避妊に関する選択肢が増えることは、望まない妊娠を防いだり、PMSや生理痛から女性を解放したりなど利点がある一方、副作用やライフスタイルとのミスマッチがあり、すべての人を救う手段はまだありません。
それは避妊方法の最適解が、一人ひとり異なるからです。
世界初の、避妊のためのレビュープラットフォーム「The Lowdown」を作ったアリス・ペルトン氏は、16歳から低用量ピルを飲み始め、7種類以上のピルを試しても自分に合うものが何年も見つけられませんでした。
また、ホルモン系避妊薬がメンタルヘルスに与える影響に気がつくのに10年以上かかりました。彼女はこの経験から、自分に合った避妊方法を探せるプラットフォームを作りました。
避妊方法も集合知で選ぶ
イギリスでサービス展開しているThe Lowdownの調査によると、半数の女性が自分に合った避妊方法を見つけるのに苦労し、78%がホルモン系の避妊薬などで望ましくない副作用を経験していることが明らかになりました。
自分の身体に合わないものを使うと、生活や精神面に影響を与えることがあります。また、身体に合わないからという理由で、使用をやめてしまうケースもあるでしょう。
The Lowdown創業者のアリス・ペルトン氏は、自身が避妊薬の副作用に悩まされていたとき、友人に相談するか、インターネットの掲示板を読むか、医師に聞くか、という参考情報のサンプル数の少なさを課題に感じていました。
The Lowdownは「ピル版のトリップアドバイザー(観光情報を口コミで比較できるサイト)」という手軽さを売りにしており、何千ものレビューをフィルタリングして検索できます。さらに、専門家によるオンライン相談とピルの販売も行っています。
多くの人々の意見をもとにした集合知が魅力のThe Lowdownですが、あくまでもさまざまな選択肢を利用する上での判断材料にとどめ、実際に避妊方法を決める際には医師の診察を受けることが推奨されています。
イギリスの多様な避妊方法
The Lowdownでレビュー対象になっている避妊方法は多様です。
- 低用量ピル
- 避妊リング(IUD)
- IUS(ミレーナ)
- 男性用コンドーム
- 皮下埋め込み型避妊器具(NEXPLANON)
- Natural Cycles(フェムテックデバイス&アプリ)
- アフターピル(緊急避妊薬)
- 皮膚へ貼付する避妊パッチ
など
この中には日本では馴染みのないものもいくつかあります。
日本は男性主導のコンドーム使用が多いという調査結果がありますが、女性が自己決定するための選択肢が日本でも増えれば、より主体的な意識へと変化が起こるかもしれません。
The Lowdown内の人気の避妊方法のトップ5は、Hormonal coil(IUS、日本ではミレーナと言われる黄体ホルモンを放出する子宮内避妊器具)、Copper coil(避妊リングと言われる銅付加IUD)、Progesterone only / Mini pill(プロゲステロンのみのピル)、Natural Cycles(体温を測定し、データ入力するフェムテックアプリ)、Combined pill(マーベロンやヤスミンなどの一般的な混合型経口避妊薬)が並んでいます。
また、The Lowdownでは以下のようなレビュー投稿者の属性から避妊方法を選ぶことも可能です。
- レビュー投稿者の年齢
- レビュー投稿者の身長
- レビュー投稿者の体重
- 子どもがいるかどうか
- 現在使用中かどうか
- 気分への影響
- 生理への影響
- 性欲への影響
- 体重への影響
実際に使っている人々のレビューがあるので、「ピルを毎日忘れずに飲める自信があるか?」「IUSまたはIUDを子宮内に装着することに違和感がないか?」など、自分のライフスタイルや価値観によって選べるメリットがあります。
また、ホルモン系避妊薬が身体に合わなかった人の場合、どのような非ホルモン系の避妊方法があるのかについて知ることができます。
婦人科に行った際、医師がすべての選択肢を教えてくれて、じっくり話し合って決めるのが理想的ですが、実際の診察は限られた時間内で行われることも多いです。
そのため、自分に合ったものを見つけるために「予習」をしておくことは、より良い選択肢を見つける手がかりになります。
リプロダクティブ・チョイスに必要な知識と機会
妊娠するかどうか、いつ妊娠するかは、女性の自由です。
他人の干渉を受けずにどのような避妊方法が自分に合っているかを決めるのも、女性自身の権利です。
セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)の基本概念に含まれるリプロダクティブ・チョイス(性と生殖に関する選択)は重要な概念ですが、知識がなければ情報にアクセスすることも、手段を選ぶことも困難です。
自分に合った選択肢を自己決定するためにはやらなければいけないことがあります。
妊娠に対する自分の考えと向き合って避妊に必要な知識を学び、病院に行って医師と適切な方法を話し合い、薬の服用や定期的な検診を受ける必要があります。
すベての生物学的女性にとって、身体の制約のために知るべきことは多くあり、適切な避妊方法は、薬やライフスタイルとの相性など、とりあえず試してみないと分からない場合も多いです。
選択肢を検討できるThe Lowdownのようなレビュープラットフォームは日本にもできて欲しいところです。
フェムテックとは?
Female(女性)× Technology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、生物学的女性の健康課題をテクノロジーで解決するヘルスケアのジャンルです。
「生理」「更年期」「婦人科系疾患」「不妊・妊よう性」「出産・育児」「セクシャルウェルネス」などのカテゴリがあり、それぞれの問題をタブー視せず、前向きに解決するためのサービスやアイテムが数多くあります。フェムテックの市場規模は、2025年には5兆円規模に成長するといわれています。