センダイガールズプロレスリング代表取締役の里村明衣子さん。2021年から世界最大のプロレス団体WWEから熱烈なオファーを受け「NEX UK」へ本格参戦。この春から仙台からイギリスへ拠点を移し、40歳を過ぎた今なおアスリートとして新しい挑戦をしています。
世界で活躍する里村さんも「どんなに大事なタイトルマッチであろうが、生理がバッティングすると数日前から、気分が本当に沈んでしまう」と言います。
今回は生理と試合がバッティングしたらどうなるのかを、語っていただきました。
ホンネは「生理2日目で最悪です!」
今回は試合と生理が重なったときの話をします。第1回のコラムで書きましたが、私は昔から生理痛が酷くて、今でも2日目までは鎮痛剤を飲まないと耐えられません。
通常、試合やタイトルマッチが決まると数カ月前から追い込み練習をし、モチベーションを上げることに集中します。しかし生理前はモチベーションを上げることすら、難しい。
なんなんでしょう、突如くるイライラや不安感は。普段こんなにイライラしないのに。「試合でいつもの動きができなかったらどうしよう」「こんな調子じゃ絶対試合できない!」など、ネガティブな思考で頭がいっぱいいっぱいになります。そして、身体の調子も落ちていくのです。
私の場合は、年に5回ほど試合と生理がバッティングします。女子プロレスラー全員とはいえませんが、大事な試合のときに1番体調に影響が出るのが生理です。
よく試合当日のインタビューで「今日の試合の心境はいかがですか?」と聞かれますが、「今日生理2日目で最悪です!」とは言えませんよね?
不安を掻き消して強気な発言をしていながら、心の中では「生理なんです、不安です」と思っていることも。
100kgある対戦相手がお腹にダイブ
20代前半のとき、タイトルマッチの試合中、生理痛に耐えられず闘う意欲を失ったことがあります。なぜかその日は、薬がまったく効かなかったのです。
マットに何度も投げつけられ、パワーボムを喰らい、生理による腹痛がどんどん増して戦意喪失。極め付けは、リングのトップロープから100kgある対戦相手が私のお腹にダイブしてきたのです。
「もうダメ……。」
試合は諦めた時点で負けとよく言いますが、私が諦めた理由は紛れもなく「生理痛」でした。もちろん生理痛のせいで負けたとは誰にも言えません。悔しくてひたすら泣きました。
ファンの皆さんもそんなことは知る由もないので、「ただ里村の実力不足」と解釈されるのだと思うとなおさら悔しくて。
毎月、生理に振り回されていますが、痛みやホルモンバランスの崩れは目に見えないもの。目に見えないものって、そのせいにできないからややこしい。
きちんと休む、身体を温める
生理前でイライラしても、生理中でお腹が痛くても、がむしゃらに頑張るということをモットーにしてきました。しかし、産婦人科の米田先生にリングドクターをお願いするようになってマインドが変わっていきました。
調子が悪いときは、頑張らない。きちんと休む。
米田先生は、そんな環境を作ってくださいました。そして仙女の選手たちは、生理日が調整できるようにピルを飲んでいます。
しかし、私は「40歳を越えている場合は初めての服用は勧められない」と言われているため、ピルを服用していません。「生理のときは、とにかく身体を温めるように」と言うことで、白湯を飲んで過ごすようになりました。
米田先生のおかげで、私も選手たちも、体との向き合い方が変わったと思います。そして何より、1人で抱えていたモヤモヤを相談することで、気持ちが軽くなりました。
相談することで選択肢も増える
女子アスリートにとって、生理痛が酷い選手は生理の日に大会がバッティングするのが1番ネックです。生理日をずらせるピルを使用しているレスラーは増えてきていますが、私の周りでは1割ほどしかいません。
もっと体のことをオープンに話し合える場があれば、選択肢が増えたり、気持ちがラクになったりするのではないでしょうか。今ふり返ると、若い頃の私は1人で抱え込み、気合いで頑張るという選択肢しか見えてなかったのかも。
生理痛に負けた過去の話はここまでで、次回は「減量」に負けたお話をします。