ある日「これから生まれる赤ちゃんがいます、委託可能ですか?」と1本の電話があり、それまでの私の人生は急展開。特別養子縁組の制度を利用して養子を迎え、3人家族がスタート!

日本ではまだ認知度も理解度も成立件数も低い「特別養子縁組ファミリー」になるなんて、みんなと同じことに安心感を求めてきた自分が1番驚いてます。人生本当にわかりません。

そんな予想外の人生を進むことになった私の連載が始まります。第1回は、「思い描いた人生は描き直していい!」です。

「母親になる前提」の人生設計

どんな人生を送りたいか、若い頃は自由に未来を想像しますよね。20歳の頃には、平凡だけど、結婚して、妊娠出産を経て、家族が増えて、笑って。そんなふうに誰から教えられた訳でもなく、適齢期になれば「子どもを産む」と無意識に思っていました。

やりたい仕事とは別のところに「母親になる前提」の人生設計。視野が狭かったといえばそれまでだけど、当時は日本中の多くの女性が、結婚して子どもを産んでいたのでほかの選択肢が私には見えていなかったのです。

はっきりとした自分の考えを持ち合わせていないと、あっという間に大きな「普通」の波に流される。いつしか自分の中に「普通の枠」からはみ出ないようにしようという考えが根付いていました。

賑やかな家庭を希望していた私たち夫婦は「子どもは3人欲しいね!」と、自分が希望すれば子どもの数まで決められるとさえ思っていたのだから、なんて無知!

しかし、3カ月、半年、1年、2年…妊娠しないという事態に陥り、初めて壁にぶつかりました。同時に周囲からの「早く子どもを!」の圧力にクラクラ。結婚しても子どもがいない状態でいる私は急に生きづらさを感じるように。

「お母さんになる」ってそんなに欲張りな願い?

窓からバイバイするのが好きな息子/写真=本人提供

「お母さんになったらしたいこと」「家族で一緒に行きたいところ」は不妊を突きつけられると欲求として浮かび上がりました。

それまでいつかは「親になるだろう」と思っていたけれど、もしかして親になれないかもしれない、この思い描いていた人生は実現しないかもしれないという恐怖に襲われる日々。

しっかり向き合うべきことなのに、つらいから目をそらして、自分の描いた道に早く戻りたい一心で、ひたすら不妊治療を頑張りました。

実際の妊娠率はそう高くはなく、30歳で不妊治療を開始したものの、高度な医療を施しても「運」のようなもので、容赦無く振り出しに戻される。2度の流産があり、3度目の妊娠は安定期に入った後に死産。

治療しなくても妊娠・出産する人がいるのに…お母さんになるってそんなに欲張りな願い?

みんな簡単にお母さんになっていると思っていたし、実際簡単に「子どもを産め」といわれてしまうけど、不妊当事者になってからはずっとそのギャップを感じることに。

生活の全て…時間もお金もかけても結果はゼロ。それでも諦められないのは、妊娠して出産して子育てをスタートさせるという1本道しかなかったから。目標を掲げて、達成せずに途中で止めることの難しさを感じました。

そう、ほかの選択肢……。

普通の家族って存在するの?どんな家族にも悩みはある

 「夫婦2人の人生」や「特別養子縁組」について情報が少ない、モデル像が見えないから踏み切れない、言い訳は山ほどあるけれど、「子どもを育ててこそ一人前」「女の幸せは子を産むこと」なんていわれると、自分が描いた枠を取り払う勇気がありませんでした。

直球でいわれることは減っても、その考えが根っこにあると言葉の端々に現れるものなので、私はたびたび傷つきました。

子どもがいないだけで区別される、優劣を下される。子どもさえいれば…と思う人の気持ちもわかります。だけど、ちょっと待って、子どもがいる「普通の家族」以外を認めない世の中の方がおかしいでしょ。

だいたい普通の家族って存在するの?どんな家族も悩みや葛藤はある。形だけ普通でも意味がないよね?

お誕生日を迎えたときの記念写真/写真=本人提供

そんなことに気づき始めて、やっとたどり着いたのが「自分の描いた未来は描き直してもいい!」ということ。

思い通りに行かないとき、壁に突き当たったとき、困難な状況になったとき、1本道ではなくたくさんの選択肢を考えて、その都度そこから描き直せばいいんじゃないか。これは不妊に限らず全てに言えること。

私たち家族は通りすがりの人からは、どこにでもいる家族に見えるでしょう。だけど、普通の家族を装うことはありません。普通になるために養子を迎えたわけではないからです。

「私たちは家族です、血のつながりがないただそれだけ」と、いえる強さを手に入れたのは大きな収穫。この先、見えない普通を求めることはもうありません。だって普通なんてないんだから。

幸せの形は無数にある

理想の未来に向かって走る姿は輝いて見えます。でも思いもよらないことは起こるし、その危機的状況のときこそ自分と向き合って欲しい。過去の自分にもし伝えられるなら「最初に描いた人生だけが幸せではない、幸せの形は無数にある」そういってあげたい。

「あらゆるワタシに選択肢を」……ランドリーボックスのコンセプトとしているこのフレーズが大好きです。

1本道と決めつけず、常に、ほかの選択肢はあるかな?と考えることが大事ですよね。もちろんパートナーがいれば意見のすり合わせも必要です。そして「どの選択肢に進んでもいい」という世の中の空気とシステムがぜひ追いついて欲しい。これが願いです。

どうしてそんなに前向きなの?モチベーションは?と聞かれることもあるのだけど、確かに人生の絶望を経験しました。ネガティブシンキングに陥ったこともあります。不妊経験者として不妊ピア・カウンセラーという支援する職に就いていますが、支援される側も経験しています。

それは、これからの連載で少しずつお話していきますね。

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