム酸を内服すると、出血量を減らせます。
低用量ピル
低用量ピルは、子宮内膜の増殖を抑えて薄く保つ作用があるため、出血量を減らす効果があります。生理の量を減らすだけでなく、生理痛の改善効果もあります。(保険適応されるのは月経困難症の場合のみです)
GnRHアナログ製剤
GnRHアナログ製剤は、女性ホルモンの分泌を一時的に抑えることで月経と排卵をとめて閉経状態を作ります。
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症などの子宮に関連した病気の場合は、女性ホルモンの影響で症状が出るので、女性ホルモンの分泌を止めることで病変部が大きくなるのを予防できます。
外科的療法
子宮に関連する病気が原因で過長月経になっている場合、病気を治療する必要があります。外科的療法には、病変部のみを取り除く方法と子宮や卵巣を摘出する方法があり、妊娠の希望や再発のリスクなどを考慮して治療方針を決めていきます。
9日以上の生理期間が続く場合は、婦人科を受診しましょう
過長月経や過多月経は、婦人科系の病気が原因の場合は、根本的な病気の治療が必要です。
9日以上の生理期間がある月が続いている場合は、早めに婦人科を受診しましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。