日本での成人は20歳以上だ。しかし2015年の改正公職選挙法によって、18歳以上の国民が選挙権を持てるようになった。

社会に参加する権利を持つ18歳が、日々どのように考え、行動しているのか。日本財団は生活におけるさまざまな分野で「18歳意識調査」をおこなっている。7月28日に公開された第39回の調査テーマは、ずばり「性行為」について。

17歳〜19歳の男女1000名におこなったインターネット調査で、現在の学校の性教育に求める点や、避妊に対する考え方、不安点などが明らかとなった。

「避妊は必要、でも相手とタイミング次第」

「妊娠を望む性行為以外で、避妊の必要性を感じる」と回答した人の割合は全体の94.6%にのぼった一方で、性行為における避妊の必要性について「いつも感じる」と回答した人は84.7%にとどまり、性行為の相手やタイミングなどによって恣意的に意思決定されていることが浮き彫りとなった。

Q.避妊の必要性をどの程度感じているか

写真:日本財団の調査レポートより

では、ふたりの間の”避妊・デシジョン・メイキング”は、誰がどのようにしているのだろうか。

約6割の男性が、「自分の判断でコンドーム使用を決めている」

Q.性行為の際に避妊をするのは相手ですか。あなたですか。

写真:日本財団の調査レポートより

調査結果では、約6割の男性が「自分が主体となってコンドームの使用を決めている」と回答し、またそれに呼応する形で56%の女性が「相手が決めている」と回答している。避妊の方法にはコンドーム以外にも選択肢が存在するが、性感染症はコンドームの正しい装着によってのみ防ぐことができる。

この男性の独断と受け身な女性の意思決定という構図は、どのような心理的背景から成り立っているものなのだろうか。

「避妊の必要性を感じない」とした回答者からは、以下が主な理由として挙げられた。

Q.「避妊の必要性を感じない」と回答した人、その理由は?

写真:日本財団の調査レポートより

「相手に気を使っているから(29.8%)」
・「大丈夫だと思うから(27.7%)」
・「自分が感じやすいと思うから(19.1%)」
・「面倒くさいから(12.8%)」

使用を決めるのが男性主体になってしまう背景には、コンドームは男性が用意して持っているもの、という意識も関係しているかもしれない。自分に合った好みのコンドームをふたりで選ぶことによって、安全な性行為の質を高められる。

相手に”気をつかう”方向性は、このような認識が浸透していく中で少しずつ「リスクを負わせること」から「安心・安全の追及」へと変わっていくかもしれない。

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正しいコンドームの使用に「不安ある」、全体の約7割

Q.コンドームのサイズや装着方法、タイミングなど正しい避妊方法かどうか不安を感じたことがありますか?

写真:日本財団の調査レポートより

男女ともに、正しいコンドームの使用方法やタイミングなどをめぐって「不安に感じる」と回答した割合は過半数(69.7%)となり、女性は7割を上回った。

学校の性教育では感染症など、性行為に伴うリスクばかりが強調され、実際の避妊方法やコンドームの正しい使い方を具体的に教えていないという問題がある。

今回の調査でも、性教育に対する意見では「避妊方法を具体的に知りたかった」という回答が58.1%にのぼった。

さらに深めて欲しかったと思う内容については、恋愛という人間関係や健康な性的関係の構築に関することが最多となり(40.9%)、現在の性教育が抽象度が高い(65.6%)という意見を補完するかたちで、性行為の知識や仕組みについての具体的な指導(37.6%)やジェンダー平等について(37.1%)を教えて欲しいという回答が寄せられた。

Q.学校での性教育についてどう感じましたか?

画像:日本財団の調査レポートより

Q.学校での性教育で、もっと深めてほしかった内容は?

