はじめまして。アクロストンと申します。
夫・妻である私たちは、2人とも医師で、小学生の子ども2人を育てています。
そして、子ども向け性教育のコンテンツを作成し、ワークショップや公立小学校での授業を行う活動もしています。

今回、「男子のための生理(月経)教室」を開催したので、その様子をお伝えします。

ことの発端は学校(公立小学校)からのこんな依頼。
「女子たちがつぼみスクールを受けている間に男子たちに何かやってください」

※つぼみスクール:ワコール主催の思春期の女の子たちの体の変化や下着の選び方などを学べる授業

だいぶざっくりな依頼(笑)。

もともと4年生の性教育の単元をはじめ保健の授業のご依頼をいただいていたので、信頼されているということかな。と良い解釈をし、私たちがやりたい男子のための性教育の授業を実施してきました。

名付けて【謎解き:避難所での生理用品の配り方】

対象は小5、小6の各学年2クラス、70名ほどの男子たち。

何故このような授業を開催したかというと、東日本大震災、熊本の地震の際の避難所で生理用品が適切に配られなかったところがあるという話が頭からはなれず、そのようなことは二度と起きてほしくないと思ったからです。

震災の時はこんなことを言う男性がいたそうです。

「生理なんて我慢すればいいんだ。汚らわしい」
「一人一つ(ナプキンの個包装を)配れば十分だろう」

もちろん実際の避難所では女性が分配を担当すれば良いとも思いますが、生理用品を適切に配分できるようになるぐらいには男子たちにも知識をつけてほしい。

そして生理について真剣に考えてみてほしいとの願いから今回の授業を開催しました。

そして、裏テーマとしては、この2つ。

①わからなかったら質問しよう
②説明書を読み込もう

生理について、当事者の女性より男性が知らないのは当然です。
知らなければ、女性に質問すればいいのです。質問に答えてくれる人がいなかったら、説明書をじっくり読むという手もあります。

それを実践してほしかったのが今回のワークです。

タイムテーブルはこちら

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①生理の基礎知識の確認
②男子が生理を学ぶ必要性についての説明
③班に分かれてミッションの確認
④シンキングタイム その1
⑤ヒントタイム
⑥シンキングタイム その2
⑦最終回答の時間。各班ごとに考えたこと、学んだことの共有
⑧質問タイム

Photo by acrosstone

では、ここから実際のワークの様子をダイジェスト版でお送りします。

①生理の基礎知識の確認

男子たちにどの程度生理知識があるのか確認するために「生理って何?」と質問しました。

「赤ちゃんを作ることと関係していて、お尻から血が出る」と一人の子から返答がありました。

予想していたよりも良い解答が出たので、内容を広げていきました。

「そうだね。生理は赤ちゃんがお腹の中に出来ることと関係しているね。赤ちゃんを育てる部屋の壁が分厚くなり、それが出てくるのが生理だったね」。

そして「ただ血が出るのはお尻からではないよ。女性の股のところには3個の穴があるのはみんな知ってる?」と聞くと、男子たちは「2個じゃないの!?」と驚きの様子。

うんちとおしっこの穴は知っていますが、膣つまり生理の血や赤ちゃんが出てくる穴のことは知らないわけです。この3個の穴のことを説明しました。

②男子が生理を学ぶ必要性について

どうしても男子にとって他人ごとになりがちな生理に真剣に向かい合ってもらうために丁寧に説明しました。

「生理は赤ちゃんが出来る仕組みと関係している。だから、男子のみんなは昔赤ちゃんだったよね。君たちに生理が来ることはないけれど、関係しているのだよ。生理について知るのは自分の体の仕組みを知るのと同じように大事なことだよ」

さらに話は続きます。

「生理には困りごとも多く存在するよ。生理の時にお腹が痛くなることがあるのは知ってるかな?」

驚いたことに約2割程度の子しかこのことを知りませんでした。

さらに「生理に関係して心が落ち込むことがあるのは知ってるかな?」
これにいたっては殆どの子が知りませんでした。

「こんな風に生理の時には困りごとが多い。だから君たちが生理について知っていることで周りの女性、お母さん、友だち、彼女、結婚相手が困っていた時にサポートできるかもしれない」このように伝えました。

③班に分かれてミッションの確認

男子たちには8班に分かれてもらい(クラスと学年はごちゃまぜ)、班ごとにミッションを確認しました。

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区内で震度7の地震が起こり沢山の人が○○小の体育館に避難中!

