写真=本人提供/Laundry Box

初めまして、吉野なおです。Naoという名前で2013年からプラスサイズモデル(大きいサイズのファッションモデル)をしています。

今では体型を活かした仕事をできるぐらい自分のふくよかな身体とうまく付き合っていけるようになりましたが、子どもの頃から20代前半までは体型がコンプレックスで、極端なダイエットを機に過食症(摂食障害)を経験するなど常に身体について悩まされ続けていました。

体型に限らず、容姿に対するコンプレックスは、たとえ他人に「気にする必要ないよ」と慰められても簡単に解決することではありませんよね。私の場合は、自分を受け入れてくれる優しい恋人ができても自己嫌悪する癖や過食症が治りませんでした。

また、私が悩んでいた頃は、インターネットや本で解決方法を調べてみても、「ポジティブに考える理想論」だったり「素敵なパートナーを見つけて摂食障害が治った」というエピソードはあったものの、現実の自分には参考にならないようなものがほとんどでした。

私が身体の悩みから開放されたとき、「この経験を具体的に世の中に伝えていくことが、過去の自分と同じように悩んでいる誰かのヒントになるかも?」と思うようになりました。

するとその後、運命的にプラスサイズモデルの仕事を始めることに。数年前からは自分の経験を講演会イベントや学校でお話したり、このようにコラムを書くこともライフワークにしています。

近年はSNSが普及して、個人の写真をインターネットに公開することが珍しいことではなくなり、他人のプライベートなどを含めて目にする情報も圧倒的に増えました。だからこそ、つい他人と自分の容姿を比べて落ち込んでしまうという声も聞きます。

でも、特に女性の身体は曲線があるなど、特徴は人それぞれ。自分の身体を卑下せずに「あの人も素敵だし、自分もいい感じ」と思えたらちょっと楽になれるかもしれません。そんな願いを込めて、今回の連載では、これまで体重増減を繰り返しさまざまな変化を経た身体が私に及ぼした影響や、ボディポジティブについて綴っていきます。

些細なことでもネガティブに考えてしまう、卑屈でストレスの多い子ども時代

幼少期の私は、外で元気いっぱいに遊ぶよりも室内で絵を描いたりアニメを見たりすることを好むシャイで内向的な子どもでした。母親には「赤ちゃんの頃も育てやすかった」と言われるくらい、元々おとなしい性格だったようです。

そんな私が自分の外見に対して違和感を感じ始めたのは保育園に通っていた頃。手元にある3〜4歳頃の写真を見ると普通体型ですが、おそらくこの後少しずつ太り始めたのだと思います。年長組の男の子に「デブ」と笑われて悲しくなったことを覚えています。

外見に対する違和感は、自分で気にするよりも先に、他人に指摘されたことがきっかけでした。

写真=本人提供

小学生になってからは、同級生の男の子や街中で知らない子どもにからかわれたり、教師に体型を指摘されお説教されることもありました。そんなとき、私は言い返したり自虐して笑いに変えたりすることもできず、相手に言われるがまま、傷付いて家に帰って泣くようなタイプでした。

友達はいたのでなんとかなっていましたが、「他者から否定される経験」を何度もするうちに人目を気にして疑心暗鬼になったり、些細なことでもネガティブに考えてしまったりと、卑屈でストレスの多い子ども時代を過ごすようになっていました。

「からかわれてしまうのは太っている私が悪い」と思う日々

高学年の頃には「太っている女子は初潮が早いらしい」という謎の思い込みをしていた男の子から「お前もう生理になった?」とからかわれたこともあります。子どもとはいえモラルに欠けるありえない発言なのですが、怒りたくなる反面、心のどこかで「からかわれてしまうのは太っている私が悪い」と思ってしまう自分もいました。ほかの女の子たちよりも大きな体格であることが恥ずかしく、自分の身体が嫌いだったのです。

写真=本人提供

子ども用の服も、私にとってはどんどん小さくなっていきました。誰かのお下がりを着ることもできず、当時はまだファストファッションもない時代。今ほど洋服が安くなかったので、パツパツな160cmサイズ(子ども服の最大サイズ)数着を短いスパンで着回す日々。友達が着ているような、リボンやお花があしらわれたかわいらしいデザインの子ども服が羨ましかったことも覚えています。

ちょうどその頃、テレビで健康番組が流行り始めたこともあり、ダイエットを意識するようになりました。子どもながらに走ったり食事を減らしたりした経験も何度かありますが、運動も苦手でうまくいかず挫折。大人でも難しいダイエットは魔法のようにすぐに変化をもたらすものではありませんし、栄養の知識もよく分かっていない成長期の子どもがうまくできなくて当たり前でした。

両親は「大人になったら背も伸びるし自然と痩せるよ」と慰めてくれましたが、自分の身体が自分のものであることにとても違和感がありました。逃れたいのに逃れられない身体。「いつか痩せて、からかってきた人たちを見返したい」そんなふうに思いながら、思春期を迎えていきます。

連載「吉野なおのボディ・ポジティブで生きていく」第2回に続く。

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