重たい生理を「異常」と思っていなかった

初潮を迎えて以来、ひどい生理痛と経血量の多さに悩まされてきました。<参考記事:「はしたない」と叱られて。生理への憎しみや愛着のはざまに思うこと>

結婚したのはちょうど30歳くらいの頃で、当時はおそらく重たい生理のピークにあったと思います。

通勤中に途中下車してトイレに駆け込んだり、残業して帰る頃、会社の椅子にべっとりと血がついてたりすることを「異常」とは思わないほど、重たい生理に慣れてしまっていました。

ただ、結婚、そして出産を考えるようになると「もしかして、妊娠しにくいかもしれないな……」との思いが頭をかすめるようになったのです。

結婚後に転居したこともあり、婦人科の受診からも足が遠のいていましたが、意を決して近所のクリニックを訪ねました。

子宮内膜症と診断されないまま、不妊治療スタート

待合室で待つ間、隣に座る妊婦さんたちが本当にキラキラ美しく「私もこんなふうに輝ける日がくるのかなあ?」という、憧れと不安に満ちた思いで眺めていました。

そのクリニックでは、排卵日を予測して性交渉する「タイミング法」という、ごく一般的な方法にとどまりました。しかし結果は出ず。

次は、不妊治療を中心に行う少し離れたエリアのクリニックに通うことにしました。

私の子宮はかなり肥大しており、卵巣とも癒着していたにもかかわらず、最初のクリニックでも、その次のクリニックでも「子宮内膜症」を指摘されるには至りませんでした。

それが生理痛を悪化させている「諸悪の根源」であったのに。

生理が女性ホルモンの分泌によるものだというのは、よく知られています。不妊治療は、女性ホルモン(エストロゲン)のはたらきかけによって排卵を促します。

初歩的な不妊治療においても、人工授精や体外受精など高度な治療においても女性ホルモンにはたらきかけるのは同じです。

そして「諸悪の根源」である子宮内膜症も、女性ホルモンによって増大するのです。

妊活を行うには、内膜症の悪化を覚悟しなければならないということです。
 

不妊治療によって、毎月の生理がますますひどくなる

それでも、そのしくみを理解し、覚悟のうえであればまだよかったかもしれません。ですが、これまで私の子宮内膜症を指摘する婦人科医には出会えず、毎月女性ホルモンにはたらきかける、排卵誘発が行われるだけでした。

私の子宮や卵巣は悲鳴を上げ、生理と生理痛はひどくなるばかり。経血がシャワーのように止まらず、体内の血がすべて流れ出てしまうのではないかと感じられるほどでした。毎月の生理日は、恐怖と悲しみに襲われたのです。

しかしながら、妊娠は叶わないまま3度目の転院。

転院先のクリニックで、ようやく子宮内膜症と診断されます。医師により、妊活が生理を悪化させていて、このままは治療を続けることは難しいと、厳しい現実を突きつけられたのでした。

それまで毎月1週間、「生理は子どもをつくるために必要な身体のしくみだから」と生理痛に耐えてきました。でも10代からずっと私を苦しめてきたコイツ、生理は、妊娠を望む私をやっぱり苦しめ続けるんだ。子どもがほしい気持ちも叶わずに、なぜ生理は来るだろう?
 

「しばらく生理を止めよう」医師からの提案

自らも不妊治療を続けてきたと話す女性医師は、私にこういいました。「しばらく生理を止めよう」——薬で排卵を抑え、子宮内膜症の進行を止めた後に、あらためて不妊治療を開始することを提案をされたのです。

そのとき30代半ばに差し掛かり、治療を始める年齢としてはそう若くなかった私は、医師の提案に戸惑いました。こんなことをしている間にも、時間はどんどん過ぎていき、また年齢を重ねてしまう。

でも滝のように流れ出る生理の血を思うと、もうその道しかないようにも感じました。こうして生理を止める治療が始まります。

本来のホルモン分泌を止めるために、強い薬を用いなくてはなりません。女性ホルモンを抑えることによる更年期障害の症状が多発し、生理とはまた違う苦しみを抱えることに。でも同時に生理が来ない快適さもありました。
 

重たい生理をほうっておかず、もっと早く手を打てば…

生理を止めるのは子宮内膜症の治療のスタートにすぎず、その後もさまざまな治療を続けました。基本は女性ホルモンとの戦いで、何度も何度も生理を恨み、悲しみ、最後はカオスのような感情が渦巻く日々。

ようやく息子を授かったのは、30代の終わりにさしかかった頃でした。

そして妊娠しても、生理や女性ホルモンに関わる子宮内膜症の影響で無事に出産できるか気の抜けない毎日を送ったのです。

私は内膜症であることを自覚していれば、生理についても妊活についても、もっと早く手を打てたのではないかと思います。

私が治療を受けていた頃よりも、子宮内膜症の患者が増えているといいます。生理痛に悩む人に寄り添う婦人科の医師が増えたように感じますし、将来の妊娠に備え、若い頃からピルで症状を抑える治療を提案してくれる医師もいます。

だから、少しでも「自分の生理、大丈夫?」と思ったら婦人科の受診をおすすめします。
 

将来的に子どもを望むなら、いま自分の生理と向き合おう

年齢を重ねるごとに、女性ホルモンの分泌量は少なくなり、不妊治療はどんどん難しくなります。いますぐではなくても、将来的に子どもがほしい人は早めに婦人科へ行き、自分の生理を知ってほしい。

「自然に任せる」と決めていたとしても、どんな可能性があるのかを知っておくのは精神的にも安心できます。

そういう時代だったのかもしれませんが、私は「生理痛=病気じゃない」という思い込みがあったので、ずっと歯を食いしばって耐えてきました。

でも40代になったいま、ようやく生理と不妊の関係性を理解し、「生理は我慢するものじゃないんだ」としみじみ思うのです。

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