文部科学省は、2021年4月16日に子どもを性暴力の当事者にしないための「生命(いのち)の安全教育」の教材等を公開した。子どもの性被害が増えるなか、文部科学省と内閣府が連携し有識者の意見も踏まえて作成したもので、国として初めての取り組みとなる。

2020年6月11日に開催された「性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議」で、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」が決定。令和2年度から4年度までの3年間を性犯罪・性暴力対策の「集中強化期間」として、教育・啓発の強化を速やかに進めると明記された。

今回の文部科学省の発表によると、「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を踏まえ、子どもたちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、全国の学校において「生命(いのち)の安全教育」が推進されることとなったという。

文部科学省は教育機関において、「生命(いのち)の安全教育のための教材」及び指導の手引きの積極的な活用を呼びかけている。

教材は、「幼児期」「小学校(低・中学年)」「小学校(高学年)」「中学校」「高校」「高校(卒業直前)、大学、一般」の6種類が用意されており、それぞれの年齢層に合わせた言葉やイラストでわかりやすく説明されている。文部科学省のサイトからダウンロードできる。

本記事では、各年齢別の教材をかいつまんで紹介する。

幼児期の教材からプライベートゾーンについて教育

生命の安全教育教材(幼児期)では、「みずぎでかくれるところはじぶんだけのだいじなところだからだよ」と水着で隠れる部分を大事なところ=プライベートゾーンであるとの内容が記載されている。

プライベートゾーンは自分だけの大事なところでなく、他人のプライベートゾーンに触れてはいけないという内容も盛り込まれている。

また、被害を受けたときの対処法についても記載があり、加害者にも被害者にもならないように教育内容に配慮がされており、小学校低学年向けも内容はほとんど同じだ。

小学校高学年向けにはSNS利用への注意喚起も

小学校高学年向けの教材ではプライベートゾーンの概念に加えて、自分と相手を大切にし、より良い関係を築くためのワークシートも用意されている。

人との距離感について、体と心で分けて説明がされている。どちらも「自分で決めていい」とし、自分を大事にすることが教育内容に盛り込まれている。

また小学校高学年は携帯電話を持ち始める年代ということもあり、SNS利用の際に気をつけるべきことについても記載されている。

中高生には「より良い人間関係」と「性暴力」について

中学校、高校向けの教材はそれぞれ小学校向けのものからは大きく発展し、良い人間関係とは何かを考えるワークから始まる。距離感についての記述の後に性暴力について学ぶ内容になっている。

「悪いのは加害者です」「被害にあった人は悪くありません」と記載があり、すでに被害に遭っている生徒がいるかもしれないことに配慮がされた構成になっている。また、デートDVやSNSを通じた被害、セクシュアルハラスメントなど性暴力の具体的な例についても詳しく説明されている。

性暴力に遭うことでの心身への影響や、性暴力がなぜ起こるのか、また二次被害についても具体的にスライドで説明されている。

性暴力に遭った際に取るべき行動についてのスライドもあり、ここでも「あなたは決して悪くありません」との記述で再度強調がされている。

友達が被害者であった場合、また友達が加害者であった場合に取るべき行動も説明されており、傍観者とならないための方法も提示されている。

「若年層の性暴力被害予防月間」を実施予定

文部科学省によると、令和3年4月から若年層の性被害に関する問題を広報啓発するのに適した毎年入学・進学時期である4月を若年層の性暴力被害予防のための月間とするという。

内閣府ホームページに掲載のポスター・リーフレットを、学校や大学などにおける掲示や窓口等への設置、ガイダンスや防犯指導時の配布資料等として活用するよう呼びかけている。

また、内閣府ホームページにはポスターのほかにも、性犯罪・性暴力で悩んでいる人向けの相談窓口や、卒業を迎えた高校生向けの「性暴力被害の現状や相談先」についてのオンラインイベントのアーカイブ動画などが掲載されている。

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