ランニングや登山が大好き。でも生理中や生理前は思い切って楽しめない…。そんな「スポーツと生理」の悩みに向き合うウェビナー、「自分とカラダに向き合う保健室 番外編〜スポーツと生理(トレイルランニング編)〜」が2020年7月15日に開催されました。
応募が殺到するほど人気ウェビナーとなり、参加者は当初20名の予定でしたが、当日は60名が参加しました。
前半は、山で何百キロも走るトレイルランナーの宮﨑喜美乃さん、中島英摩さんをお迎えし、スポーツ中の生理の体験談や日常使いしているアイテムを紹介。後半は産婦人科医の竹元葉先生も加わり、ゲストのお二人と参加者の方々からの質問に答えていきました。
話題は山でのトラブル、持ち物から生理中のトレーニングの方法、パフォーマンスが低い自分との付き合い方など、さまざまに広がりました。その幅の広さから「それ知りたかった」「10年前に知っておけば!」と、目から鱗が出るような…TIPSや体験談がたくさん。アスリートや市民ランナーはもちろん、部活に励む中高生などスポーツを楽しむ全女性がカラダとお付き合いするために参考になるウェビナーとなりました。
お話を聞いた方
宮﨑 喜美乃(みやざき きみの)
1988年生まれ。山口県出身。小学1年生から陸上を始め大学生まで駅伝を中心に活躍。25歳の時に現所属チームのTHE NORTH FACEから誘いを受け、トレイルランニングをスタートし1年も立たずSTY(50mile)にて優勝を果たした。現在は100mileを中心に、大学院で学んだ登山の運動生理学の知識とランニングの経験を元に国内外のレースに挑んでいる。直近のレースは2019年Oman by UTMB(100mile)にて女性3位。
中島 英摩(なかじま えま)
ライター。テント泊縦走から雪山登山まで1年を通じて山に通う。 趣味が高じてライターとなり、トレイルランニングの取材・執筆をメインに、国内外の長距離レースにも出場している。ヨーロッパ・ ピレネー山 脈1000kmのひとり旅をはじめ、国内のロングトレイルも踏破。特技は走りながら取材すること。
竹元 葉(たけもと よう)
産婦人科専門医/医学博士/ 女性ヘルスケアアドバイザー/妊産婦食アドバイザー/ガスケアプローチ認定アドバイザー
順天堂大学医学部卒 、sowaka women’s health clinic院長。現代女性の健康意識改善に注力。気軽に相談できる医師をモットーに活動中。
〜「自分とカラダに向き合う保健室」とは〜
ランドリーボックスと、「sowaka women’s health clinic」の産婦人科医・竹元葉先生がカラダについて語りあうオンラインサロン。毎月第二水曜の夜に開催中。進行役はランドリーボックス代表、西本美沙が行いました。
山の常識「ゴミは持ち帰る精神 」が生理中はけっこうキツイ
生理で困るのが周期とずれて突然きてしまうこと。それが山の中できてしまったら…。最初のトークテーマは山でのトラブルについて。
約170kmのコースを走るUTMFで、 突然生理がきた経験をお持ちの英摩さん。「120kmくらいの地点で腰が痛いなと思ってトイレに行った 真っ赤っか。そこからは苦労しました」とご自身の体験を話してくれました。その経験から、現在ではエマージェンシーキットとして、「ナプキン・タンポン・布ナプキン」を常備。同行者や山で困っている女性がいたら渡せるように準備しているそうです。
山の中ではそもそもトイレが少ない、あったとしてもサニタリーボックスがないこともしばしば。「山のマナーでは『ゴミは持ち帰る精神』だから、サニタリーボックスがないのだけど、経血多い人がジッパーバッ グにいれて何時間も持ち歩くのって結構キツイよね」と英摩さん。使用後のサニタリー用品を処理することが、山の中ではなかなか難しいことが伺えました。
山で生理用品を持ち歩く難しさから、話題はそもそもピルで大会とかぶらないように調節する方法へと移りました。実際、喜美乃さんは120日間連続服用ができる「ヤーズフレックス」という超低用量ピルを飲んで、生理周期を3カ月に1回と調整しているそうです。また、生理のときには山に行かないようにしているのだとか。
一方、英摩さんは偏頭痛持ちで医師から低用量ピルは合わないのでは?と言われたことがあるため、ナプキンとタンポンを使用。しかも、紙ナプキンではかぶれやすいので布ナプキンを愛用しています。
ナプキン、吸収型ショーツ、タイツ…生理中にうまく使えるアイテムは?
