新型コロナウイルス感染症パンデミックの長期化にともない、女性の経済的な困窮も世界各地で顕在化している。日本においてもコロナ禍による失業や収入減少などの経済的な要因や、さまざまな理由から、生理用品へのアクセスが難しくなっている。国内でもそんな「生理の貧困」が報道されるなど、少しずつ注目を集めつつある。

世界70カ国以上で活動する国際NGOプラン・インターナショナル(以下、プラン)は、生理をめぐり若い女性が置かれている現状を可視化するため、先立ってイギリスとアメリカで調査を実施していた。

今回は日本において15〜24歳までのユース女性2000人を抽出し、合計15問の設問に対する回答結果を分析。2021年4月報告書にまとめ、「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査」レポートとして発表した


「生理用品の購入をためらったことがある」「購入できなかった」は36%、そのうち「恥ずかしいから」が8%

調査結果からは「生理の貧困」という経済的困窮だけでなく、生理のスティグマ化(恥とみなされること)などのネガティブな感情が、ユース女性の機会損失につながる可能性があることが明らかになった。

「購入をためらったことがある・購入できなかった」と回答した割合は、全体の35.9%に上る結果に。

その理由としてあげられたのが「収入が少ないから」(11.2%)、「生理用品が高額だから」(9.0%)、「お小遣いなど自分が使えるお金が少ないから」(8.7%)、「他のことにお金を使わなければならないから」(8.4%)といった経済的な要因にとどまらず、「恥ずかしいから(購入できない、親に購入を頼めない)」というスティグマに起因する理由が全体の8.9%を占めたことは注目に値する。

生理用品の購入・入手をためらった経験の有無=プラン

10人に3人が生理によって遅刻・欠席・早退したことがあると回答

「遅刻・欠席・早退した経験がある」と回答した人は527人にのぼり、全体の26.4%を占め、回答者のうち10人に約3人が、生理によって遅刻・欠席・早退した経験があることが明らかになった。このことは、一定数の女性が、生理により機会を失った経験があることを表している。

生理が理由で学校や職場を休んだ経験=プラン

生理に関する嫌な思いの半数以上は、忌避感・嫌悪感から

生理に関して嫌な思いをした理由として最多だったのが「経血(生理の出血)が服などについたり、シミになったりしたこと」(48.5%)、次に「替えの生理用品がなくて困ったとき」(34.6%)と、経血をめぐる経験が顕著だった。

生理に関して嫌な思いをしたことがあるか=プラン

一方で、生理期間であることを「恥ずかしい、知られたくない」と感じる生理のスティグマ(恥とみなされること)あるいは、「トイレを使用することをためらう」「サニタリーボックスを汚いと思う」など生理そのものへの忌避感・嫌悪感に関する回答は50%以上にのぼった。

圧倒的多数のユース女性が「生理」についてネガティブな印象

生理になることが「つらい」「嫌だ」と感じるネガティブな選択肢(黒字)と、「嬉しい」「問題ない」とのポジティブな選択肢(赤字)の中で、肯定的な選択肢を選んだ回答者は各設問共に10%未満であり、回答者の圧倒的多数はネガティブな選択肢を選んだ。

生理について感じること=プラン

生理になることが「つらい」「嫌だ」と感じるネガティブな選択肢(黒字)と、「嬉しい」「問題ない」とのポジティブな選択肢(赤字)の中で、肯定的な選択肢を選んだ回答者は各設問共に10%未満であり、回答者の圧倒的多数はネガティブな選択肢を選んだ。

アドボカシーグループリーダー 長島美紀氏

日本のユース女性の生理に関する調査結果からは、女性にとって生理がネガティブなものとして捉えられていること、そして一部のユース女性が購入できなかったり、ためらった際の理由として、経済的課題があることが分かりました。また、購入をためらう理由に「恥ずかしい」という気持ちがあることも見えてきました。

女性は閉経までに約40年間、生理という現象とつき合い続けます。女性の健康や栄養面などの改善は、女性が生理になる回数を激増させました。生理が日常である一方で、生理に関する話は未だにタブー視され公の場で話すことが難しいことから、女性たちが抱える経済的、心理的な問題も共有されていない状況です。

生理をめぐる問題を可視化することは、生理があるがために女性たちが直面する問題を明るみにし、問題解決を考える糸口となります。生理をめぐる議論を通じて、より多くの方々に女性が置かれている現状と課題について考えていただけるとことを願っています。

アドボカシーグループリーダー 長島美紀氏=プラン

「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査」フルレポートはこちらから

【参考資料】

イギリスのプランによる調査レポート

・ Period Poverty and Stigma(生理の貧困とスティグマ) 2017年

・ Period Poverty in Lockdown (ロックダウン下の生理の貧困) 2020年

アメリカのプランによる調査レポート

・ Breaking Period Stigma(生理にまつわるスティグマを克服するために) 2021年

New Article
新着記事

Item Review
アイテムレビュー

新着アイテム

おすすめ特集