「セックスのときに痛みを感じたことがあるか?」という質問に対して、「痛みを感じたことがある」と回答した比率は女性が62.4%(※ジャパン・セックスサーベイ2000より)。半数以上の女性が性交痛を経験しています。
こうした悩みはなかなか相談しにくいものですし、原因もさまざま。この記事では、性交痛のおもな原因や対処法について説明します。
性交痛とは
性交痛とは、セックスのときに感じる痛みのことです。挿入するときに痛みを感じるほか、途中から痛みを感じるケースも。痛みを感じるとセックスを続けることが難しく、それが原因となって、セックスをおっくうに感じるという悪循環に陥ってしまうことがあります。
性交痛の痛みを感じる場所とおもな原因について
性交痛は痛みを感じる場所ごとに原因が異なります。
1.腟の入口付近が痛む原因
腟の入り口で感じる痛みの場合、以下のような原因が考えられます。
・うるおい不足
セックスの際、女性の性的な興奮が高まると、腟壁から潤滑液が分泌されます。この分泌が充分でない状態で挿入した場合に痛みを感じます。
・産後
出産後はホルモンバランスの乱れが起きやすいため、潤滑液が充分に分泌されないことがあります。また、出産時に会陰切開をして傷が治りきっていない場合にも痛みを感じます。
・更年期や閉経
更年期になると女性ホルモンの分泌が減少するため、腟や性器などの弾力が失われていきます。そのため、性交痛を感じやすくなります。
・腟炎や外陰炎
粘膜や皮膚の荒れ、細菌感染などによって、腟や外陰部が炎症を起こしていると痛みを感じます。
2.腟の奥が痛む原因
腟の奥や下腹部に痛みを感じる性交痛は、以下のような可能性があります。
・子宮後屈(こうくつ)
子宮が背中側に傾いている子宮後屈の場合、体位によっては痛みを感じる場合があります。
・婦人科系疾患
クラミジア感染症や子宮内膜症、卵巣腫瘍などの婦人科系疾患の可能性があります。これらの疾患はほうっておくと手術が必要になったり、不妊症の原因になったりするリスクもあります。また、過去に子宮内膜症や骨盤内感染にかかったことがある場合も、痛みの原因になることがあります。
・サイズが合わない
男性器と女性器のサイズが合わないことが原因で、性交痛を感じることがあります。
3.性的興奮障害による性交痛
1や2のような疾患や原因がないにも関わらず性交痛を感じる場合は、性的興奮障害の可能性があります。性的興奮障害とは、性的な刺激を受けても、精神的または身体的もしくは両方で性的興奮が起きない状態のこと。以下のような要因が考えられます。
・抑うつ、不安、ストレスなどの心理的な要因
・パートナーとの関係性がよくない
・閉経後や分娩後で、エストロゲンが低下している
・セックスに没頭できない環境であること
・性行為に対してそもそも無関心であること
・過去に経験した性交痛への心的外傷がある場合
性交痛の対処法について
うるおい不足は、潤滑剤を使用する
うるおいが不足している場合は、潤滑剤を使用してみましょう。潤滑剤の使用に抵抗のある人もいるかもしれませんが、最近は女性向けで保湿剤としても利用できる潤滑剤が販売されています。
たとえば、YES インティメイト・ウォーターローション WBは、成分の96%がオーガニック成分で作られています。潤滑剤としてだけでなく、下着による摩擦や脱毛後の保湿にも利用できます。
男性器のサイズが大きくて痛みを感じる場合、挿入後にお互いの性器がなじむまで時間をとり、ゆっくり動かすことで痛みを緩和できることもあります。挿入深度をコントロールできるプロダクトなども販売されています。
婦人科を受診する
性交痛はさまざまな原因が考えられます。強い痛みを感じる場合や性交痛が続いている場合は、婦人科の医師に相談してみましょう。
婦人科を受診すれば、原因が判明しやすくその後の対処法についても相談にのってもらえます。たとえば、エストロゲンが減少している場合は、エストロゲンを投与するなど薬物治療を行うこともあります。
性交痛を感じたことのある女性は半数以上です。多くの方が悩みを抱えながらも、なかなか人に話すのが難しいテーマでもあります。この記事が、性交痛に悩む人の助けになれば幸いです。
監修者プロフィール
宋美玄(そん みひょん)
産婦人科医、医学博士、丸の内の森レディースクリニック院長。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動中。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。