11月は子宮頸がん予防啓発強化月間。
ピンクリボンをシンボルにした10月の乳がん月間に引き続き、女性のがんに向き合う運動だ。子宮頸がん啓発のシンボルマークはティールアンドホワイトリボンで、アメリカを中心に海外で活用されている。
日本では「ティール&ホワイトリボンプロジェクト」として、NPO法人キャンサーネットジャパンが啓発プロジェクトを行っている。
年間1万人以上の人が子宮頸がんと診断されている
日本では、年間約11,000人が子宮頸がんと診断されている。また、子宮頸がんによって奪われる命は年間約2,800人。早期に発見できれば手術などで完治を目指しやすい病気だが、ほとんどの場合、初期だと自覚症状がない。
子宮頸がんの95%以上はHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によるものとされていて、適切な時期にHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を接種することで、30歳までに子宮頸がんになるリスクを88%以上予防することが可能だ。
日本では、2013年にHPVワクチンの定期接種を開始。しかし、ワクチン接種後に痙攣などの症状が出た事例をメディアが報道し、同年6月以降厚労省はHPVワクチンの定期接種の積極的勧奨を差し控えている状況だ。
HPVワクチンは、小学校6年生から高校1年生相当の年齢までは公費助成により無料で接種が可能だが、その期間内に接種できなかった場合には全額自費で賄うしか接種方法がない。半年の間に3回の接種が必要とされているため、1回の接種におよそ1万5千円のワクチンを3回接種すると、約5万円の費用がかかることになる。

提供:HPVワクチン for me
これに対して、HPVワクチンを啓発するプロジェクト「みんパピ!」は、HPVワクチンの積極的接種勧奨の再開を求める署名活動を行ったり、医療者有志と女子大生当事者の団体「HPVワクチン for me」がキャッチアップ制度の適用をHPVワクチンにも求める署名を厚労相に提出したりという動きがあった。
このようにHPVワクチンの積極的接種勧奨の再開や、キャッチアップ制度の適用を求める声は大きく、注目を集めている。
HPVワクチン積極的勧奨再開。キャッチアップ接種の検討も

厚生労働省は2021年10月1日、第69回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と、令和3年度第18回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を合同開催した。
検討会では、HPVワクチンの安全性・有効性や接種後に生じた症状に苦しむ人への支援、また接種状況などをふまえて、積極的勧奨の再開の可否が議論された。BuzzFeed Medicalの報道によると、座長の森尾友宏氏が「大きな方向性として、積極的勧奨の再開を妨げる要素はない」と議論をまとめ、HPVワクチンの積極的勧奨の再開の方向性が確認されたという。
また、11月12日に合同開催された第72回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会では、「積極的な勧奨を差し控えている状態を終了させることが妥当である」としてHPVワクチンの積極的勧奨を再開することを了承したとBuzzFeed Medicalが報じた。
同月15日に、厚生労働省は積極的勧奨の差し控えにより無料接種の機会を逃した女性のキャッチアップ制度を来年4月から実施する方針を固めたと共同通信が報じた。対象者については、1997~2005年度に生まれた女性とするのが適切だという意見が多数を占めたという。
千代田区ではHPVワクチンの定期接種期間を延長
東京都千代田区では10月29日、新型コロナウイルス感染拡大の影響でHPVワクチンの接種機会を逃した人に対して、公費で接種できる期間を延長すると発表した。既に自己負担で接種した人には、接種にかかった費用を助成する。

延長される期間は2021年11月1日~2023年10月31日で、令和3年度に中学3年生~高校3年生相当の人が対象だ。また、令和3年度に高校2年生~3年生相当の人で2021年10月31日までに自己負担で接種した人には接種費用を助成する。
令和3年度に中学3年生~高校1年生相当までの人は、本来の有効期限である高校1年生の年度末までに3回接種が完了しなかった場合は、2023年10月31日まで有効期限が延長されるという。千代田保健所に申請後、2週間ほどで有効期限を延長した予診票が送付され、申請はメールか電話で受け付けるとしている。
独自のキャッチアップ事業を行う青森県平川市
青森県平川市では独自のキャッチアップ事業に取り組んでいる。積極的勧奨の差し控えにより公費接種での機会を逃してしまった人を考慮し、令和3年度に限り特例として接種費用の助成を行っている。
対象者は平川市に住所を置く17歳から19歳の女性で、2021年1月1日~2022年3月31日までに接種をした人。3回接種分まで助成され、1回の接種につき上限16,753円が助成される。 医療機関の領収書などを添付して市に申請することで助成金を償還払いの方法で支払うという。
【UPDATE:11月2日掲出記事を、11月12日の検討会と15日の分科会の内容を元に一部内容を加筆しました】