フェムテックとはFemale(女性)× Technology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、生物学的女性の健康課題をテクノロジーで解決する新たなヘルスケアのジャンルです。

「生理」「更年期」「婦人科系疾患」「不妊・妊よう性」「出産・育児」「セクシャルウェルネス」などのカテゴリがあります。それらをタブー視せず、前向きに解決するサービスやアイテムが数多くあります。フェムテックの市場規模は、2025年には5兆円規模に成長するといわれています。

この連載では、カラダにまつわる悩みをこれまでにない形で解決し、カラダについて学ぶきっかけにもなるフェムテックを知っていただければと思います。

一般的に、45歳から55歳の間になるといわれる更年期障害。フェムテックの中でも、更年期障害に関する市場規模は今後2027年までに154億5,600万ドル(約1兆6,000億円)に達すると予測されています。

グローバル有力市場調査会社Market Research Future調べ

日本の更年期障害系フェムテック

海外では更年期のカラダのケアをするサービスが増えており「メノポーズテック」というジャンルができるほど盛り上がりつつあります。

日本でも更年期障害で悩む女性たちのために、いくつかのサービスが生まれています。今回は思いを持って起業した、2人の声とプロダクトをご紹介します。

女性の不調日数を数値化していくことで、男性が助けてくれるようになった

更年期カップルのためのフェムテックサービス「wakarimi(ワカリミ)」

wakarimiは、LINEで配信されるコミュニケーション改善のプログラムで、金額は男女1組あたり月額1,500円(税抜)のサブスクリプションモデルで提供。数々のメディアにも取り上げられており、フェムテックサービスとして注目を集めています。ご自身の経験から起業に至ったwakarimi代表の高本玲代さんにサービスについて聞きました。

wakarimiのWebサイトより

——「更年期」という分野で起業されたきっかけはなんですか?

高本さん:自分自身の原体験からの起業でした。私自身が起き上がれないほどの不調や頭痛、胃痛が続いたり、気持ちの落ち込みが出ました。最初は更年期とは気づかずに、自分自身の心の甘えから来ているのではないかと、自分を追いつめて考えてしまったのです。たまたま医療従事者の友人がいて更年期と気づき対処できましたが、まさか40代で更年期障害を経験するとは思っていませんでした。パートナーも私の不調は単なる『性格的なもの』と思っていて夫婦不和の原因に。『なぜ理解してくれないのだろう』という私と『伝えてくれないとわからない』パートナーの間には溝が深まってしまいます。しかし、パートナーに更年期について理解してもらったり、自分が今彼に何をしてほしいのかを端的に伝えることでパートナーに行動変容が見られ、今では随分と楽になりました。

こういった経験は再現性があると思い、夫婦カウンセラーの資格をとりつつ更年期カップルのQOLをあげるために起業。今はパートナーがいない方や、パートナーがいてもまずは自分で使ってみたいという方からお問い合わせがあり、2人でしか使えなかった仕様を、1人でも2人でもどちらでも使えるよう1月29日にアップデートしました。

——パートナーとの対話に重きを置いたサービスですが、実際使ったユーザーからどのような反応がきていますか?

高本さん:もっとも多かったのは『パートナーが自分に寄り添うようになってくれた』という声です。女性がいくら言葉で『つらい』と伝えても、パートナーは理解できなかった部分が、更年期の医学的知識を提供しつつ、女性の不調日数を数値化していくことで、男性が女性の体調に関心を持ち、助けてくれるようになったとのことでした。

LINEを使った隙間時間の利用でも、女性がそのとき一番理解してもらいたい内容が端的にパートナーに伝わることで『ストレス源であるパートナーが自分の一番の理解者になってくれる』という現象が出てきているようです。

——企業導入も進められていますが、どのような反響がありますか?

