緊急避妊薬(アフターピル)「ノルレボ」が、2026年2月2日より、厚生労働省が定めた一定の基準を満たした薬局・ドラッグストアで購入できるようになりました。

2025年10月20日に厚生労働省により市販化が承認された、要指導医薬品であるノルレボは、婦人科を受診せずに入手できる一方で、プライバシーに配慮した空間で研修を受けた薬剤師によるチェックを受け、その場で服用する必要がある薬です。

2026年1月に「ノルレボ」の販売元である第一三共ヘルスケアが緊急避妊薬(アフターピル)「ノルレボ®」メディア勉強会を開催。

当日は、薬局で購入する際のデモンストレーションのほか、産婦人科医・高尾美穂先生が登壇し、緊急避妊薬市販化の意義について見解を述べました。

予期せぬ妊娠を防ぎ、女性が自分の人生とからだのことを自分で選択できるために。この記事では、薬局における緊急避妊薬の入手方法や緊急避妊薬を取り巻く現状についてお届けします。

緊急避妊薬の市販化(OTC化)までの経緯については、こちらをご覧ください。

薬局・ドラッグストアで買える緊急避妊薬「ノルレボ」とは

画像提供:第一三共ヘルスケア

価格:税抜き 6,800円(税込 7,480円)成分・分量:レボノルゲストレル 1.5mg

緊急避妊薬の効果について

「ノルレボ」は、女性が服用する緊急避妊薬。避妊に失敗した、避妊ができなかったなど、予期せぬ状況で妊娠の可能性が生じた際に、妊娠を防ぐことを目的とした医薬品です。

妊娠の可能性がある性交から72時間以内に服用する必要があり、72時間以内に服用した場合の妊娠阻止率(妊娠を防ぐ確率)は81%。できるだけ早く服用することで、より高い妊娠阻止率が期待できます。

服用後は、3週間を目安に妊娠検査薬を使用する、もしくは医療機関を受診して妊娠の有無を確認する必要があります。

緊急避妊薬と中絶薬の違いについて

緊急避妊薬の有効成分である「レボノルゲストレル」は、女性ホルモンである「黄体ホルモン」の一種です。服用することで体内のホルモンバランスに影響を与え、主に排卵を抑制し妊娠を防ぐと考えられています。

妊娠の成立そのものを防ぐため、いわゆる「中絶薬」とは異なります。着床し、成立した妊娠には有効性が期待できないため、妊娠中は服用できません。

性交後に緊急的に妊娠を防ぐために使用され、あくまでも「緊急用」としての位置づけです。日頃からの計画的な避妊とあわせて、必要なときに備えて知っておきたい選択肢のひとつです。

緊急避妊薬「ノルレボ」はどこで入手できるの?

現在、緊急避妊薬「ノルレボ」を取り扱うことができる店舗は、研修を修了した薬剤師が勤務していること、プライバシーへの十分な配慮ができ、面前服用のための隠匿性の確保ができること、そして近隣の医療機関との連携体制を構築できることなど、一定の条件を満たした薬局やドラッグストアに限られます。

取扱店舗は厚生労働省のウェブサイトで公開されており、2026年2月2日8時時点で、厚生労働省のリストには7000件以上の薬局が掲載されいます。

そのほか、厚生労働省の情報をもとに「ノルレボ」公式サイトでは、近くの取扱店舗を検索できるページを公開予定のほか、静岡にある医療機関「溝口ファミリークリニック」などが、緊急避妊薬を購入できる薬局・店舗一覧をGoogleマップで公開するなどしています。

ノルレボ公式サイトの取扱店検索システム 画⾯イメージ

その他、

緊急避妊薬「ノルレボ」薬局での購入条件は?

ドラッグストアでの購入する際のデモンストレーションの様子(画像提供:第一三共ヘルスケア)

