なくなってほしいけどなくなると寂しく思える生理……不思議です。
40代半ば、今は運動が苦手な私。ですが、小学生時代はスポーツ全般が得意な活発な少女でした。
特にマラソンが好きで、校内のマラソン大会では男女混合でも毎年学年のベスト3に必ず入賞。小学4年生時には僅差で2位となり、今年こそ優勝してみせるとの思いを胸に、5年生、11歳の秋を迎えたのです。
快調に飛ばす前半、前には誰もいない。今年こそ!そう思った瞬間、「ズン!」と鈍い痛みが下腹部を襲い、気づくとその場にしゃがみこんでいました。自分を追い抜いていく皆の足取りは軽く、どんどん抜かれていくばかり。悔しいけれど、経験したことのない腹痛で動けません。
初めて20位以下という自分史上最低の成績となったその日、私は初潮を迎えたのでした。その日、お赤飯を炊いてお祝いをしてもらったけれど、「大人の女性」になった喜びより、マラソンの順位を落とした悲しさが上回ったのを覚えています。
それから、体は丸みをおび、早く走ることはできなくなりました。その代わりに毎月くる腹痛と出血。出血は初潮から多めで、休み時間ごとにナプキンを交換しなければならないほど。
同年代の男子も、うっすら生理について知識を持ちはじめていたようで、ナプキンを隠してトイレに行くのは面倒で苦痛でしかありませんでした。
「はしたない」と怒られ、女性失格の言葉に悩んだ日々
成長するにつれ、生理痛も経血量も増えていきました。排卵日にも卵巣が痛み、少量の出血を伴うため、婦人科に通院したものの、「成長に伴う症状」との診断。
当時は生理について友人とフランクに語る機会も少なく、自らの生理事情を語ることは今よりタブー視されていたように思います。
自分の生理が病的なほど「ひどい、重い」と気づくきっかけすらなく、ただひたすら腹痛と出血、頭痛や吐き気などの諸症状に耐えてきました。
どんなに注意しても、布団や下着が汚れる。トイレには血だまりの汚れが残る。
もともと、大雑把な性格だった私は、母に「はしたない」と叱られました。「生理のエチケットを守れないのは、女性として失格だよ、だらしない」と。
母は悪気があったのではなく、私のこれからを心配して言っていたのです。また母自身、重い生理に悩まされ、周りから生理のエチケットについて言われ続けた結果、娘には同じ思いをさせたくなかったのでしょう。
それはわかっていても、毎月の生理日は粗相をしていないか、また女性失格と言われないか、びくびくして過ごしていました。
「子どもがほしい」その思いをも邪魔する生理の存在
就職し、働いてからも生理による重い貧血に悩まされます。貧血は内科で鉄剤処方をされましたが、それまで通院した婦人科で子宮や卵巣の異常を指摘されたことはありませんでした。
そして30歳で結婚。晩婚化が進む昨今、そう遅い結婚ではなかったと思います。ただ同時期に結婚した友人たちは皆すぐに妊娠、出産していきました。
子どもがほしい。でも毎月毎月、生理はやってきます。
夫婦の事情もあり、なかなか病院に行けない中、ついに脂汗が止まらないほどの腹痛に襲われるようになります。通勤電車を途中下車してトイレに駆け込むほどの下痢と吐き気。
これほどひどい症状は、子どもができない理由にも関係しているはず……。ようやく受診した病院で、子宮内膜症により子宮と卵巣が癒着している事実、さらに子宮腺筋症をも患っている事実を知りました。
これまでどの婦人科でも指摘されなかったのは、一体なぜ?
驚いて呆然とする私に、医師は言いました。
「これまでずっと、あなたの生理は相当ひどかったと思うよ。子宮がこんなに大きいし、癒着もかなりひどいもの。本当によくがんばってきたね」と。
何だか解放された気がして、涙が止まりませんでした。
そして、その症状が妊娠、出産に影響を及ぼしていることも判明しました。生理の症状を抑える処置と妊娠を目指すのは相反するものでもあり、また生理との新たな戦いがはじまるのです。
生理は人それぞれ個性がある
ともあれ、不妊治療に特化したクリニックで出会った医師のおかげもあり、やっと自分の生理について許し、認めることができたのです。生理にまつわるすべてにもポジティブに向き合えるようになりました。
過多月経に対応するナプキンなど、目覚ましい進化をとげる生理用品も、私の生理ライフをサポートしてくれました。
現在、生理そのものはあるものの、周期にもばらつきがあり、持病も少し悪化しはじめています。常に私の前に立ちはだかってきた生理。とはいえ、子宮を摘出することや生理を止める処置には抵抗もあり、なんだか不思議な気持ちでもあります。
でももっと早く「生理がつらいよ!」と我慢せずに言えていたら。
時代もあるとはいえ、産婦人科を受けて安心せず、専門病院を受診していたら。
今あなたが、少しでも生理に悩んでいるなら勇気を出して婦人科を受診してほしい。
そして娘のいるお母さんをはじめ、すべての人に「生理にも人それぞれ個性がある」と知ってもらえたら、きっともっとラクに生理と向き合えるのだと思います。