高本さん:企業にご提供するときは研修とセットで利用していただく形になっています。まず更年期を『社会課題』としての位置づけでお伝えしています。

例えば日本では、女性が更年期を理由に、2人に1人がオファーされた昇進を辞退したり、退職したりという割合が約2割にのぼります。また、ジェンダーギャップ指数が日本より100も上位の英国では、10社に1社が更年期に対するケアを企業側が提供しているにもかかわらず、日本はほとんどが提供されていない現状をお伝えすると、企業内での関心度は高まります。

企業の中では、女性のための研修や男女のマネジャー向けの研修プログラムとして提供しています。そのうえで男女ともにwakarimiをパートナーとご利用いただいています。一般消費者向けでは、パートナーに『一緒に使ってほしい』と伝えるハードルの高さがありますが、企業の研修の一環となると、そのハードルが下がるという利点があるようです。

「wakarimi」 https://event.uni-que-inc.com/wakarimi

「更年期をオープンに語れる社会」を目指して起業

更年期に特化したオンライン相談サービス「TRULY(トゥルーリー)

TRULYは、働く女性の更年期の悩みに女性医師が応えるチャット相談とオンラインメディアを提供するフェムテックサービス。

【1】知る:オンラインメディア、【2】調べる:セルフチェック、【3】相談する:オンライン相談の3つのサービスを提供。2021年1月を目処に個人向けサービスの提供開始予定。株式会社TRULYCEO二宮未摩子さんにサービス内容と、起業への思いを聞きました。

写真=TRULY

—— TRULYを立ち上げたきっかけを教えてください。

二宮さん:事業構想をしていた当初は『女性の真の美しさ』をサポートする事業アイデアを構想していました。ネットやSNSなど世の中に氾濫する美容・健康情報の中で、いかに『信頼できる情報』を発信できるかを模索しているうちに、全ての女性の課題であるにも関わらず、タブー視されていて情報がオープンになっていない『更年期』というテーマに行き着いたのです。

フェムテックのサービスは急速に増えてきていますが、『更年期』カテゴリはまだプレーヤーも多くありません。実際に更年期の女性にインタビューしたところ、ニーズが高いことがわかり、『更年期をオープンに語れる社会』を目指して起業しました。

—— 女性医師に相談できるサービスですが、ユーザーからはどのような反応がありますか?

二宮さん:更年期だけでなく、デリケートゾーンや性の悩みなど普段は人に相談しにくいことを、ネットで簡単に知ることができて助かっているといった声が多いです。チャット相談は『一瞬で安心を得ることができた』『信頼できる女性医師なので安心』『オンラインなので気楽』というコメントに加えて、ご時世的にもなかなか日常的に病院に行けない中で、気になることを先に相談できて病院に行くべきかどうか判断がついて良かったといった声も多いです。

—— 企業導入も進められていますが、どのような反響がありますか?

二宮さん:女性が管理職に昇進する年代と、更年期がちょうど重なることから、企業からの『女性特有の健康不安を取り除くソリューションを探している』というニーズが高いです。健康セミナーや記事・セルフチェックなど、社員のヘルスリテラシーの向上に繋がるコンテンツとしても、導入する価値を感じてくださっています。

また、企業導入には男性にサービスをご案内することも多いため、TRULYを通じて女性の課題を知ることにより、同僚やパートナーに対する男性自身の意識が変わっていくことも多いようです。

「TRULY」:https://truly-japan.com/

海外の更年期障害系フェムテック

Lisa Health

「Lisa Health」は専門家によるオンラインコーチング、更年期の症状のトラッキング、教育、サポートのためのコミュニティを利用できるサービスです。

サービスの開発はNPO団体AnnieCannons。マイノリティの女性や人身売買の被害者にスキルトレーニングをした女性たちによって作られていてビジネスとしても包括的です。

写真=Lisa Health

Genneve

「Genneve」は更年期障害の女性のための初のオンラインクリニックとして、専門家、リソース、製品、コミュニティをワンストップで提供。先日公開した「更年期障害ジャーニーマップ」では、5万人の女性を調査して、5つの更年期障害タイプを分類。更年期障害に多様な症状があることを示しました。症状には疲労、気分の変化、睡眠障害などがあり、これらが生活の質に劇的な影響を与えるとのことです。

Grace

ロンドンを拠点とする「Grace」はホットフラッシュといわれるほてりの症状を、ブレスレット型デバイスから出る冷却水で緩和させるものを開発しています。政府のプログラムで商品化に向けて開発を進行しているそうです。

フェムテックを知る以前は、更年期障害について「大変そう」「不安だな」という印象があったのですが、これだけ多様なサービスがあることを知って、さまざまなアプローチで解決して、症状とうまく付き合うことができるものとわかりました。

人生100年時代、更年期に変化するカラダと長く付き合うことを考えると、更年期障害関連のサービスは今後も発展してほしいと感じるフェムテックの領域です。

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