薬局やドラッグストアで「ノルレボ」を購入する場合、薬剤師の面前で服用することが必須です。

そのため、代理での購入や受け取りはできず、薬を必要とす女性本人に対してのみ販売されます。

パートナーや親の同意は不要で、年齢制限も設けられていません

薬局での購入時には、緊急避妊薬に関する研修を修了した薬剤師がチェックシートを用いて確認を行い、服用可能と判断された場合にのみ、その場で薬を服用します。

こうした手順は、安全に薬を使用するために必要なプロセスであり、必要に応じて支援や相談先につなぐ役割も担います。

ノルレボ」を薬局で購入、服用するまでの流れ

薬局やドラッグストアで緊急避妊薬を購入、服用するまでの流れを紹介します。

<「ノルレボ」服用までの流れ>

① 購入の意思を伝える

② チェックシートを記入する

③ (服用可能と判断された場合)服用前の説明を受ける

④ 薬剤師の面前で服用する

⑤ 服用後の説明を受ける

⑥ 【服用後】妊娠の有無を確認する

① 購入の意思を伝える

取り扱い店舗に行く前に、「ノルレボ」公式サイトで薬の内容や購入条件、取扱店舗などを確認しておくとスムーズです。

購入時の薬剤師とのやり取りは、パーテーションで周囲を遮る、あるいは個室を用いるなど、プライバシーに配慮した環境下で行われます。

店舗の薬剤師やスタッフに「ノルレボを購入したい」と伝えましょう。うまく言葉にできない場合は、リーフレットやスマートフォンの画面を見せて伝えることも可能です。

② チェックシートを確認する

画像提供:第一三共ヘルスケア

購入時には所定のチェックシートへの記入が必要です。

チェックシートでは、アレルギーの有無や持病、妊娠の可能性、現在服用している薬などを確認します。加えて年齢、直近の生理、性交の状況などについても確認が行われます。また公式サイトでは、セルフチェックシートが公開されています。

③(服用可能と判断された場合)服用前の注意事項の説明を受ける

薬剤師が、チェックシートを確認し、安全に服用できるか、すでに妊娠している可能性がないかなどを確認します。

服用できると判断された場合は、服用前の注意点などの説明を受けます。条件に当てはまらず店頭で購入できない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。​

④ 薬剤師の面前で服用する

薬剤師の面前で「ノルレボ」を服用します。持ち帰ったり、他人に渡したりすることはできません。

⑤ 服用後の説明を受ける

服用後の妊娠有無の確認の必要性や確認方法について説明を受けます。

また、緊急避妊薬が必要となる背景に、性暴力やDVといった事情が関係している場合もあります。

必要に応じて支援につなげられるよう、指差しで確認できるシートなどを用いて、相談の必要がないか確認する仕組みも設けられています。必要な場合は、専用の相談窓口などが案内されます。

指差しで伝えることができる確認シート(画像提供:第一三共ヘルスケア)

⑥【服用後】妊娠の有無を確認する

ノルレボの効果は服用後すぐにはわかりません。服用して3週間後に妊娠検査薬の使用または医療機関の受診により妊娠の有無を確認しましょう。

妊娠検査薬で検査した結果、陽性の場合はできるだけ早く医療機関を受診してください。

薬局で買えるけど、誰でも自由に買えるわけではない

「ノルレボ」は、要指導医薬品です。薬局で購入できるようになりましたが、誰でも自由に手に取れる医薬品ではありません。

薬剤師による確認や面前での服用、服用後の情報提供、さらに3週間後の妊娠確認といった手順を設けることで、適切な使用を促すとともに、不適切な利用のリスクを防ぐ仕組みになっています。

緊急避妊薬OTC化について産婦人科医はどうみている?

緊急避妊薬が必要とされる理由

高尾美穂先生(画像提供:第一三共ヘルスケア)

産婦人科医 高尾美穂先生は緊急避妊薬の位置づけについて、次のように述べました。

「『緊急』という言葉がついている通り、日常生活で度々使われることを想定して作られているわけではありません。

普段、低用量ピルなどで避妊をしているものの、飲むタイミングがずれてしまった、もしくはおでかけをしていて飲み忘れてしまったなど、本来のセーフティーネットがうまくいかなかったときの『緊急』として使われる、という考えを持っていただくことが日本の社会ではまだ必要だと考えています」

欧米諸国では、避妊は男性用コンドームだけでなく、経口避妊薬(ピル)や子宮内避妊具など、さまざまな選択肢が普及しています。

一方、日本では男性用コンドームへの依存度が高く、女性主体の避妊法が広がりにくい傾向があります。その結果、避妊に失敗した場合などに、女性が予期せぬ妊娠のリスクに直面しやすいという現状があります。

第一三共ヘルスケア株式会社の調査によると、「妊娠を望んでいないのに避妊に失敗した」「避妊ができなかった」といった、予期せぬ妊娠のリスクを経験した割合は、1年以内に性行為を経験した人の約5人に1人にのぼります。 

実際に日本では、人工妊娠中絶が年間約13万件行われています。

普段から避妊をしていたとしても、予期せぬ妊娠のリスクに直面することは、誰にでも起こり得ることです。

高尾先生はこうした現状のなかで、今回の緊急避妊薬の市販化について「やっとたどり着いた」と話します。

カルテに残したくない。医療現場での受診ハードル

緊急避妊薬は2011年に日本で初めて承認されて以来、病院やクリニックで処方される医療用医薬品として扱われてきました。

しかし、必要としていても医療機関にアクセスするまでのハードルは高いのが実情です。

医療現場を見てきた高尾先生によると、若年層の場合は、保険証が親の管理下にあることを理由に受診をためらったケースもあったといいます。

また、婦人科で緊急避妊について相談する場合、問診で直接伝える必要があり、かかりつけの婦人科であっても相談しづらかったり、内容がカルテとして残ることに抵抗感を抱いたりする人もいます。

