不妊治療にはいくつかのステップがあり、どのステップからスタートするかは個人によって違いますが、一般的にファーストステップといわれるのがタイミング法です。
不妊の定義
不妊とは「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交しているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態」とされていて、日本産科婦人科学会では一定期間を1年間と定義しています。
不妊は男性と女性どちらか、もしくは双方に原因があることもあれば、原因がわからない場合も。ただ、男女ともに加齢によって妊娠力が低下することはわかっているため、初婚年齢や初産年齢が上昇している最近では不妊治療を受けるカップルが増えています。
不妊治療にはいくつかのステップがあり、個人に合わせてどのステップからスタートするのかは違いますが、一般的にファーストステップといわれるのがタイミング法です。
妊娠の仕組みとタイミング法を行う時期
タイミング法では、排卵2日前頃から~排卵日まで続けて性交を行うことが推奨されています。なぜ、このタイミングなのかは、妊娠の仕組みを知るとわかります。
妊娠は、卵子と精子が出会って受精卵になり、子宮内に移動して着床するという順序です。卵子と精子が出会うためには、卵巣から卵子が飛び出す排卵のときに、精子が卵子の近くにいる必要があります。
卵子の寿命は約1日、精子の寿命は約3日といわれているので、排卵時に精子が近くにいるためには、排卵2日前頃から~排卵日まで性交するのが望ましいといわれています。
性交のタイミングが合っていた場合に妊娠する確率は、20歳前半で30%、30歳で20%、35歳で10%ほどです。
タイミング法が成功しやすい3つの条件
タイミング法を成功させやすい条件は、以下の3つです。
1.排卵日を正確に把握すること
卵子と精子は寿命が短いため、できるだけ正確に排卵日を予測することが大事です。排卵日を予測するには、以下の方法があります。
- 基礎体温を計測し、体温の変化で予測する
- 排卵日検査薬を使用する
- 産婦人科で卵胞の大きさや尿中のホルモンを測定し予測
正確に知るには、不妊治療をしている産婦人科や婦人科に行くことをおすすめします。排卵日の予測だけでなく、状況に応じて排卵誘発剤の投与などの治療を受けられます。
2.卵管が少なくても片側は通っていること
精子は膣内に放出されると、子宮から卵管へと泳いでいきます。そこで卵巣から飛び出した卵子と出会うと受精し、卵管を通って子宮に移動します。
そのため、精子や受精卵が通り道となる卵管を通れることが重要です。
卵管は細いところでは1mm程度しかなく、癒着・閉鎖・炎症などが起きている場合があります。
産婦人科では卵管の状態を調べる検査(卵管通水検査、卵管造影検査)ができます。タイミング法で妊娠しない場合には検査の相談をしましょう。必要に応じて、治療を受ける場合もあります。
3.精子検査結果に問題がないこと
精子検査とは、精子の数や質に不妊にかかわる要因がないかを調べる検査です。不妊症の原因の約半分は男性にもあるといわれています。タイミング法を試すときに精子検査も一緒に受けることをおすすめします。
病院でのタイミング法
病院やクリニックによって違いはありますが、排卵チェック、タイミングの指導、排卵誘発剤の内服や注射、卵子の成熟具合の観察を行うことが多いようです。
排卵誘発剤を投与したり、卵子の状態をチェックしたりすると、通院が連日になることがあり、仕事などのスケジュール調整が必要になる場合も出てきます。
半年から1年ほどタイミング法を試して妊娠が成立しなかった場合は、不妊治療のステップアップをすすめられることが多いです。どんなステップがあるのかを知りたい人は「不妊治療のステップ」の記事も参考にしてください。
妊娠の要因として年齢の影響は大きいため、不妊治療は早く始めるほど妊娠の可能性を高めることにつながります。「もしかしたら不妊かも」と思っている人は、早めに婦人科を受診することをおすすめします。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。