前回の記事では、私が性交痛治療のために取り組んだことを紹介しました。
今回は、性交痛が原因で性行為ができなかった頃に出会った夫と、どのように付き合うことに至ったのか、そしてなぜ結婚したのかを、夫へのインタビューを交えながらお伝えします。
性行為ができないことで交際について悩んでいる人や、性交痛を抱える女性がパートナーとコミュニケーションをとる際のヒントとなれば嬉しいです。
性行為ができないと伝えると音信不通になる男性たち

28歳の春、私は必死で婚活をしていました。
最初はマッチングアプリで出会いを探していましたが、マッチングアプリで出会った男性から「お付き合いしよう」と言われても、性交痛がありセックスが難しいことを伝えると、病院で治療中であることも伝えても、突然音信不通になることが続きました。
この状況を変えるには、プロの力を借りる必要があると感じ、アプリと並行して結婚相談所にも入りました。私が入会した結婚相談所では、相談所以外で出会った男性との恋愛も相談できたので、付き合う前の夫のことも相談していました。
相談所の方からは、私が陥っている状況から、新しく会う男性に対して、全てを最初から開示するのではなく、どのタイミングで何を伝えていくのかなどをアドバイスいただきました。そのアドバイスも踏まえ、夫とのコミュニケーションに臨んでいました。
知り合って5回目くらいのデートの最後に、夫から交際を申し込まれました。私は、そこで初めて持病があり性行為がまともにできないことを伝えました。
そして、それでもいいなら付き合うし、不安ならこのまま一緒に遊ぶ関係を続けてもいい、とも付け加えました。正直、後者を選んだらその日を最後に二度と会わないつもりでした。夫はそれでもいいと言ってくれたので、私たちは付き合うことになりました。
夫が告白してくれたのは繁華街の駅前で、大声で話せる話題でもなかったので、性交痛の話はここでは伝えづらいなあと思ったのを覚えています。今思えば、小さめの声で伝えていたので、もしかしたら夫もよく聞こえていなかったかもしれません(笑)
その後数ヶ月経って、夫から性交痛のことについて詳しく聞きたいと言われたので、症状や受けている治療とその経過を伝えました。
この時に、私自身の症状について具体的に理解してもらい、性行為ができるようになることを目標に、できるところまで挑戦していこうという共通認識を持つことができたように思います。
女性から性行為ができないと言われたら?交際に至った想いとは

私自身はそう思っていますが、当時、夫自身はどのように感じていたのか。性交痛のある女性と結婚することを決意した夫に、私と交際し、結婚することを決めた理由について聞いてみることにしました。
ーー今日は時間を作ってくれてありがとう。私に告白をしてくれたとき、性行為が難しいことを伝えたと思うんだけど、そのときはどんなことを考えてた?
シンプルに、そうかぁ、と思ったかな。
ーー 性交痛があり性行為が難しいことを知った上で、それでも付き合うかどうか聞いたときに、付き合うと即答してくれたよね。
体のことは、付き合わない理由にはならなかったな。ただ、自分にとってもそういう状態の女性と付き合うのは初めてのことだから、この後どのように付き合っていくのかは具体的に想像がつかなかった。
ーー そうだよね。付き合わない理由にはならなかったというのは嬉しいよ。交際後、2ヶ月くらい全く手を出してこなかったよね。それはどうして?
体の状態について深く聞いていなかったので、誘いにくかったというのもあるね。ただ、性行為だけが付き合うということではないので、それ以外のところで向き合うことにしていた。
ーー あまり人前でするような話題でもないし、なかなか深い話をするチャンスもなかったよね。初めてあなたの家に行った時に、性交痛や治療の経過について詳しく話したのを覚えてる?その時、私の話を聞いてどう思った?
前向きに色々な治療方法を試して試行錯誤している、ということを教えてくれたから、いい方向に進んでいくんだろうなと思ったよ。
最後まではできないかもしれないけど、折り合いを付けられそうなところを見つけられたり、相談できるプロフェッショナルは見つかりそうかな?と思った。その話を聞くまでは、もう一生性行為はできないという状況なのかもしれないとも思っていたから、意外といい方向に進みそうなのかなと思った。
ーー ポジティブだね。
うん、でも本人にそれを言うのはプレッシャーになってしまうかもしれないなと思って言わなかったけどね。
それに、もし良い解決策が見つからなくて、本当に性行為はもう痛くてできないとなってしまった時は、その時にまた2人の関係性を探ればいいのかなと思ってたよ。
性行為できないから別れようとは思っていなかった。性行為の有無が、交際の継続や結婚の判断に全く関係ないわけではなかったけど、君が思うほど重要なわけでもなかったよ。
ーー 交際において性行為の重要度はそこまで高くなかったの?