避難所では食事作りや救援物資をくばるなど小学生にもお手伝いがたくさんあります。
○○小の5、6年生は、この紙袋に入っている物を必要な人にくばる手伝いを頼まれました。

さて、どうする?

—-

謎解きゲームを少し意識したシナリオです(笑)。

シナリオと一緒に紙袋内にナプキン、タンポン、月経カップのうち一種類のものが入っています。男子だちはどれが自分の班に当たっているか分かりません。

このミッション解決の手助けとして質問用紙も配布しました。そこには「紙袋に入っているものは何?」「どうやって使うの?」「これが必要な人はどんな人?」「一人に何個くばる?」と書かれています。

Photo by acrosstone

④シンキングタイム その1

先ほどの質問に答えるべく5分間のシンキングタイムです。
まず紙袋に入っている生理用品を確認。みんな見たことのないものに「なんだこれ」といった感じ。

ナプキンやタンポンはパッケージのまま紙袋の中へ入れておいたので、はじめは慎重にみていました。パッケージを開けて確認していいことを説明すると…。

ここから男子たちのテンションが上がっていきます。見たこともない生理用品。その素材や機構に夢中になっていました。ナプキンをどうやったらパンツにつけられるか考える子、タンポンの使い方(特に外側の筒の構造)で四苦八苦する子。「なんでナプキンに模様が描いてあるの?」という質問も受けました。

そんな中、最も難しいと思っていた月経カップの班は、同封した説明書を読み込み、気が付けば月経カップの折り畳み方まで習得。「ここを折りたたんで膣に入れるんだよ」とお互いに使い方を確認していました。また、「この避難所では水は使えるの? 」と、月経カップ最大の利点、水で洗って再度使えることにまで気づいていました。素晴らしい…。

⑤ヒントタイム

クイズ形式でミッションを解決するヒントを確認。
生理の起こる年齢と終わる年齢、生理の頻度、継続する日数など。
テンションが上がっていたせいか、授業開始時と比べてポンポン答えが出ていました。

⑥シンキングタイム その2

ヒントタイムで得たものを基に最後の追い込み。
質問の回数も増えてきます。答えを埋められた班もちらほら。
先ほどの月経カップの班にいたっては折りたたみ方を研究していました。

⑦最終回答の時間。各班ごとに考えたこと、学んだことの共有

生理用品は8班中4班にナプキン、3班にタンポン、1班に月経カップと違うものを配っていたため、知識の共有も兼ねての最終回答です。

生理用品の名称と使い方はパッケージの使い方などを参考にしてどの班も大体正解。
共通して苦労していたのが一人に何個配るのか、という質問。

「ナプキンはなんとなく5個ぐらい配ればいいかな…」みたいな返答が続くなか、ある班が「大体5時間おきに交換(※)だから一日5個必要。5〜7日続くとして25〜35個」と、理路整然とした素晴らしい答えを出していました。

(※交換頻度はメーカーや商品によって異なります。例えば『エリス』のサイトによると、多い日で2~3時間おき、少ない日で3~6時間おきの交換を推奨しています)

この班の回答以降、生理用品の必要な数の出し方をみんな理解していき、とある班は余裕をもって少し多めに配布する、という使用する相手に配慮した解答まで出てきました。この回答の優しさよ…。

最後に、震災時の避難所で起きた生理用品のトラブルについて話しました。みんな生理用品をどうやって必要な人に配れば良いのか悩んだ後のせいか、そこまでの盛り上がりから一変、真剣にその問題について耳を傾けていました。

男子向け性教育の授業

私たちはもともと男女をわけての性教育というものには否定的でした。男の子も女の子の体のことを知る必要があるし、女の子も男の子の体のことを知る必要があるからです。そして、性のことは同性内の秘め事ではなく、お互いの当たり前の話としてしっかり話していけるようになってほしいからです。

しかし、今日のようなワークは女子がいると、女子に任せてしまったり、あるいは女子の目が気になって自由に発言ができなかったりすることもなる可能性が高いのは事実です。

のびのびと興味の赴くままに生理用品を手に取り、男子たちであーでもない、こーでもないと一生懸命考える姿を見ていたら、男子だけの生理教室というものもとても良い!と思いました。

というわけで、今回のように女子だけの授業の裏としての男子向け授業、あるいは男子校での授業、ご依頼お待ちしています!!

(本記事は、2019年7月18日note掲載「男子のための生理(月経)の教室」を編集し転載したものです)

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