アスリートとして身体は最高の状態でありたい。

でも、生理によるさまざまな苦痛は耐えられない。

私は生理との向き合い方に葛藤していた(連載第2回より)。

サッカーをするためにドイツに渡ったのは、そんな葛藤の最中、大学を卒業してすぐのことだった。2017年から2019年の間、日本人が1人もいない街でプレーしていた中でさまざまなカルチャーショックを体験した。なかでも、生理に関するカルチャーショックは凄まじかった。

股からヒモをはみ出させるのがチームメイトのアタリマエ

ドイツでは、どのスタジアムにもロッカールームに併設してシャワールームがある。そして、そのシャワールームというのが完全なオープンスペース。壁やカーテンはついておらず、全員が目視できる状態でシャワーを浴びることになる。ドイツに渡ったばかりの頃、シャワーを浴びている際に、チームメイトの股にヒモが挟まっていることに気がついた。トイレットペーパーが付いてしまっているのかと思ったが、どうやら違う。様子をうかがうと、ほかにも同様にヒモが挟まっているチームメイトがちらほら。そのヒモの正体は、タンポンのヒモだった。

日本では、生理用品を他人に見せることへの恥ずかしさがあると思う。装着前の状態ならまだしも、装着している状態などなおさらだ。その感覚がアタリマエだと思っていた私は、アタリマエのようにプライベートゾーンからヒモをはみ出させるチームメイトの姿にびっくりした。「生理や生理用品に対する感覚が、ちがう」と。

ドイツのクラブハウスのトイレには、サニタリーボックスもない

感覚的な部分のカルチャーショックに加えて、チームメイトの多くがナプキンを使用していないことにもびっくりした。ほとんどのチームメイトが定期的にタンポンのヒモを股からはみ出させていたし、クラブハウスのトイレにはサニタリーボックスがなかった。練習後にナプキンを捨てる必要があった私は、いつもトイレットペーパーに包んで家に持ち帰っていた。

確かに、タンポンであればムレやモレなどの問題は発生しないし、練習前後で必ず取り替える必要もない。そういった点で、運動時にタンポンを使うのは理にかなっていると思う。明らかにナプキンの使用率が高い日本と、どの年代の選手もタンポンを使っているドイツの文化の違いに感心した。

ただ、理にかなっているからといって、私もすぐにタンポンに移行したかといえばそうではなく…。膣に棒を入れるという行為があまりにも女性的に感じて嫌だったため、タンポンを使う決心がつくまでしばらく時間が必要だった。ところが、タンポンをつけているときの快適さに心を奪われ、結局タンポンユーザーになるのだけれど。

写真=本人提供

「生理痛で休みます」はセルフケアができていると受け入れられる

最後にもう1つ、私のカルチャーショックを紹介させてほしい。

日本にいた頃、「練習を休む=悪」のイメージが強かった。怪我やインフルエンザなどの感染症を理由に休むことは仕方がないけれど、怪我の一歩手前や調子が悪いときに休むとひんしゅくを買うことになる。だから、「生理痛で休む」なんてとても言い出せなかったのだ。

一方で、ドイツではみんなアタリマエのように生理痛でいなくなる。「怪我をしそうだから」「悪寒がするから」と練習を休む行為は、「セルフケアができている」と評価されるのがドイツ。だからこそ、「生理痛で休みます」もアタリマエのように通用する。

「自分の身体は自分で守る」

「自分の身体を大切にする」

こんなアタリマエのことを、組織に流されてないがしろにしてきた事実に気付かされた。

生理との向き合い方に葛藤していた中で経験したドイツでのカルチャーショック。今までアタリマエだと思っていたことが、何もアタリマエではなかったと気がついたことで、私の中に新しい考え方が生まれた。

次回、日本に帰国した今、私が選んだ自分のための生理との向き合い方とは。

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