画像:日本財団の調査レポートより

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避妊の悩み、「誰にも相談しない」が最多

Q. 妊娠や性感染症、避妊方法への不安について誰に相談しますか?

画像:日本財団の調査レポートより

性に関する不安や悩みがあるとき、誰に相談するのかは重要な問題だ。

妊娠やその兆候に対する悩みに関して相談相手として挙がったのは、男女ともに「母親」が最多となり(45.7%)、次に「友人」(35.3%)、「父親」(17.3%)が続いた。しかし同時に、「誰にも相談しない」と回答した人は17.4%にのぼり、父親と答えた人をわずかに上回る結果となった。

そして注目したいのが、避妊方法に対する不安に関する相談相手。

前述の通り避妊方法に対して不安を抱えている人は7割にのぼっているが、そのうち「誰にも相談しない」という回答が54.6%となり、過半数を占めたのだ。

日々小さなことから対話を重ねていれば不安が減り、また避妊失敗や感染症のリスクも未然に防止できるかもしれない。

妊娠の兆候など、いざというときに頼れ、助けを求められる大人がいることは欠かせない。しかし学校教育や家庭で性行為自体がタブー視されていることもあり、性行為に対する不安を気軽に両親に相談できないという10代の本音が窺い見えた。

緊急避妊薬の薬局購入「賛成」が70%超え

緊急避妊薬(アフターピル)の服用は、性暴力等による望まない妊娠を防ぐほか、避妊しなかった・失敗してしまったときなどに有用な選択肢だ。

女性ホルモンが多く含まれている緊急避妊薬には、排卵を抑制したり、遅らせたりする効果があり、72時間以内に服用することで妊娠の確率を下げられる。性交後から時間が経つほど効果が落ち、薬の服用はなるべく早い方が効果が高いとされている。

【関連記事】アフターピル(緊急避妊薬)の基礎知識。効果や入手方法、費用など(医師監修)

しかし現在の法律では、医師の処方箋なしでは購入することができず、産婦人科の休日や予約が急に取れないときなど、緊急避妊薬へのアクセスを断念せざるをえず妊娠してしまう人も多い。

避妊に関する相談を「誰にも相談しない」と答えた回答者が一定数存在する現状の中で、緊急避妊薬を処方箋なしで薬局で入手できることに賛成と答えた割合は71.4%となり、反対の5.5%を大きく上回る結果となった。

Q.緊急避妊薬を処方箋なしで、薬局で入手できるようになることについてどう思いますか?

画像:日本財団の調査レポートより

賛成と答えた人の中で挙げられた最多の理由は「妊娠には避妊の失敗だけでなく、時に性暴力被害など急ぎ対応が必要なケースもある」(78.2%)であり、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)の意識が浸透していることがわかる。

また予期せぬ妊娠を避けるための選択肢を増やすこと自体に賛同するという意見(65.1%)や、医師の処方箋を得るまでに時間がかかってしまうことを問題視する意見(45.1%)も多く寄せられた。

画像:日本財団の調査レポートより

性に関する事柄に不安を感じている10代が多い中、それら不安要素をどのように教育の場で減少させ、生じた悩みを社会全体や制度で受け止め、またパートナーや家族との対話を通じて解決していくのか。

性的関係をタブー視して健全な心身の育成を阻害する社会ではなく、十分かつ信頼できる知識と、開かれた対話の場を広く提供できる社会であることが求められている。

第39回「18歳意識調査」性行為

・対象:全国の17、18、19歳の男女(各人が自認するほうの性での回答)
・調査人数:1000人
・調査期間:2021年6月17日(木)~ 6月24日(木)

調査結果の詳細はこちら

<7月29日16時追記>
ランドリーボックスでは、今回調査を実施した日本財団に「性別の選択肢は男女のみであるか」について質問した。日本財団によると「ジェンダーの選択肢は『男』『女』を選べるのみで、『その他』などの項目は設けていなかった」とのこと。性的マイノリティの方の場合「各人が自認する性別を選ばれているものと思います」としている。また「今回いただいた質問を踏まえ、次回以降の調査について、性別の選択について改めて検討したいと思います」とコメントを寄せている。

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