米国のフェムテック企業Evvy(エヴィ)は2026年9月15日(現地時間)、シリーズBラウンドで4000万ドル(約55億円)を調達したと発表した。
自宅で膣内フローラ(膣内細菌叢)を検査できるサービスを軸に、これまで10万人以上の女性のデータを蓄積してきた同社は、今回の資金をもとにAI診断モデルの臨床検証を進め、不妊治療領域へ本格的に参入する。
Evvyとは?
Evvyは2021年、Priyanka Jain氏(CEO)、Pita Navarro氏(最高科学責任者)、Laine Bruzek氏(最高マーケティング責任者)らによって創業された。
同社が掲げるミッションは「ジェンダーの健康格差を、膣内フローラから解消する」だ。
Evvyのサービスは、専用キットで自宅から綿棒を使って腟分泌物を採取し、Evvyのラボへ郵送する。
ラボではメタゲノムシーケンシング(網羅的な遺伝子解析)という手法で、そこに存在する細菌をまるごと解析。結果は、提携する医師の臨床的な解釈つきで、患者本人のオンラインポータルに届く仕組みだ。
発表によれば、これまでに検出可能な微生物は700種以上、利用した患者は10万人超、連携する医療従事者は3,000人以上にのぼる。
この過程で13本以上の査読付き論文も発表しており、症状のある患者に対する診断成功率は90%以上、細菌性膣炎(BV)の再発率を約50%以上減らせたとしている。
女性が臨床研究の対象になっていなかった
Evvyが膣内フローラに着目する背景には、女性の医療が長年抱えてきた構造的な問題がある。
米国で女性が臨床研究の対象に含まれることが法律で義務づけられたのは、1993年。今から30年あまり前のことだ。
Evvyが公表している調査によれば、女性は男性と比べて、同じ770の疾患において平均4年遅れて診断される傾向があるという。
膣の不快感は、女性が婦人科を受診する主要な理由のひとつでありながら、Evvyによれば60%以上が誤診され、50%以上が再発するとされる。
さらに、膣内フローラの乱れ(ディスバイオシス)は女性の約30%に見られ、そのうち最大80%が無症状だという。こうした乱れは、不妊・早産・婦人科がんの進行リスクにも関わるとEvvyは説明している。
CEOのJain氏は今回の発表で、次のようにコメントしている。
「女性は、いつも『原因不明』と言われつづけている。原因不明の不妊、原因不明の再発、原因不明の痛み」
Jain氏はTechCrunchの取材に対しても「それはまるで診断であるかのように語られるが、実際には医学が女性の生物学を測定するようにつくられてこなかった、ということを意味している」と述べている。
今回の調達を経て、今後は複数の女性の健康領域にまたがるAI診断・ケアモデルの臨床検証、医師・提携医療機関を通じた流通の拡大、そして米国最大級の不妊治療クリニックネットワークであるUS Fertilityとの共同研究の拡大に充てられる。
具体的には、膣内フローラが不妊・流産・体外受精(IVF)の成功率にどう関わるかという研究を、本格的に進めていく方針だという。
「膣内フローラ」日本では?
日本でも、膣内フローラに関するサービスがある。2026年9月1日には、明治が株式会社Wellnizeとの提携により、自宅でできる膣内フローラ検査サービス「マイラクト」を自社ECサイトで発売開始した。
「マイラクト」では、妊娠を考える女性を対象に、善玉菌であるラクトバチルス乳酸菌の占有率を測定するという。
ほかにも「MiteCare(ミテケア)」や「フェムテスト」といった検査サービスがあり、医療機関でも「膣内フローラ検査」「子宮内フローラ検査」として提供されているところは少しずつ増えている。
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「なんとなく不調だけど、検査しても原因が分からない」。そんな経験をしたことがある人は、決して少なくないはずだ。
Evvyが示そうとしているのは、それが「気のせい」でも「体質」でもなく、単に「これまで十分に測られてこなかっただけ」かもしれない、という可能性だ。
データが増えれば、いつか「原因不明」で終わらされる女性が減っていくのかもしれない。
参考記事:














