「生理ではないのに出血があった」「赤色の出血だけど大丈夫?」そんな悩みがある人のために、生理以外で出血があった場合に考えられる原因、どんな病気の可能性があるのか、婦人科を受診する目安などを説明します。
生理以外に血がでる原因
生理ではないのに出血がある場合は「不正出血」といわれます。不正出血の色は鮮やかな赤の場合もあれば、少量の場合は血液が酸化して茶色っぽくなることもあります。
不正出血があったからといって、必ずしもなにかの病気とは限りませんが、病気がひそんでいる可能性もあるので注意しましょう。
生理以外で血が出る原因は、以下のようなことが考えられます。
女性ホルモンバランスの乱れ
睡眠不足や過度なダイエット、ストレスなどで身体に負担がかかると、正常に女性ホルモンが分泌されなくなることがあります。月経不順が起きたり、生理周期が乱れる可能性があります。
黄体機能不全
黄体機能不全とは女性ホルモンの分泌がうまくいかない状態のことです。排卵後に厚くなるはずの子宮内膜が変化しなかったり、完全に剥がれ落ちなくなり、不正出血がおこることがあります。
無排卵周期症
無排卵性周期症は、生理のような出血があるものの排卵をしていない状態です。生理周期が不順になることがあります。
排卵期出血
排卵期出血とは、生理と生理の間の排卵時におきる不正出血のことです。エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が変動することで出血する場合があります。何度も出血する場合は婦人科を受診しましょう。
妊娠による着床出血
生理予定日の1週間前から生理予定日の頃に少量の出血が数日あった場合は、「着床出血」の可能性があります。着床出血とは精子と卵子が受精して子宮へと移動し、着床したときに出血することです。
妊娠の可能性がある人は、生理予定日1週間後以降に妊娠検査薬で調べるか、産婦人科を受診しましょう。
なんらかの病気が原因の場合
膣や子宮、卵巣などのなんらかの病気が原因での出血を「器質性出血」といいます。可能性のある病気は、以下のようなものがあります。
- 膣炎
性感染症や腟内の常在菌の変化によって膣炎が起こり、出血している可能性があります。性感染症にはさまざまな種類がありますので、気になる人は「知っておきたい主な性病の症状(医師監修)」の記事も確認してみてください。
- 子宮筋腫
子宮筋腫とは子宮にできる良性の腫瘍のことで、筋肉の塊(かたまり)です。がんのような悪性腫瘍ではありませんが、貧血・生理痛・不妊症の原因になることがあります。
- 子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープとは子宮の入口にできるポリープのことで、自覚症状はないことが多いです。性行為時やスポーツなど激しい動きをした際に出血することがあります。ほとんどが良性腫瘍ですが、まれにがんが隠れていることがあります。
- 子宮頸がんや子宮体がん
子宮頸部にできる子宮頸がんや子宮体部にできる子宮体がんの症状として、不正出血がみられることがあります。
- 子宮膣部びらん
子宮膣部びらんは、膣や子宮の入り口が赤くただれている状態のことです。性行為時やタンポンを使用する際に出血することがあり、かゆみや痛みなどの自覚症状がある場合もあります。性感染症が原因になっていたり、子宮頚がんの初期症状と似ているので、不正出血が続く場合は病院を受診してください。
このように、不正出血にはさまざまな原因が考えられます。ほかにも低用量ピルや、IUS(ミレーナ)の挿入などで不正出血が起きる場合こともあるので、低用量ピルやIUS(ミレーナ)などを利用している場合は、かかりつけの婦人科で相談してみましょう。
婦人科を受診する目安
不正出血は病気が原因である場合も考えられます。出血の原因を特定することが適切な治療につながるので、以下のような場合は早めに婦人科を受診してください。
- 生理以外のタイミングで出血することが何度も続く
- 生理の前後に出血があり、合計で9日以上続く
- 不正出血以外に、おりものの以上や痛みなどの症状がある
婦人科での治療
不正出血の原因によって治療法は異なります。女性ホルモンバランスの乱れが原因の場合は、生活習慣を直して様子をみたり、漢方や女性ホルモン剤の投与や低用量ピルなどの治療が行われます。
また、子宮筋腫や子宮がんなどの病気が原因である場合は、病気の治療を行います。治療は、病変部のみを取り除く方法と子宮を摘出する方法があります。妊娠の希望や再発のリスクなどを考慮した上で、医師と治療方針を決めていきます。
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生理以外で出血がある場合、病気がひそんでいる可能性があります。受診の目安を参考にしながら、少しでも気になることがあれば婦人科を受診してください。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。