画像=Laundry Box

生理や避妊に関する必要最低限の知識は、子どもの頃に教えてもらいましたが、多様な選択肢や快適な方法は成人してから知ることが多いのではないでしょうか。

私は大人になってから学ぶことの多さによく驚かされます。

フェムテックに含まれる注目ジャンル「セクシャル・ウェルネス」は、セックスのことだけではありません。今回は、大人が自分の身体や性について学べるアメリカの性教育プラットフォーム「O.school」を立ち上げたアンドレア・バリカさんをご紹介します。

一人の女性の課題意識からはじまったサービス

2017年にO.schoolを立ち上げたCEOのアンドレア・バリカ氏はフィリピン系アメリカ人の女性で、保守的なカトリックの家庭で育ちました。


学生起業をしたり、ベンチャーキャピタリストとして活躍していた彼女は、性に関してタブー視する抑圧的な家庭で育った経験から、自分が本来欲しかったサービスとして18歳以上が参加できる性教育プラットフォーム「O.school」を立ち上げました。

O.schoolでは、性教育のプロによる動画配信、性について学べる記事、匿名のオンラインチャットを通じて、大人が性について学ぶことができます。

CEOのバリカ氏は、性に関する悩みや疑問をインターネットで検索しても、間違った情報やポルノの情報が多くがっかりした経験があり、O.schoolを安全な空間で存続させるためにコミュニティガイドラインを設けています。

バリカ氏自身はLGBTQのクィアであることを公言しており、LGBTQ向けの教育動画や記事も発信しています。

O.schoolの記事や動画などは無料で見られるようになっています。ビジネスとしてサイトでのグッズ販売や企業とのスポンサーシップなど、収益を得る試みも動いていますが、まずは多くの人々に信頼されるブランド構築をしている最中だそうです。

「楽しむ」ために知らなければならないこと

性の健康世界学会(World Association for Sexual Health)が掲げるセクシュアル・プレジャー宣言では、セクシュアル・プレジャー(快感・快楽・悦び・楽しさ)とは、「あらゆる人々にとって、差別、強要、暴力を受けることなく、楽しく安全な性的経験が可能であるということは、性の健康とウェルビーイングの基盤をなすものである」と定義しています。

楽しむための知識だけではなく、自分や相手を守る知識も必要だということです。

インターネットが普及して、子どもでも簡単にスマホからポルノを見ることができる時代になりました。ポルノはファンタジーも多く、性を学ぶものとしてふさわしくない誤った情報も含まれます。


性についての偏った情報が多いため、自分の身体についてサイズや形が「正常」ではないと思い込んで不安を抱える人が少なからずいるそうです。このような不必要なバイアスから解放されるために、身体イメージを捉え直す性教育はとても大切です。

日本でも62.4%の女性が経験があるという「性交痛」

「性交痛」の要因は、姿勢、ストレス、体調、コミュニケーションなどさまざま。知識を持つことで、痛みに遭遇したときの対処方法を身につけることができます。

セクシュアル・プレジャーは、年齢を重ねても重要なものです。性欲減退や新たなパートナーとの関係構築など、大人なりの課題が出てきます。平均寿命が伸びている「人生100年時代」、人生を楽しむために性教育は一過性のものから、学び続けるものへと変わっていくでしょう。

自分の身体を知り、コントロールすること

O.schoolには、「オーガズムオーダーフォーム(Orgasm Order Form)」という診断があります。

理想のオーガズムについての質問(「あなたをその気にさせるのは何?」「触られると好きな場所は?」など)に答えていくと、最終的に自分の志向がわかるカードをダウンロードできたり、おすすめ商品を購入できるようになっています。

セクシャル・ウェルネス(性の健康)は、セクシュアリティに対して身体的、感情的、精神的、社会的にも健康な状態のことをいいます。なぜなら、性に関することも健康の一部だからです。

日本の女性誌でもセクシャル・ウェルネスの特集が組まれたり、アイテムが取り上げられたりするようになってきました。

でも、まだまだ女性が性について語ることは相手と場所を選びます。性を語ることでハラスメントの対象になったり、「スラット・シェイミング」という固定された古い女性観で、女性の言動や行動を批判する人々もいます。

そのような人々を相手にする必要はないですが、実害はあるのでO.schoolのようなコミュニティガイドラインにしたがって、女性たちが安心・安全に性について語り合える場は貴重です。

自分自身の身体を知って性を豊かに楽しむために、日本でも大人が性教育を学べる場が増えることを願っています。

フェムテックとは?

Female(女性)× Technology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、生物学的女性の健康課題をテクノロジーで解決するヘルスケアのジャンルです。

「生理」「更年期」「婦人科系疾患」「不妊・妊よう性」「出産・育児」「セクシャルウェルネス」などのカテゴリがあり、それぞれの問題をタブー視せず、前向きに解決するためのサービスやアイテムが数多くあります。フェムテックの市場規模は、2025年には5兆円規模に成長するといわれています。

グローバル有力市場調査会社Market Research Future調べ

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