HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を予防するHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)。HPVにはさまざまな型があるが、HPVワクチンは特にリスクの高いいくつかの型のHPVの感染を防ぎ、子宮頸がんなどの病気を予防する。

ここ数カ月でHPVワクチンの積極的勧奨の再開が決定すると同時に、積極的勧奨の差し控えにより無料接種の機会を逃した女性のキャッチアップ制度の実施方針が固まるなど、連日話題を集めている

ただ、本来HPVワクチンの無料接種は小学校6年生~高校1年生の女子を対象としている。その理由初交前のワクチン接種がもっとも効果が高いからだ。接種対象の年齢を過ぎてからのHPVワクチン接種には、果たして本当に効果はあるのだろうか。

HPVワクチンを打ち逃した当事者である1999年生まれの筆者が、今知りたいリアルな疑問を産婦人科専門医の柴田綾子先生に聞いてみた。

監修者プロフィール

淀川キリスト教病院 産婦人科専門医

柴田綾子

2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。https://twitter.com/ayako700

HPVワクチンの2価、4価、9価。その違いは?

——HPVワクチンには2価、4価、9価の3種類がありますが、それぞれの違いは何ですか?

柴田先生(以下、柴田):ヒトパピローマウイルス(HPV)には100種類以上のタイプ(型)があります。ワクチンの価は、感染予防できるHPVの型の数を表しています。価の数字が大きくなれば、より多くのウイルスのタイプを感染予防でき、子宮頸がんや、その前の段階(子宮頸部異形成)を予防する力が高くなります。

名前感染予防できるHPVの型添付文書の効果・効能
2サーバリックス16、18子宮頸がん、子宮頸部異形成
4ガーダシル16、18、6、11子宮頸がん、子宮頸部異形成、
外陰がん、膣がん、肛門がん、
尖圭コンジローマ
9シルガード916、18、6、11、31、
33、45、52、58
子宮頸がん、子宮頸部異形成、
外陰がん、尖圭コンジローマ
Laundry Box/参考:https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=9

2価は16型と18型のHPVの感染を予防できます。16型と18型は子宮頸がんの1番の原因なので、子宮頸がんの予防効果があります。

4価は2価の予防効果に加えて、尖圭コンジローマの原因となる6型と11型の感染を予防できます。尖圭コンジローマは、男性と女性の陰部にカリフラワー状のブツブツができる性感染症です。

9価は4価のカバーに加えて、31型、33型、45型、52型、58型の感染予防ができます。これらも子宮頸がんや異形成の原因となるウイルスのタイプなので、9価HPVワクチンを接種すると、子宮頸がんと異形成になるリスクを大きく減らすことができます。

——大人になってからHPVワクチンを打つ場合、おすすめ度の違いはありますか?

柴田:日本で小学校6年生~高校1年生の女子に無料接種しているのは、2価と4価のHPVワクチンです。その年代を超えてしまった人は、全て自費での接種になってしまいます。

(編集部注:キャッチアップ接種の対象はまだ決定していないが、最も幅広い年代であっても1997〜2005年生まれの女性を対象として厚生労働省が議論を進めている。)

子宮頸がんや異形成を予防する効果は、9価が1番大きくおすすめです。ただ、9価は2価と4価に比べて値段が高く、1回の接種に3.3万円ほどかかるため全3回の接種で9〜10万円の負担になります。このように値段がとても高いので、お財布と相談になると思います。

2価と4価は同じ値段であることが多いので、子宮頸がんや異形成に加えて尖圭コンジローマも予防できる4価の方がおすすめです。フランスの研究報告によると、尖圭コンジローマ、肛門がん、喉のがんを予防する効果は、4価と9価の間に大きな差は見られませんでした。

HPVワクチン接種の効果が高いのは26歳まで

——中高生の間にワクチンを打てなかった人が大人になってから打っても効果はありますか?また、何歳までの接種で効果があるのでしょうか?

柴田:26歳までにHPVワクチンを接種すると効果が高いと言われています。しかし26歳を過ぎてしまったらワクチンの効果がないというわけではありません。26歳を過ぎると少し低くなりますが、効果はあります。

スウェーデンでは、HPVワクチンを接種していなかった人と比べて子宮頸がんのリスクが、16歳までにHPVワクチンを打った人は88%のリスク減少、17~30歳にHPVワクチンを打った人は53%のリスク減少報告されています。

45歳までの人は、HPVワクチン接種による子宮頸がんや子宮頸部異形成の予防効果があることが研究でわかっています。

——私は現在22歳で、16歳の時に1回接種しています。3回とも打ち直した方がいいですか?残り2回で良いのでしょうか?

柴田:既に1回接種している方であれば、残り2回を接種し、合計3回接種すれば大丈夫です。

既に性交渉の経験があっても、HPVワクチンは効果がある

——性交渉の経験が既にあっても、HPVワクチンの効果は発揮されますか?また、性交渉経験後の接種の場合、どれほど効果が落ちますか?

柴田:たしかにHPVワクチンは初めての性交渉の前に打つのが1番効果が高いと言われていますが、性交渉の経験が既にあってもHPVワクチンの効果はあります。

ただ、性交渉によって既にHPVに感染している場合、その後にHPVワクチンを接種しても、感染したウイルスの型に対しては治療したり排除することはできません。性交渉の回数やパートナーの数が増えるとHPVワクチンの効果は減りますが、それを具体的に研究するのは難しいため研究自体があまりありません。

——結婚などによってセックスパートナーが固定されている場合は、HPVワクチンが未接種であっても打たなくて良いのですか?

柴田:自分だけではなく、パートナーも自分以外にセックスパートナーがいなければ、HPVワクチンを接種しなくても、子宮頸がん検診を2年に1度受けていただくだけで大丈夫かもしれません。

ここで難しいのは、今はセックスパートナーが固定されていても、将来はパートナーが変わるかもしれない可能性があることです。また、お互いのセックスパートナーが1人だけである確証を持てるかなど、難しい話かなと思います。

HPVワクチンを接種していない方は、必ず2年に1度子宮頸がん検診を受けてください。またワクチンの効果は100%ではありませんので、HPVワクチンを接種してくださった人も、必ず2年に1度子宮頸がん検診を受けてください。

ワクチン接種の有無に関わらず、必ず2年に1度の子宮頸がん検診を

——子宮頸がん検診の頻度は2年に1度で十分なのでしょうか?手遅れになったりしませんか?

柴田:子宮頸がんは、HPVの感染から数年から数十年かけて子宮頸がんになると言われています。子宮頸がんになる前に、HPVの持続感染により子宮の入り口の細胞の形が変わる子宮頸部異形成になります。

このように多くの子宮頸がんの経過は時間が長くかかることが多いため、2年に1度の検診で大丈夫だと考えられています。

ただし、子宮頸がん検査による発見率は100%ではないため、異形成やがんが検査をすり抜けてしまうことがあります。不正出血や性交渉後に出血があるなど、異常な症状がある人は、追加で子宮頸がん検査を受けてください。

——子宮頸がん検診は何歳まで受け続けたら良いのですか?

柴田:検診のガイドラインでは、20歳から69歳までの女性は2年に1度子宮頸がん検診を受けることが勧められています。69歳までに検診で異常が1度もなかった人は、子宮頸がん検診を終えても大丈夫だと考えられています。

もし検診で異常があったり、69歳以降で不正性器出血などがある場合は、産婦人科医と相談して検診を続ける形になります。

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