こんにちは。先日東洋大学を卒業し、4月から社会人になったManaです!
私は小学生の頃から「性」について興味津々でした。大学生になり、「性のことをまじめに学んでもいいんだ!」と気づいた私は、ジェンダー研究やセクシャルヘルスの分野に興味を持ち本格的に勉強するようになってから、ある一つの課題に気づきました。
それは、「HPVワクチン」のことでした。
HPVワクチンは、子宮頸がんをはじめとしたHPVウイルスによって引き起こされる性感染症や、咽頭がんや陰茎がんなどを予防する効果があります。
現在でも、小学6年生から高校1年生までは全3回のワクチンを無料で接種することができます。私がちょうど中学生のときに、周りの人と同様に私も実際に打ちました。
私たち世代の恐怖心を煽った副反応の報道
そんなときです。ショッキングな映像が多くのメディアで取り上げられました。特に覚えているのは、子宮頚がんワクチンを接種した後に”副反応”の症状が出て、けいれんを起こしている人の映像です。その映像は私たち、そして親に「恐怖心」を与えました。
それが引き金となり、HPVワクチンは「積極的接種の勧奨」が行われなくなり、打つ人が激減しました。現在ではHPVワクチンの接種率はわずか0.6%と言われています。1998年生まれの私の同世代や、2000年生まれの私の妹の世代では3回の接種を終えていない人や、1度も接種していない人がたくさん、約10年ほど経っても尾を引いていることが分かると思います。
一方で、副反応については、名古屋スタディという研究によってワクチンと副反応の因果関係はないと発表されています。また4価(HPVの4つの型に対応する)のHPVワクチンが子宮頸がんを予防するという研究結果が、世界で最も信頼されている医学誌の1つであるNEJM(New England Journal of Medicine)から発表されています。
日本では、1年間に約1万人が子宮頸がんと診断され、約3000人が亡くなっていると言われています。初めてこの数字を聞いたとき、ものすごく驚きました。そして、コンドームでも防げないこのウイルスの感染が、ワクチンによって防げると再認識したときには、もっと驚きました。更に勉強を重ねると、当時騒がれていた”副反応”とワクチンの直接的な因果関係がないと証明されているということ、私の周りの人たちも未だ打ってない人が沢山いることにも気づきました。
私は「もし自分の周りの大切な人たちが、防げたかもしれない病気で亡くなってしまうのは嫌だ!」と思い、「私にも何かできることはないか?」と動いてみることにしました。
HPVワクチンにもキャッチアップ制度の適用を

撮影=高橋幸子
そんなある日、産婦人科医の高橋幸子先生がTwitterで「HPVワクチンを打ちそびれた人と、男子も無料で打てるように、署名を集めたい」とツイートしているのを見つけ、その活動に参加させていただくことになりました。
実際に署名が始まってからは、性教育関連の学生団体を運営している周りの人に声をかけて署名の賛同団体を増やしたり、HPVワクチンに関するイベントを高橋幸子先生と共に開催するなど積極的に活動を行いました。
ただ、こんな活動をしながらも、HPVワクチンを打つハードルはとても高いと感じています。実際に打とうとすると、全3回の接種を打ち終えるには合計で5万円もかかります。
病気にかかる可能性が下がることを踏まえると、値段設定が高すぎるということはないと個人的には思います。しかし、無料でワクチンを接種できる期間があるにもかかわらず、いざ大人になってから子宮頸がんのことを知って「HPVワクチンを打ちたい」と思っても、無料期間はとっくに終わっているとなると、5万円の費用を自分でまかなうことを迷う人も多いのではないでしょうか。
本来だったら無料で接種できるはずだった時期に、副反応を恐れたり、政府が積極的勧奨を行っていなかったために接種ができなかった人たちがたくさんいます。ほかのワクチンでは、そういった人たちを対象に「キャッチアップ接種」の制度を設けていて、後から無料で打てるシステムがあります。
そこで、「HPVワクチンにもその制度を適用してください」と言っているのが私たちの活動というわけなんです。
3万人の署名を厚生労働大臣に直接提出。前向きな返答をもらった

撮影=高橋幸子
活動を進める中で何よりも重要だったのは、打ちそびれた人が多い私たち大学生世代の「打ちたい」という声でした。そこで、署名に賛同してくれる学生団体を探して協力を募ったところ、思った以上に多くの団体が賛同を表明してくれました。
署名がChange.orgで始まった後、特にメインで活動していた高橋幸子先生と、医大生のあこさんと、私の3人で、HPVワクチンについての理解を深めてもらうためのイベントを数回開催しました。当時大学生だった私は、当事者としての気持ちをイベントでお話する時間をいただきました。
このように活動を続けていく中で、とうとう署名を提出しようという流れになっていき、2020年6月に署名活動を開始してから、実際に提出するまでに3万人を超える人たちに賛同していただきました。
提出日当日には、田村憲久厚生労働大臣と対面し、高橋幸子先生やほかの学生と共に、活動賛同者の大量の署名が書かれた分厚い紙を大臣に渡しました。
その後少しだけお話する機会をいただけたので私たちの想いを伝えたり、大臣の考えについてお話をしました。そこでは、大臣自身もお子さんにはHPVワクチンを接種させたというお話を聞くことができたり、今回の活動に対して前向きな返答を頂くことができました。
ワクチンを打ちたいと思う人の選択肢を広げたい
今回の署名運動をするにあたって、何回も繰り返し言葉にした想いがあります。
それは、「選択肢を増やしてほしい」ということです。
HPVワクチンは、過去の報道の影響で副反応に対する恐怖心が強い人も多くいると思います。個人的には、ワクチンを無理に打つ必要はないと思っています。その代わり、しっかり婦人科などで2年に1度は子宮頸がん検査をしてほしいと願っています。
打ちたくない人は打たなくてもいい。その代わり、「打ちたい」と思う人の声も拾ってほしい。無料接種期間が過ぎてしまった人たちにも、もう一度「打つ」という選択肢を増やせるように、制度が変わってほしい。
そんな思いで署名を提出しました。
今回の田村厚生労働大臣との話し合いでは、前向きな見解を聞くことができ、一歩前進できたと思います。一方で「積極的勧奨の差し控え」の撤回が具体的にいつ行われるかや、キャッチアップ接種制度などについては詳しく語られたわけではなかったので、今後も引き続き署名を集める活動を行う予定です。
キャッチアップ接種制度が適用されるとしっかり明言されるまで続けていきます。
「ワクチンを打ちたいと思う人の選択肢を広げたい」
その強い気持ちでこの活動はここまで力を合わせて進んできました。
キャッチアップ接種制度が認められるまで、道のりはまだ長いかもしれません。
この記事を読んでくれているあなたも、力を貸していただけたら嬉しいです!
署名:HPVワクチン(子宮頸がん等予防)を打つ機会を奪われた若者たちが無料で接種するチャンスをください
性教育オンラインイベントも開催予定

署名活動を引っ張ってくださった産婦人科医の高橋幸子先生と、保護者の方に向けた性教育オンラインイベント「さっこ先生と学ぶ!どうすればいい?おうちの中の性教育」を4月25日に開催します。
INFORMATION
HPVワクチンについても、お話いただく時間を設けています。夫婦での参加も大歓迎です。お時間合いましたら、ぜひご参加ください!