スポーツ中は大量の汗をかくので、紙ナプキンを使っていると汗で外れてしまったり、そもそも擦れて肌荒れしちゃったり。なかなかうまいこといかない…「スポーツ×生理用品」。うまくいくTIPSをゲストのお二人に教えてもらいました。
「もう20代半ばくらいから紙ナプキンを一切使っていません。」という英摩さん。レース時は基本的にタンポン、日帰りや1泊2日で経血量が少ないときはオーガニックコットンの布ナプキンを使っています。英摩さんは、肌が弱くなる生理中は走る動作でショーツと肌が擦れてしまったり、普段は気にならないショーツの縫い目やタグが気になる敏感肌 。
その対策として「デリケートゾーンにワセリンをベタベタに塗る」ことが有効なのだそう。 布ナプキンは、使用後にジッパーバッグに入れて持ち帰り、帰宅後に洗濯して使用しています。
また、最近のお気に入りアイテムは経血を吸収してくれる「吸収型ショーツ」。普段使い、ランニング後、下山後に使っていて「めちゃ楽」なんだとか。大量に汗をかくわけではない運動ではタンポンを使う回数が減り、からだにいいと感じるそうです。
タンポンの連続使用は、膣内を 清潔に保つためにも8時間以内を推奨されていますよね。英摩さんはタンポンと布ナプキン、吸水型ショーツを経血量とシーンで使い分けていました。
喜美乃さんは過去の失敗談を語ってくれました。「紙ナプキンを使っていたときに、大量の汗をナプキンが吸収。ショーツと接着されなくなって、ショーツの後ろから出てきてしまった!(笑)」。ショーツとの接着が甘くなるのはスポーツあるあるだそうで、友人と山で走っている時にそれがおきてしまった喜美乃さん。最後尾に行き、さっと外して対応したそうです。以降ずれ対策としてタイツをはくようにしているのだとか。
英摩さんも布ナプキンを使うときにはずれないようにタイツを使っているそうです。スポーツ時のおすすめは「吸水速乾、2〜3部丈のショートタイプ」。生理のときは足がむくみやすく、ロングタイプでは脚を圧迫しすぎてうっ血したりするのであまりおすすめしないようです。
生理中のトレーニングはどうしてる?
スポーツの話題で欠かせないものがトレーニング。試合などのここ一番の大勝負は数日限りでうまく生理とかぶらなくても、毎日行うトレーニングと生理がかぶるのは避けられない。ゲストのおふたりはどのように生理と付き合いながらトレーニングを行なっているのかを話してもらいました。
アスリートの喜美乃さんは学生時代の厳しいトレーニングの後から生理痛がひどくなった気がすると話します。「大学時代に生理中に400mインターバルを20本やったときがありました。調子がよかったので生理でトレーニングを変えたくなかったんです。腰が痛いし股関節は動かない中で一生懸命頑張っていました。でも科学的な根拠はないけど、以降生理痛がひどくなったように感じるんですよね」。現在ピルでコントロールをしている喜美乃さんは、トレーニングはこの日にしないといけないというきっちりしたメニューではなく、1週間など幅をもって融通がきくようなメニューにしています。
また喜美乃さんは、アプリで記録をつけて自分の状態を把握することも行なっていると話す。「メンタルの影響を受けやすいので、なぜ調子が悪いのか?がわかるのが大事。生理周期でそういう時期だったらしょうがないと納得できるようにしています」(喜美乃さん)
「なんとなく」調子が悪いで済まさずにきちんと原因を追求する姿勢が重要なのかもしれません。
一方、「PMS(月経前症候群 )がむちゃくちゃキツイ」という英摩さんはどうでしょうか。イライラ、ネガティブ思考、暴飲暴食、腰痛・頭痛 ・だるさと、PMS症状のオンパレード。長い時には2週間くらい続くそうです。月の半分もコンディションが悪い状態だとうまくパフォーマンスを出すのが難しそうですよね。しかもコーチは男性だそうです。「コーチには結構赤裸々に伝えます。足がむくむ、PMSがひどいとか。生理後はメンタルが上昇して、急にがんばります!となります(笑)」と明るく話す英摩さん。コーチとの信頼関係が伺えます。
その中で英摩さんコーチと決めたのは「基本的に、生理前も生理中もトレーニングは変えず、 本当にしんどいときだけ軽めのトレーニングにする」という方法。その理由として「やらなかったことへのストレスが大きい」と話します。「きっちり決めてトレーニングをしていると、やらなかったことに対する焦りが出たり、数字が停滞したりして… 私はそれが嫌なんですよね」(英摩さん)
PMSのときは調子が出ず、練習がうまくいかないことにショックを受けてしまうそう。今は生理前のPMS期間をレストウィークとして軽めのメニューにしているそうです。「やるストレスもやらないストレスもあるから、どっちがストレス値が高いのかをいつも考えています」と、ストレス負荷をバロメータにしながらトレーニングと付き合っているようでした。
「調子が悪くてもいい」という前提のもと、スポーツにおいて決めたトレーニングを継続することの大切さをあらためて知るお話となりました。
後半は竹元葉先生への質問タイムを公開します。お楽しみに!