クラミジア感染症は日本でもっとも患者数が多い性感染症です。特に10~20代の若い人に感染が広がっていて、10代で約2,000人、20代で約1万4,000人が毎年新たに感染しています。クラミジアは誰でも感染する可能性のある病気です。
クラミジア感染症は、どう感染する?
クラミジア感染症とは、性行為やオーラルセックスをした際に、クラミジア・トラコマティスという病原体が他人の粘膜に接触することで感染していく病気です。
男女ともにほとんど症状がなく、知らないうちにパートナーを感染させてしまうことが多いです。1回の性交渉で30~50%の確率で感染するというデータもあります。
また、オーラルセックスでも感染するため、のどの粘膜からクラミジアに感染する場合もあります。
クラミジア・トラコマティスは細胞内でしか増殖しないため、空気感染はもちろん、同じプールや温泉に入っても感染する可能性は非常に低いです。
無症状であることが多いため感染に気づきにくいですが、クラミジアに感染している状態を放置していると、どんどん体内で増殖し重大な病気を引き起こすリスクがあります。
クラミジア感染症の症状
クラミジアは、感染してから発症するまでの潜伏期間が1~3週間程度といわれています。女性と男性の場合、のどに発症した場合で症状が違いますので、それぞれ説明します。
1.女性が感染した場合
女性がクラミジア感染症を発症すると、子宮入り口付近に症状が出ることが多いです。
・おりものの増加
・不正出血
・下腹部の痛み
・性交痛
これらの症状に心当たりがある場合は、クラミジア感染症の可能性があります。放置すると、子宮から卵巣や卵管、骨盤などに菌が移動し、卵巣炎や卵管炎、骨盤内炎症性疾患を発症する可能性があります。
これらの疾患は子宮外妊娠や不妊症の原因となることも。不妊原因の約20%が卵管の閉塞などが原因といわれています。
2.男性が感染した場合
男性がクラミジア感染症を発症すると、尿道に症状が出ることが多いです
・尿道のかゆみや違和感
・排尿痛
・尿道からの膿(透明もしくは乳白色)
・精巣上体の腫れ
・発熱
これらの症状がある場合は、泌尿器科を受診しましょう。放置すると、前立腺炎や精巣上体炎に発展する恐れがあります。
3.のどに症状が出た場合
のどにクラミジア感染症を発症した場合は、ほとんど症状が出なかったり、出たとしてもごくわずかな変化だったりします。
・腫れ
・痛み
・発熱
クラミジア感染症の検査・治療内容
クラミジアの検査は、女性の場合は膣分泌液、男性の場合は尿、喉の場合はうがい液を採取しておこないます。
検査の方法としては、婦人科や泌尿器科、耳鼻咽喉科、内科で検査を行うか、検査キットを利用するかのどちらかです。検査キットは自宅で検査できますが、市販薬では治療ができないため、陽性だった場合は医療機関を受診しましょう。
クラミジアと診断された場合、1日~1週間程度、薬を服用します。もし、骨盤や肝臓周辺まで炎症が広がっていたら、3~5日程度の点滴治療が必要なこともあります。
治療後にクラミジアの再検査を行い、陰性が出れば治療が完了します。
クラミジア感染症は自然治癒しませんが、適切な治療を受ければ治ります。
パートナーのいる方がクラミジア感染症だった場合は、パートナーも感染している可能性が高いです。片方が治療をしてもパートナーが感染したままだと、再度うつされる可能性があるので、パートナーと一緒に治療を行い、治療中は性行為を控えましょう。
クラミジア感染症の予防
クラミジア感染症は、コンドームを使用することで感染のリスクを減らせます。そして、不特定多数の人や感染の可能性がある人との性交渉は特に注意しましょう。
クラミジア感染症は、無自覚のまま感染を広げてしまう可能性のある性感染症です。クラミジア感染症の症状に心当たりがある場合は、早めに検査を受けて治療してください。
クラミジア感染症は、女性の約80%が無症状だといわれています。だからこそ発見が遅れ、妊婦検査ではじめて気づく女性が少なくありません。全国約32万人の妊婦を調べた検査では、19歳未満の15.9%、20代前半の約7.3%がクラミジアに感染していたというデータもあります。
大切な人にうつさないためにも、自分がうつらないためにも正しくコンドームを使うこと、パートナーが変わったときや気になる症状が出てきたときは、性感染症の検査を行ってください。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。