ここ数年、生理をはじめ、女性の健康について活発にメディアに取り上げられ、オープンに議論されるようになってきたように感じている。ひとりで抱え込む問題から、社会で考える問題へ。我慢するものから、積極的に痛みや不快感を減らすものへ。そう変わっていく様子が鮮やかに見えて、時代の変化を感じている。

その中でも、もっと議論されてほしいのが、快適さを得るには、痛みを軽くするには、経済的負担が伴う、という事実。私は、父が精神障害を抱えており、かなりの貧困家庭で育ったというバックグラウンドから、この問題を直に感じてきたひとりである。

25歳となった今でも、やはり、女性の健康や生理を快適にするといった情報へアクセスするときに、なんとなく、目に見えない壁というか、膜のようなものを感じる。関心はありつつ、クリックした先に、経済的負担をともなうという情報が用意されているのが、感覚的にわかってしまうからだ。

今回は、数ある生理と貧困にまつわるエピソードの中から、大学生時代を振り返って書いてみようと思う。

ひどい生理痛に耐えながらの極貧生活で生理が止まった

11歳で初潮を迎えてから、私の悩みはとにかく、生理痛がひどいことだった。

下腹部の鈍痛や、恥骨の軋むような痛みには本当に悩まされた。夜中に痛みで起きると、手や足の先は凍るように冷たい。痛みで眠れず、慌てて市販の鎮痛剤を飲むが、2時間ほどのたうち回って、ようやく痛みが和らぐ。生理がくるたびに、そんな日々を過ごしていた。

母や姉からは、「生理はそういうものよ。将来赤ちゃんを産むために我慢するしかないの」と言われ、毎回白湯とカイロを渡されていた。

Photo by John-Mark Smith on Unsplash

高校を卒業すると、実家を離れ格安シェアハウスで生活することになる。私の父は精神障害があり、定職に就くことができなかった。そのため、幼少期から極貧生活をしてきたのだが、大学に合格したあともやはり、経済的に困窮する状態は続いた。

シェアハウスは寝室にエアコンがなく、熱帯夜が続いて熱中症になったり、個人のスペースもなく、騒音トラブルも絶えなかった。住環境から来るストレスから、大学1年生の秋に、急性胃腸炎になり救急車で運ばれた。その後も体調は回復せず、2カ月の間に体重が急激に減少した。

身長170センチに対して40kg台半ばから後半を行ったり来たりしているうち、気が付くと生理が来なくなった。半年ほどはそのまま放置したが、周囲に相談すると「できるだけ早く婦人科に行ったほうがいい」と心配された。しかし私は病院に行かなかった。

生理が1年来なくても病院に行きたくなかった

そこには2つ理由がある。1つは中学生のとき、月経不順で婦人科に行ったときのこと。生まれて初めての内視鏡の検査が想像を絶する痛みで、それがトラウマとなり、2度とあの検査はしたくない思っていたからだ。2つ目は経済的な理由。胃腸炎の通院や検査費がかさんでおり、苦学生だった私はそれ以上、医療費にお金をかけたくなかったのだ。

しかし親や周囲に説得され、生理が来なくなって1年ほど経った頃、重い腰をあげて婦人科に行った。「子宮がピンポン玉くらいの大きさになっています。1年くらいでどうにかなることはありませんが、放置し続ければ取り返しのつかないことになる可能性があります」と告げられた。

Photo by Christina Victoria Craft on Unsplash

婦人科で検査をしたが異常は見つからず、ピルをすすめられた。しかし、1シート3000~4000円もかかると聞き、とても払える金額ではないと感じた。また、親から言われた「ピルを飲むと不妊になる」という全く誤った情報を真に受けて、飲んではいけないものと思い込んでしまったのだ。

月経を誘発させる注射を打つことになり、一度は来たものの、ひと月が経つとやはりまた来なくなる。ピルに手を出す気にもなれず、結局2年間、生理が来ないまま過ごした。その後、体重が50kg台になってから、自然と生理は戻ってきた。

生理痛の改善よりも、”いかにお金をかけないか”

ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、そこからまたあの生理痛地獄が再開する。

バイト中は恥骨が痛み、立っていられなくなる。エアコンの効いた教室では寒さで痛みが増し、授業も受けられない。明らかに生活に支障が出ていた。

市販薬を容量の倍飲んでも効かず、横たわりながら「これが毎月来るなら死んだほうがましだ」と本気で思ったこともある。ついに耐えきれなくなり、予約なしで受診できる婦人科に駆け込んだ。待合の椅子に座っていられず、横になって震えていた。検査を受けても、やはり異常は見つからず、すすめられたのはまたしてもピル。でもピルは高いから断り、ボルタレンという強めの薬を処方してもらった。確かに市販薬より効き目は良かった。

しかし、診察代が惜しくて処方された10回分のボルタレンを使い切らないよう、毎月、市販の鎮痛薬を飲むか、処方された薬を飲むかギリギリまで見極めた。夏でもカイロをお腹と腰に貼って、わざとジョギングして血の巡りを良くしては、市販の薬で乗り切れないか試行錯誤していた。

大学生時代は生理をラクにしようという発想すらなかったように思う。2年間生理が止まったときも、正直あまり深刻に捉えていなかった。”いかにお金をかけないか”という思いが先行するあまり、状況を改善しなければという思考を停止させていたのだ。

社会人になってやっと生理は我慢しなくてもいいとわかった

私の場合は、ピルや注射に頼らずに生理は戻ったが、もし戻らず放置し、本当に妊娠しづらい体になったり、健康上の問題が起きてきたら思うとぞっとする。

生理痛をはじめ、生理による生活への支障は”我慢するもの”という考えが凝り固まっていて、バイト中、経血量が多くてズボンに染みても、電車の席が空いていなくて、立ち眩みがして意識を失いそうになっても、頭の中に響くのは、「我慢しなきゃ、隠さなきゃ」の声だった。

社会人になり、生理の情報が盛んに供給されるようになった今は、生理のつらさを解決する選択肢があること、周囲に頼ってもいい問題なのだということをようやく知ることができた。

この生理痛との付き合い方を会得できたわけではないが、我慢し続けなければならない、という思いは弱くなったように思う。職場でも大変な仕事を代わってもらったり、休みをもらったり、不調を伝えたりしている。

経済的弱者は生理痛を和らげる手段にアクセスできない

Photo by Laundry Box

しかし、経済的にもっと余裕があれば、症状が深刻化する前に婦人科にかかったり、自分に合うプロダクトを探したりできるのにな、と思うことはやはり多い。

数十年付き合い続けなければならない生理という問題。PMSの期間も考えると月の3分の1~半分ほどの間、苦しまなければならない。仕事を休めない上に痛みを和らげる手段にアクセスできないというのが、経済的弱者の置かれている状況だと思う。

経済的弱者にとって、まだまだ、生理の負担を減らしたり、自分の健康を考えるということへのハードルは高い。

ひどい生理痛は、子宮内膜症などの疾患が隠れていることがある。無月経を放置すれば、身体的にさまざまな問題が起きる可能性もある。「生理がつらいときは、婦人科を受診しましょう」このような呼びかけは、少しずつ認知が広がってきてはいるが、医療費が高くて受診できない人が置かれている実情も知ってもらえたらと思う。

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