イギリスへ本格的に移住しました
この連載を始めさせていただいてから、宮城県からイギリスに移住することに決め、7月からはロンドンに住み始めました。40歳過ぎて、はじめての海外移住です。ロンドンの夏はとても短く、夕方になるととても寒いですよ。
違う国で生きてきた以上、国民性による考え方の違いや食事・生活習慣にはいつも驚かされます。今日はカルチャーショックだったことを紹介します。
食事に関しては、ロンドンは肉や卵を食べないヴィーガン・ベジタリアンが多いです。それ専用のメニューがレストランに必ずあります。
そして家族や恋人を仕事より大切にします。休日は絶対仕事をしない。私はどちらかと言うと休み返上してまで「仕事!練習するぞ!」というタイプだったので、そのメリハリの付け方には感化されました。
日本製のナプキンはレベル高し!
あと生理用ナプキンも違いましたね。日本のナプキンは包み紙を開けるとテープの紙も一緒に剥がれて、そのままショーツにナプキンをつけるだけ。これが当たり前ですよね。
私の記憶では、25年くらい前までは日本でもいちいちテープの紙を剥がしての2段階形式でした。イギリスはまだその2段階形式のナプキンが主流です。
職業柄いろんな国へ行く機会が多く、過去にはイギリスをはじめアメリカやドイツ、タイ、北朝鮮、シンガポールなど15カ国を周りました。密かに、その国のナプキンを試すことを楽しんでいます。
個人的には韓国、タイのナプキンは付け心地がよくおすすめです。でも、自分には日本のナプキンが一番合いますね。アメリカやイギリスはまだ肌触りがゴワゴワしたり、作りが少し雑だったり感じます。今もイギリスのパンティライナーを付けていますが、次は日本製に戻そうかな。
イギリスにピルを服用している選手が多い理由
イギリスに行って感じたことは、日本よりピルを服用している選手が多いことです。以前のコラムにも書きましたが、日本の選手でピルを服用している人は多くありません。日本で処方してもらうと、だいたい月3,000円ほどかかります。
イギリスでは、NHS(ナショナル・ヘルス・サービス)という公的保健医療制度があり、一部を除く医療費は原則無料です。NHSに加入していれば、ピルを無料で処方してもらえます。
この手厚さがピルの浸透率の違いかもしれません。
さらに公立の小中高では生理用品(ナプキン・タンポン・月経カップ)が無料で配布されます。生理に関する施策が手厚いことにも、驚きました。
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「日本式を教えて欲しい」と貪欲な選手たち
私はWWEでは、選手としてだけではなくコーチもしています。練習に挑む姿勢は、日本とイギリスの選手では全然違って面白いです。
私が若い頃の練習といえば「1日の遅れは3日の遅れ」「多少の怪我も我慢しよう」というムードがありました。多少時代が変わり緩くなってきたかもしれませんが、今でも「痛い箇所以外のできることを見つけて練習する」「それが逆境に強くなる精神修行でもある」と考えています。
イギリスの選手は日本の礼儀正しさをとてもリスペクトしていて、「日本式を教えてほしい」と貪欲です。ただし、物事をはっきり言います。
疲れている日は最初から「昨日仕事がハードだったらから今日は休みます」「足首の調子が悪いから一週間やりません」など、各自が決めたうえで報告があることも。そして、しっかり回復するまで休んで、回復したら全力以上に頑張ります。
国境を超えて“通じ合う瞬間”
もちろん、向上するために最善の努力ですから、両方間違っていないのです。
仙台時代にも、イギリスから仙女の道場へ修行しにきた選手が多くいます。よく考え方の違いで選手同士が衝突していました。
違いを感じながらも、一緒に練習して、リングに上がって対戦してを繰り返すと、国境を超えて“通じ合う瞬間”があります。私はこの瞬間が大好きです。
欧米選手たちから学んだこと、私の役目
東京オリンピックでも、日本人のメダル獲得数が多かったのは真面目な性格と逆境でもコツコツ努力する精神が身についているからだと思います。これは誇るべきです。
しかし、日本人は我慢強い国民性だと思うので、無理なことは我慢しない。限界に達する前に「できません」「やりません」と言える正直さも必要なんだということを、WWEの選手たちから学びました。
アスリートのメンタルヘルスはまだまだ課題がありますが、多くの選手たちと接することで私もヒントを見つけていきたいです。
そして、今後はさらにボーダーレスになっていく時代です。練習に対する考え方、各国お互いに良いところを取り入れて悪いところを見直していく。そしてスーパースターを世界から輩出する。その役目を私が担っている気がします。