望まない妊娠を防ぐ避妊は、以下のようにさまざまな方法があります。妊娠を防ぐメカニズムや注意点、メリット・デメリットをそれぞれ説明します。
- 低用量ピル
- IUS(ミレーナ)
- 避妊リング(IUD)
- コンドーム
- 不妊手術
低用量ピル
低用量ピルには、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲスチン(プロゲステロンの類似物質)が含まれています。正しく服用していれば、避妊効果は99.7%と高いです。
生理痛の改善やPMSの緩和などの効果も期待できるため、避妊目的でなくても服用する場合もあります。
使用方法は、1日1錠を同じ時間に服用すること。時間は何時でも大丈夫ですが、習慣化しやすいように時間帯を決めるのがおすすめです。
低用量ピルの作用
低用量ピルを服用すると、以下の作用が起きて避妊効果を発揮します。
- 排卵をうながすホルモンの分泌を抑え、排卵がおこらないようにする
- 子宮内膜の増殖を抑え、着床しづらくする
- 子宮頸管の粘液を変化させ、精子が子宮へ入りにくくする
低用量ピルの副作用(デメリット)
ピルを服用すると血液が固まりやすくなるため、服用していない人と比べて、血栓症や心筋症、脳卒中などのリスクが2~4倍になるといわれています。ただし、発症するのは1万人に対して6~9人程度なので、確率はそこまで高くありません。
低用量ピルの注意点
ピルの服用するときは禁煙しましょう。ピルの副作用である血栓症のリスクは喫煙していると高まるためです。
ピルは性感染症を防げません。性感染症予防のためにコンドームを併用しましょう。
低用量ピルに関するくわしい情報や飲み忘れを防ぐポイント、処方してもらう方法などは「ピルを服用する8つのメリット」の記事でくわしく紹介していますので、確認してみてください。
IUS(ミレーナ)
IUS(ミレーナ)とは、子宮内黄体ホルモン放出機能のついた子宮に挿入する避妊器具です。避妊効果は99.9%と非常に高く、効果は5年間持続します。
避妊だけでなく、過多月経や月経困難症の治療にも使用されます。
IUSのメリット
IUSは避妊効果が非常に高いです。ピルは血栓症のリスクがあることから、40歳以上や肥満体質、タバコを多く吸う方はピルを服用できません。しかし、こうした方々もIUSを挿入できます。
IUSの副作用(デメリット)
IUSを挿入して数日間は出血、下腹部痛、腰痛の症状が出ることがあります。装着後の数カ月は何度か不正出血を経験する人も。不正出血には個人差があり、半年ほど不正出血がある人もいます。
IUSの注意点
子宮筋腫や子宮内膜症、子宮の形がIUSに適していないなどの理由で、IUSを挿入できないこともあります。まずは婦人科の医師に相談してみましょう。
IUSは性感染症を防げません。性感染症予防のためにコンドームを併用しましょう。
IUSについて、さらに詳しい情報を知りたい人は「IUS(ミレーナ)の効果、費用、注意点」の記事を確認してみてください。
避妊リング(IUD)
避妊リングはかつてリング型の器具が多かったなごりでリングとよばれていましたが、現在ではIUDと呼ばれることが多いです。避妊効果は99.2~99.6%と高く、装着して2~5年間は効果が持続します。(使用するメーカーによって持続年数が違います)
IUDの作用
IUDは子宮内に挿入することで、子宮内の環境を変化させて、精子の運動を阻害し精子・卵子の受精を防ぎます。
IUDのメリット
IUDのメリットはホルモンが付加されていないため、ホルモンによる副作用が起きにくいことです。そして、授乳中でも使用できます。(ピルは血栓症のリスクがあり、産後半年は使用できません)
IUDの副作用(デメリット)
月経異常、過多月経、不正出血などの副作用が起きる場合があります。症状がひどい場合、すぐ医師に相談してください。ごくまれに、骨盤腹膜炎、子宮外妊娠、子宮穿孔などが起こることがあります。
IUDの注意点
過多月経や性感染症がある、子宮頸がんや子宮内膜がん、原因不明の性器出血、子宮外妊娠を経験している人はIUDの使用を避けた方がいいです。くわしくは婦人科の医師に相談しましょう。
IUDは性感染症を防げません。性感染症予防のためにコンドームを併用しましょう。
IUDについてのくわしい情報が知りたい人は、「避妊リング(IUD)の効果、費用、装着の流れ」の記事を確認してみましょう。
コンドーム
コンドームは避妊に使用されるうすいゴム製の袋のことで、日本ではもっとも一般的な避妊方法です。避妊率は85~98%です。
コンドームの作用
男性の性器にかぶせることで、射精時に精子が子宮内に入ることを防ぎます。
コンドームのメリット
コンドームを使用すると粘膜が触れないため、性感染症の予防効果もあります。薬局やコンビニで手軽に入手できます。
コンドームの副作用(デメリット)
コンドームに使用されているラテックスゴムが原因となり、アレルギー症状が出ることがあります。
また、ほかの避妊方法と比べて避妊効果があまり高くありません。コンドームが破れていたり、途中で外れたりするなど正しく使用できないケースがあるためです。
不妊手術
不妊手術とは、避妊を目的に行う手術のことです。女性の場合は卵管をふさぐ、もしくは卵管を摘出します。男性の場合は精管を切断して端を閉じます。避妊効果は約99%です。
不妊手術の作用
卵子の通り道となる卵管や、精子の通り道となる精管を塞ぐことで、精子や卵子が放出されないようにして妊娠を防ぎます。
不妊手術の副作用(デメリット)
ごくまれに、手術によってほかの臓器が傷つく可能性があります。
不妊手術のメリット
不妊手術を受けた後は、避妊効果が継続します。
不妊手術の注意点
一度不妊手術をした後は元に戻すことは難しいです。元に戻したい場合は卵管再建術という方法もありますが、妊娠できない場合もあります。不妊手術を受ける際は、将来のことをよく考えてパートナーと相談してから決めてください。
また、性感染症予防のためにはコンドームを使用しましょう。
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避妊方法は、それぞれ作用が違い、メリットやデメリットがあります。自分に合った方法をよく考えてみましょう。どの方法を選択するべきか迷うときには、婦人科の医師に相談してみましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。