南アフリカの「The Star」「The Mercury」「Cape Times」という3つの新聞に掲載された広告が注目を集めた。
2026年6月1日、紙面の中央に広がるのは、真っ赤なシミ。
ページをめくると、じんわりと次のページへとにじんでいく。
これは、非営利団体 MENstruation Foundation と広告会社 Joe Public が仕掛けた広告だ。MENstruation Foundation公式Instagramによると、広告の最後にはこう書かれている。
“A newspaper can absorb the blood, but not the shame.”
新聞紙は血を吸収できる。でも、恥まではぬぐえない。
そして、生理用品が買えないために学校へ行けない少女たちに対する寄付とサポートが必要な旨が記載されている。
新聞紙が「生理用品の代わり」に使われているという現実
この広告が表現しているのは、フィクションではない。
MENstruation Foundationの共同創業者であり、南アフリカで俳優、コメディアンとしても活躍するシヴ・ンゲシ氏によると、南アフリカでは約400万人の女子学生が、生理用品を買えないまま毎月過ごしている。
ナプキンの代わりに使われているのは、新聞紙、布きれ、牛糞。
衛生的とはとうてい言えない素材が、「ほかに選択肢がない」という理由で使われ続けている。生理用品が手に入らないことで彼女たちは年間最大60日もの学校を欠席しているという。
また、シヴ・ンゲシ氏はインスタグラムにて以下のように語っている。
「みなさん、私が生理の貧困をなくすために活動していることをご存知でしょうか。
生理の貧困とは、世界中の女性が生理用品を買えない状況のことです。
衛生用品、タンポン、繰り返し使えるショーツ、布ナプキン、月経カップ、パッドなどが買えない状況です。これは大きな不正義です。
もし男性が月に一度出血するなら、生理用品は無料になっていたはずです。
今日、私はJoe PublicとSA(南アフリカ)の新聞社と一緒に活動しています。本当に誇りに思います。The Star、Daily Maverick、Cape Timesなど南アフリカ全土の新聞に、大きな血のシミを印刷しました。血のシミがページをじわじわと染み通っていき、最後のページにこう書かれています——「新聞は血を吸収できる。でも恥は吸収できない」と。
実は南アフリカの若い女性や大人の女性たちが、新聞紙や布、さらには牛のふんを生理用品として使っているんです。それが原因で多くの方が感染症にかかっています。
繰り返します。もし男性が月に一度出血するなら、生理用品は無料になっていたはずです。
Joe Public、本当にありがとうございます。これは世界中でかつてない取り組みです。南アフリカにいる方は、どの新聞に血のシミがあるか確認してください。QRコードから寄付してください。
年間わずか60ランド(約500円)で、一人の女の子に一年分のナプキンを届けられます。
南アフリカでは2,200万人が毎月生理を迎え、そのうち1,400万人は生理用品を買えない。さらにその400万人は学校に通う若い女性で、毎月4〜5日も学校を休んでいます。
これは許しがたいことです。不正義です。すべての女性に無料の生理用品が届くまで、女性は自由ではありません。
繰り返します。もし男性が月に一度出血するなら、生理用品は無料になっていたはずです。パッドはコンドームではなく、トイレットペーパーと同じように当たり前に手に入るべきものです」
MENstruation Foundationは現在、ナプキンを学校に設置するプロジェクトを通じて毎月10万人の女子生徒にナプキンを届けているという。
「経血」を赤く描く選択
一見すると本当の血なのではないか?とびっくりした人もいるかもしれない。
生理にまつわる広告表現において、経血を「青い液体」ではなく「赤いもの」として見せる広告は、これが初めてではない。
以前ランドリーボックスでも紹介した、イギリスの生理用品ブランド「Bodyform」の #bloodnormal(2017年)もそのひとつだ。
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「生理は普通のことであり、そのことを示すのも必要だ」と打ち出したその広告は、経血のような赤い液体を使って当時大きな話題を呼んだ。
今回のMENstruation Foundationのキャンペーンが際立っているのは、媒体そのものをメッセージに変えた点だ。
新聞紙は、実際に生理用品の代わりとして使われているもののひとつだからだ。
「この紙を読んでいるあなたと、同じ紙を下着に当てている女の子が、いま同じ世界に存在する」そのことを、ページをめくるたびに体感させている。
生理用品が「贅沢品」とされてきた歴史も
生理用品が「必需品ではない」とみなされてきた歴史は、南アフリカだけの話ではない。
たとえば、ドイツでは2019年まで、タンポンに19%の消費税がかけられ「贅沢品」として扱われていた。
ドイツの生理用品ブランド「The Female Company」は、これに対して「THE TAMPON BOOK(タンポンブック)」を制作した。軽減税率が適用されている「本」の付録としてタンポンをつけて販売したのである。
この企画は、国際的な広告賞であるカンヌライオンズのPR部門でグランプリ受賞している。
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では、日本はどうだろうか?「生理の貧困」という言葉が広まったのはここ数年のことだ。
厚生労働省が2022年に実施した調査*では、新型コロナ以降に生理用品の入手に苦労した経験がある女性が8.1%にのぼると報告されている。その半数が「交換頻度を減らした」と回答し、4割以上がトイレットペーパーやティッシュで代用した経験があると答えた。
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一方で、この広告を不快に感じた人や、生理の血が怖いという人もいるだろう。それも、当然の反応だと思う。
でも、その「不快さ」、賛否両論も含めて今回の広告が届けたかったメッセージなのかもしれない。
生理がある人たちの中には、生理による心身の不快、不安を抱え、安全に暮らすことができない状況に置かれているという現実があるのだ。
生理の血は、恥ずべきものではない。そして、それを安全に管理できる環境も、あたりまえのことのはずだ。
*厚生労働省「生理の貧困」が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査(2022年)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24693.html
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