尖圭(せんけい)コンジローマは、ヒトパピローマウイルスに感染することで発症する性感染症です。尖圭コンジローマの症状を知り、心当たりがある場合は治療しましょう。尖圭コンジローマの予防についても説明します。

尖圭コンジローマの症状

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)6型、11型に感染することで発症します。

ヒトパピローマウイルスは100種類以上が確認されていて、尖圭コンジローマを引き起こすウイルスは、低リスク型とよばれています。

痛みやかゆみなどの症状はあまりなく、性器や肛門周辺にトゲトゲしたイボのような腫瘍が特徴です。色は白色、ピンク色、茶色、黒色などさまざまで、2~3ミリ程度の大きさ、鶏のトサカやカリフラワー、乳頭のような形をしています。

ほかの自覚症状として、性器の違和感、おりものの増加などですが、症状が軽いために気づかない人もいます。しかし、症状が少ないからといって、そのままにしておくと患部が広がったり、イボの数が増えたりするので注意しましょう。

また、まれに子宮頸がんにつながる可能性のある高リスク型のウイルスに感染している場合もあります。イボなどの症状がある場合は、一度婦人科を受診してください。

尖圭コンジローマの感染原因

性行為やオーラルセックスなどで感染し、数週間から2~3カ月の潜伏期間を経た後、症状があらわれます。感染者は20代が多く、総感染者数も増加傾向です。潜伏期間が長いため、感染時期や感染源を調べることが難しいです。

性行為での感染が原因の場合が多いですが、感染している女性が出産する際に新生児に感染したりすることもあります。

感染すると必ず発症するわけではなく、多くの場合は自己免疫機能でウイルスを体外に排除できます。しかし、1度発症すると完全にウイルスを排除することが難しく、再発を繰り返しやすいです。

尖圭コンジローマの診察や治療方法

尖圭コンジローマは見た目が特徴的なため診察である程度判断できますが、細胞や組織を一部とって調べることで(組織学的検査)、病名を確定します。組織学的検査では、高リスク型のHPVがいるかどうか、尖圭コンジローマの症状に似た別の病気の可能性も含めて調べます。

尖圭コンジローマと診断されたら、軟膏を塗る、もしくは麻酔後にメスで切除する、病変を冷却する凍結治療、レーザーなどでイボを切り取る外科的治療が行われます。

また、特定のパートナーがいる場合は、パートナーも感染している可能性が高いです。そのため、自分が感染しているときはもちろん、パートナーが感染している場合も治療を受けてください。もし、妊娠している場合は、新生児にうつさないよう分娩前に治療しておきましょう。

そして、尖圭コンジローマは再発を繰り返しやすいので、完治を確認するまでは性行為は控えてください。ウイルスが完全に体外から排除されていないと、パートナーにうつす可能性があります。

尖圭コンジローマの予防

ヒトパピローマウイルスは、性行為時にできた皮膚や粘膜の小さな傷から入り込み感染するため、性行為時にコンドームを着用すると感染リスクを減らすことができます。

ただし、性器以外の部分はコンドームでカバーできず、アトピー性皮膚炎やかぶれなどが性器周辺にある場合は、さらに感染のリスクが高まります。

尖圭コンジローマの予防は、性行為を行う相手がヒトパピローマウイルスに感染していないことを確認すること、不特定多数の人との性行為は避けることです。

また、男女ともにHPVワクチンを接種することで、多くの型のヒトパピローマウイルスの感染を予防できます。

HPVワクチンは現在、世界70カ国以上で接種が行われていて、性交渉を経験する前の10代前半での接種が推奨されています。HPVワクチンを摂取することで、尖圭コンジローマだけでなく、子宮頸がんの60~70%を予防でき、肛門がんや喉のがんの予防効果もあります。

日本では3回接種することが勧められていて、12~16歳の女性は無料で接種できます。くわしく知りたい人は、お住まいの市区町村役場へ問い合わせてみてください。(※12~16歳の女性以外の方が接種する場合は自費になるため、2~4万円/回の費用がかかります)

まとめ

性行為を経験した女性であれば、だれでも感染するリスクがあるヒトパピローマウイルス。そのなかでも、尖圭コンジローマは低リスク型ウイルスが原因といわれています。しかし、高リスク型と低リスク型の両方に感染している可能性も考えられまるので、イボなどの症状がある場合は、婦人科の診察を受けましょう。

監修者プロフィール

淀川キリスト教病院 産婦人科専門医

柴田綾子

2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。

https://twitter.com/ayako700

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