さらに、緊急避妊薬はできるだけ早く服用するほど妊娠阻止率が高まる一方で、病院は24時間対応しているわけではありません。

そのような中で、緊急避妊薬の市販化は、営業時間の制約はあるものの、必要な人が必要なときにアクセスできる選択肢を広げるものだといいます。

必要としている女性に届く方法が増える。その点において、今回の市販化は非常に大きな一歩だと考えています」

妊娠のタイミングを自分で決める「SRHR」という考え方

予期せぬ妊娠は、誰にでも起こりうることです。だからこそ「妊娠するかどうか」「いつ妊娠するか」といった選択を、自分自身の意思で決められることが大切です。

その考え方の背景にあるのが、SRHR(セクシュアルリプロダクティブ・ヘルス/ライツ)です。

SRHRは「性と生殖に関する健康と権利」とも訳され、妊娠・出産に関する自己決定権も含まれます。

妊娠するのか・しないのか、どのタイミングで妊娠をするのか、何人の子どもを持つのかなど、自分のからだや人生について、自分で決めていく権利のことを指します。

高尾先生は「女性が働き続ける時代において、キャリアとの重なりをどこで望むのか。これを自分で決めていくという感覚を、より多くの女性に持っていただきたい」と述べました。

避妊の選択肢と「もしも」に備えるセーフティネット

妊娠は男女間での性交渉によって成立しますが、妊娠にともなう身体的な負担やリスクは、主に女性側が引き受けることになります。

日本では避妊方法として男性用コンドームが圧倒的に多く用いられていますが、WHO(世界保健機関)はコンドームを、性感染症(STI)予防に有効な方法として位置づけています。

また日本では、「リズム法(カレンダー法)」のように、排卵日を推定して性交のタイミングを避けるざっくりとした方法が、いまだ避妊方法の一つとして挙げられます。

経口避妊薬(ピル)の種類は増え、それぞれの特徴も多様になってきています。ひとつの薬が合わなかったからといって諦める必要のない社会へ、少しずつ変化してきているともいえるでしょう。

そのなかで国際的には、使用をやめたときに妊娠を望める状態へ戻りやすい避妊法も選択肢として広がっています。

子宮内避妊システム(IUS)」や「子宮内避妊具(IUD)」は、子宮内に装着することで避妊効果を得る方法です。効果が高く、一度挿入すれば一定期間効果が持続し、クリニックで取り外すことで妊娠が可能になります。

しかし、どのような避妊方法を選んでいたとしても、望まない妊娠のリスクがゼロになるわけではありません。

パートナーとの性交渉に限らず、犯罪やDVなど、望んでいない出来事に遭遇する可能性は誰にでもあります。

「もしも」のときに緊急避妊薬の存在を知っておくことは、自分の願った人生を実現していくための選択肢になります。

引き続き処方薬としても扱われるため、不安がある場合は医療機関を受診し、医師の説明を受けたうえで処方を受けることも可能です。

高尾先生は、「こうした薬を使わずに済む人生であれば、それが一番いい。関係ない人には関係ないけれど、必要な人には必要だからこそ、その道筋をつくるという考え方を広く届けていけたら」と選択肢を広げる重要性を伝えました。

画像提供:第一三共ヘルスケア

正しい情報が享受できる、セーフティネットが整った社会へ

まだ避妊方法の認知が十分に広がっているとはいえず、緊急避妊薬についても誤解や混同が生じやすい状況があります。

たとえば「緊急避妊薬」「経口避妊薬」「経口中絶薬」はいずれも漢字5文字で表記が似ており、用途が異なるにもかかわらず混同されてしまうことも。

そうした現状だからこそ、正しく理解しやすい情報が整備された社会にしていくことが求められます。

最後に高尾先生は、女性の健康に関する社会のあり方は少しずつあるべき姿に変化して生きていると感じているとしつつ、望んでいない出来事に直面したときにも、必要な支援につながれるセーフティーネットが社会に整っていること、セーフティネットがあることを知る大切さを語りました。

「女性の健康課題には、本人の努力だけで解決できることばかりではなく、周囲と知識を共有しながら選択していく必要がある分野もあります。

そのため、自分たちの人生や将来についてパートナーと考え、選ぶ機会や場を持つことも大切です」

画像提供:第一三共ヘルスケアシステム株式会社

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