「生理用ナプキンを1時間くらいで交換しないと漏れが不安」「生理のときに血のかたまりが出る」。そんな人は、過多月経の可能性があります。過多月経の定義や症状、原因、治療法について説明します。
過多月経の目安や症状とは
正常な生理の場合、1回の経血量は20~140ccといわれ、140ccを超える場合は過多月経の可能性があります。経血の量の判断は難しいと思うので目安をお伝えすると、以下のような場合に過多月経の可能性があります。
経血量が多い生理2日目・3日目に、生理用ナプキンが2時間もたない
多い日であっても2時間に1回程度、生理用ナプキンを交換すれば、漏れることはあまりありません。2時間経たずにナプキンを交換しなければいけない場合は、経血量がかなり多いといえるでしょう。
レバー状のかたまりが出る
レバー状のかたまりが何度も出る場合は、過多月経の可能性があります。
本来、生理の経血はプラスミンという酵素によって、サラサラになって子宮から外に排出されます。しかし、過多月経で経血量が多い場合は、酵素の働きが追いつかず、サラサラにできなくなり、ドロッとしたレバー状の血のかたまりが出ることも。
また、経血の量が多いために貧血状態になりやすく、立ちくらみやめまいなどの不調が出ることも。身体的な症状以外に、経血が漏れて洋服が汚れてしまったり、ナプキンの交換を気にしたりするなど、精神的な疲れを感じる人もいます。
過多月経の原因は子宮に関連する病気や、女性ホルモンや血液の異常
過多月経の原因は、子宮に関連する病気の場合と、女性ホルモンや血液の異常が考えられます。
器質性過多月経(子宮に関連する病気が原因の場合)
以下のような病気が原因となっている可能性があります。
- 子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮にできる良性の腫瘍のことで、筋肉の塊(かたまり)です。がんのような悪性腫瘍ではありませんが、貧血・生理痛・不妊症の原因になることがあります。
子宮筋腫については、「子宮筋腫は30歳以上の20~30%にある。症状や原因、治療法を解説(医師監修)」の記事で説明しています。
- 子宮内膜症
子宮内膜症とは、本来子宮の中にあるはずの子宮内膜組織が、卵巣や腹膜などにも発生してしまう病気のことです。子宮内膜症については、「子宮内膜症の原因と症状、治療法について。生理痛が重い人は要チェック(医師監修)」の記事で説明しています。
- 子宮腺筋症
子宮腺筋症は、子宮内膜もしくはそれに似た組織が子宮の筋肉内にできてしまう病気のことです。
機能性過多月経(女性ホルモンの異常が原因)
女性ホルモンの乱れによって子宮内膜が厚くなったり、生理の回数や持続日数が増えて経血量が増えることがあります。
過多月経の治療法
過多月経を治療する場合は、婦人科を受診しましょう。診察によって過多月経の原因を特定し、医師と相談して治療方針を決めていきます。
具体的には、以下のような治療方法があります。
1.薬物療法
薬物療法には、以下のような方法があります。
- 止血剤
トラネキサム酸を生理の出血が多いときに内服することで、出血の量を減らすことができます。トラネキサム酸は、プラスミンの作用を抑える効果があります。
- 低用量ピル
低用量ピルは、子宮内膜の増殖を抑えて薄く保つことで出血量を減らす効果があります。生理の量を減らすだけでなく、生理痛を改善する効果もあります。(保険適応されるのは月経困難症の場合のみです)
- IUS(ミレーナ)
IUS(ミレーナ)は、女性ホルモンである黄体ホルモンが少しずつ溶け出てくる仕組みがある子宮内避妊器具で、避妊だけでなく過多月経の治療にも使用されます。
IUS(ミレーナ)から放出される黄体ホルモンには子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、子宮内膜が厚くなりにくいです。そのため、生理の量が減り、生理痛を軽くする効果があります。
IUS(ミレーナ)については、「IUS(ミレーナ)の効果、費用、注意点を解説(医師監修)」の記事でくわしく説明しています。
- GnRHアナログ製剤
女性ホルモンの分泌を一時的に抑えることで月経と排卵をとめて閉経状態を作るGnRHアナログ製剤などが処方されることもあります。
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症などの子宮に関連した病気の場合、女性ホルモンの影響で症状が出るため、女性ホルモンを止めることで病変部が小さくなることがあります。
2.外科的療法
子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症などによって過多月経になっている場合は、病気そのものを治療する必要があります。
外科的療法には、病変部のみを取り除く方法と子宮や卵巣を摘出する方法がありますが、妊娠の希望や再発のリスクなどを考慮して治療方針を決めていきます。
過多月経を見逃さないようにしよう
生理の量が多いと生理期間中は漏れを気にしたりして気が休まりません。経血量が多くて背ナプキンを頻繁に取り替えるのが難しい場合は、過多月経専用のナプキン(例:エリス朝まで超安心 クリニクなど)を使用してみてもいいでしょう。
過多月経は子宮に関連する病気が原因で起きている場合がありますので、経血量が気になる方は、早めに婦人科を受診しましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。