20代中盤までと20代後半で重要度が変わったと思う。僕がそうだっただけで全員に当てはまるものではないけれど、20代後半になって性行為の優先順位が落ちた感覚はあった。
ーー じゃあもっと若い頃に私たちが出会っていたら、結婚はしてなかったかもしれないね。
確かに性行為がないのは耐えられなかったかもしれない。ただ、若い頃でも、性行為ができないと言われてすぐに振るようなことはしないと思う。付き合い続けられるかどうか、すぐに判断はできないよ。
ーー 付き合い続けることを考えてくれる時点で貴重な存在だと思ったよ。付き合っている間も、私が複数の治療法を試していたのを近くで見てくれていたよね。
うん、いいことだと思って見てた。
君は痛みなく性行為ができるようになることが、僕にとって、もしくは2人の関係性にとっていいことだと思っていたんだと思うけれど、僕はちょっと違うように考えていた。
ーー それはどういうこと?
性行為ができないことが、君自身にとってコンプレックスになっていて、内向きになっている印象があったから、それが解消されることが何よりいいことだと思っていた。
性行為ができるようになることで、君が明るくなって気負いがなくなると良いなと思っていた。
ーー そんな風に思ってくれていたんだ。確かに、この間あなたの友達を交えて飲んだとき、みんなの猥談に自分も入れたのがすごく嬉しかった。今までは、エロい話になるとついていけなくて悲しい気持ちになっていたから。
そうだね。性経験がないから話の輪に入れない、というところで卑屈になっているのは見ていて感じ取れたよ。だから、性行為ができるようになれば、その卑屈さは解消されるんじゃないかなと思っていた。
実際に、治療がうまくいきはじめてからは、内面の変化も含めて君の調子が右肩上がりだったし、付き合い続ける覚悟ができた。
ーーそんな深いところまで読み取ってくれていたんだね。実際に私と性行為を試みるにあたって気をつけていたことはある?
性行為が痛いとは聞いていたので、どういう状況でどのような痛みがあるか、というのを具体的に聞き出すようにしていた。あと、性行為をしないといけない、と思って無理に我慢している部分があるかもしれないと思ったから、それは違う、ということを伝えるように意識していた。
ーー 具体的に痛みのタイミングと痛む箇所を共有できたから、私も安心して試すことができた。場の雰囲気とかではなく、ちゃんと言葉にしてコミュニケーションを取ってくれたのはとっても嬉しかった。
もちろん、最初は探り探りだったけどね。
ーー この連載は、私と同じように性交痛で悩んでいる人の参考になればと思って書いていて、性別では括れないけれど、男性から見て、どのように伝えたら理解しやすい、受け入れやすいかなどあるかな?
性交痛に対して、自分がどうしたいのかを伝えてほしいかな。
例えば、治療をしたいと思っているのか、もう性行為はしたくないのか。それが分かれば、これから性行為とどう向き合っていくか話し合いができると思うから。
ただ、性交痛の対策について、パートナーも色々調べて治療法などをアドバイスをすることもあるかもしれない。もう自分でも調べたよ!知ってるよ!と思っても、こちらは善意で言っていることは受け止めて、あまり怒らないでほしいかも(笑)
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夫へのインタビューを通して、私が性行為とどのように向き合っていくかを優しく静かに見守っていてくれことを知り、大きな感謝の気持ちを抱きました。
私は、性交痛があることで、男性からは恋愛対象として見られず、女性同士の恋愛トークにも入ることができませんでした。人に拒絶されたり疎外感を感じたりする経験を重ねるなかで、もう女性として生きるのは辞めてしまいたい、誰とも話したくない、と卑屈になっていました。
夫との交際が順調に進んだのは、性交痛を克服することが何より私自身にとって良いことだ、と夫が理解してくれていたからだと思います。
この記事が、性交痛を持つあなたとパートナーのコミュニケーションのヒントになりますように。