俳優やアスリートなど、公の場に立つ人たちが自らの子宮内膜症の経験を語るドキュメンタリー「End of the Cycle」が公開された。

制作したのは、アメリカの非営利団体「The Endometriosis Collective(エンドメトリオーシス・コレクティブ)」だ。

同団体は、子宮内膜症が「どのように理解され、治療され、研究されるか」を変えることを目指す非営利団体。

ドキュメンタリーは、この病をめぐる対話を広げ、研究のための資金を集めることを目的に制作された。

作品はオンラインで視聴でき、寄付ができる。集まったお金はすべて研究に充てられるという。

プレスリリースより

語り手は、痛みを抱えて公の場に立ち続けてきた人たち

作品には、複数の著名人が当事者として登場する。

コメディアンで俳優のエイミー・シューマー、ダンサーのジュリアン・ハフ、オリンピックのスプリンターであるブリタニー・ブラウン、俳優のジャネル・パリッシュとフォラケ・オロウォフォエク。

そして、団体の共同創設者であり、自身も当事者であるサミー・ジェイが全体の語り手となる。

彼女たちが繰り返し語るのは、「痛みを我慢し、大げさだと片づけられ、それでも笑顔で仕事を続けてきた」経験だ。

舞台の合間に吐きながら立ち上がった俳優。生理と重なった五輪のレース後、メダルを取った直後にトラック脇で痛みに倒れた選手。

診断までに何人もの医師を回り、「精神的なもの」とされ続けた人。立場や職業は違っても、語られる痛みは驚くほど重なっている。

作品では、確実な診断が難しいことや、治療の選択肢が限られていることなど、当事者が直面する現実も、専門家の言葉とともに描かれる。

「彼女も子どもを望んでいた」——マリリン・モンローの子宮内膜症

作品が時間を割いて描くのが、マリリン・モンローの子宮内膜症だ。

作品はモンローの生誕100年に合わせて公開され、彼女の子宮内膜症について新たに明らかになった情報も紹介している。

モンローの評伝『Goddess』の著者や、彼女に関わった医師への過去のインタビュー記録、最初の夫の証言などを通じて、モンローが若い頃から激しい生理の痛みに苦しんでいたこと、そしてそれが当時は「子宮内膜症」として理解されていなかったことが語られる。

作品では、モンローが手術を前に、子どもを産む力を残してほしいと医師に切実に訴えた手紙も紹介される。子どもを強く望みながら、それが叶わなかったこと。

華やかさや「時代の象徴」というイメージの裏で、彼女が一人で痛みを抱え、公に語ることもできなかったこと。

作品は、その姿を今を生きる当事者たちの経験と重ね合わせていく。

プレスリリースにて、マリリン・モンロー・エステート(遺産管理団体)の担当者は、「『End of the Cycle』を通じて彼女の物語のこの部分を分かち合うことで、子宮内膜症への理解を広げ、よりオープンな対話を促し、変化に必要な研究を後押しするかたちで、彼女のレガシーに敬意を表したい」とコメントを寄せている。

世界2億6500万人。それでも「40年、治療は変わっていない」

作品と公式サイトは、子宮内膜症をめぐる数字も示している。

子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の外で増殖し、慢性的な強い痛みや炎症、癒着、時に不妊を引き起こす疾患だ。

同団体によれば、影響を受けている女性は世界で2億6500万人以上とされる一方、診断までには長い年月がかかり、いまも治癒法はなく、治療法は40年以上にわたって実質的に変わっていないという。

研究資金の不足も指摘される。アメリカ国立衛生研究所(NIH)から子宮内膜症研究に充てられた資金は年間およそ2700万ドルで、患者1人あたりに換算するとわずか約2ドルにとどまる。

作品では、乳がん研究が当事者や科学者の働きかけで大きく前進した歴史を引き合いに、子宮内膜症にも同じような研究の基盤が必要だと訴える。

そのうえで、炎症に着目した新しい治療薬の研究など、近い将来の臨床試験に向けた前向きな動きも紹介される。

共同監督で団体の共同創設者でもあるサミー・ジェイは、「子宮内膜症とともに生きる多くの人にとって、その経験は身体的なだけでなく、感情的で、孤立を伴い、あまりにもしばしば軽視されてきた」と語る。

そのうえで「この作品は私にとって非常に個人的なものであると同時に、行動への呼びかけでもある」とし、当事者の物語や医療の専門家の知見、そしてモンロー自身の病の歴史を重ねることで、人々が「見てもらえた」と感じられ、長年見過ごされてきた研究とケアへの変化を生み出したい、と述べている。

ーー

痛みは目に見えない。ゆえに「我慢するもの」として捉えられたり、子宮内膜症の診断や理解にたどり着くまでに時間がかかることがある。

これは、日本でも同じである。

100年近く前を生きたモンローの痛みが、今の当事者たちの語りとつながる。そうした語りの積み重ねが、これまで見過ごされてきた痛みを、社会全体で向き合うべき課題へと押し上げていくのかもしれない。

こうした動きが、国境を越えて広がっていくことを願っている。

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