44歳で養子を迎えてからドタバタ生活を送っている私ですが、それまでの結婚生活16年間は夫婦2人きりの、よく言えば“大人の暮らし”をしていました。
コミュニケーションが取れているカップルならすごく居心地がよいのですが、そうではないと歯車が少しずつズレてひずみができ、気持ちがモヤモヤしてしまう。
2人だからこそ誤魔化しが効かない。いつも隣にいる近い関係だからこそ「伝えていないこと」や「伝えづらいこと」はありませんか?
2回目の連載は「パートナーへの気持ちの伝え方」についてです。
「毎日がつらい」に対し、瞬時に解決策を提案する夫。でも、そうじゃない…
不妊治療中の悩みに限りませんが、楽しい・嬉しいのポジティブな感情は伝えやすいけれど、悲しい、情けない、落胆、怒り、嫉妬などの自分の弱さは急に口に出せなくなるという人は多いですよね。
相談する人も限られる。だからこそ、少なくともパートナーとは分かち合ってほしい。そんな願いを込めてこの連載を書いています。
私たちが進んだ養子縁組の道では、「夫婦の意見の一致」が必須項目になります。
縁があり子どもを迎えた後に「実は養子縁組に反対だった」と片方が打ち明けたら取り返しがつかないからです。私たちも意見を一致させるために、お互いの気持ちのすり合わせの作業を重ねて今に至りますが、最初からできていたかというと、特に不妊治療中はひどくすれ違っていたと、反省があります。
35歳くらいのころ、私の頭の中は「赤ちゃんはいつ授かるんだろう…」という悩みでいっぱいでした。どんなに頑張っても結果が出ないことに自信を失い、妊娠した後の未来ばかりを考えていると、今の自分の役割や生き甲斐を見つけられずにいたんです。
そんなしんどい状況下で、振り絞って夫に言えたのが「毎日がつらい」という言葉でした。夫からは「じゃあ不妊治療を休もうよ、やめようよ」という言葉が。
私のことを思って、つらい原因を取り除こうとしてくれるのはわかるのですが…。
その解決策の提案、早いんです。
「毎日がつらい」にはもちろん不妊治療も含まれてはいますが、「自信を失っている」「自分の役割や生き甲斐を見つけられない」という想いもあり、ここには書き切れないほどの気持ちがまだまだあります。
追い詰められている状態。この状態こそパートナーと共有すべき大事なことでした。
伝えてくれないとわからないよ、と思うかもしれませんが、たったひと言「どんなことがつらいの?」と聴いてほしいんです。弱さは誰にでも言えることではありません。ここはパートナーの腕の見せどころと思って頑張ってほしいところです。
伝える側も、自分の言葉で伝える努力を
伝える側にも改善点があります。
世の中には意見が合わない、気持ちを理解してもらえない状況は山ほどあります。でも、お互いに好んで選んだ最愛の相手なのだから理解し合っている「はず」。一緒にご飯を食べて眠り暮らしている者同士だから言葉でわざわざ言わなくてもわかる「はず」。不妊治療でクタクタになっている姿、見ているよね…という甘えが当時の私にありました。
でも感情は複雑で、パートナーが想像しきれない部分があります。一方は気持ちを伝えていない、もう一方は想像で考える。これではズレが起きるのも当然。大きくズレてしまう前に自分の言葉で気持ちを伝えていきましょう。
自分の気持ちを知ることはセルフケアのひとつ
では、どうしたら上手に気持ちを伝えられるでしょうか。それにはまず「自分の気持ち」と向き合うことが必要です。
「なんとなくあなたにモヤモヤするんだよね…わからないんだけど」と伝えても、相手はどうすることもできなくて困ってしまいます。
どんなことでモヤモヤしているのかあらかじめ自問自答して整理しておく方が話が展開します。自分の気持ちを知ることはセルフケアのひとつで大事なことですので自分のためにも試してみるといいですよ。
ではもう1つの例です。(実話ですが・・・)
妊娠判定日のある日、「不妊クリニックに一緒に来てほしい」と夫に伝えると「仕事があるから行けない」と返されました。仕事なのは知っていましたから、私は思いを拒絶されたと感じて次のお願いをできなくなりました。
どこを改善すべきか、わかりますか?。
先生から結果を聞くのが怖い、1人だと心細いという「気持ち」の部分をこのとき私は伝えていませんでした。今まで何度も1人で先生の話を聞いて、泣いて帰宅しながら「今回もダメだった」「残念だったね」と短いメッセージのやり取りで終わる。悲しみを分かち合う人もおらず、曖昧なまま次の治療に進んでいました。診察室の緊張感、「妊娠していない」と告げられて言葉が出ないあのとき、手を握っていてほしいと思った。
これらの気持ちを伝えられたら、きっとそこから夫は考えてくれたと思います。
実際仕事を休めるかはわかりませんが、早く帰宅するでしょう。判定日は2週間前には確定しているので対応できるように今後は調整するかもしれません。何よりも判定日にそんな気持ちで妻が過ごしていたことを知ると、その先の行動はきっと変わってくるでしょう。
「前置き」してから話をスタートさせる
最後にもう1つ効果のある簡単なポイントをお伝えします。
話をしているのにテレビを見て聞いているか聞いていないかわからないことありませんか?「ねぇ聞いてるの?」と話の途中で何度も聞くケース、私はしょっちゅうでした。
そんなときは、「話があるんだけど」と前置きしてからスタートしてください。仕事で帰宅したときに突然ではなく、平日忙しいなら「週末に話たいことがあるんだけど」と予告しておくと、相手に「聴く体制」ができます。私はこの手を使って夫とスムーズに大事な話し合いをすることに成功しています。そうは言っても、やっとここ数年ですが。
伝える前に自分の気持ちと向き合い整理しておくこと、そして伝えるときは気持ちもセットで言うこと。もしもあなたの気持ちを聴いてくれたら「嬉しい」「ありがとう」「気持ちスッキリした」と、さらに気持ちを伝え返すとどんどんいい関係が循環しますよ。
*不妊治療中にパートナーとどう対話したか、そこから学んだことはこちらでもお話ししています。