「40歳以上で妊娠・出産を望まない人は子宮全摘をお勧めします」

昨年末に受けた婦人科(子宮体がん)検診で引っかかり精密検査が必要となったため、掻爬手術を受けた後の結果で「子宮内膜増殖症・異形成(前がん状態)」という診断が下され、医師から子宮全摘を勧められた。

*子宮内膜増殖症とは?

子宮内膜という組織が異常に分厚く増殖し、子宮内膜の細胞異型が認められる疾患で、子宮体がんの前がん状態と考えられています。子宮内膜異型増殖症の3割程度は子宮体がんを発症するといわれています。

参照:https://www.ho.chiba-u.ac.jp/crc/felicia_trial-pc/symptoms/index.html

私は現在43歳、既婚・子なし。

高校生の頃から生理不順に悩まされてきた。30代で子宮内膜増殖症という診断名がついたものの、そこまで進行していなかったので年2回の婦人科検診を受けながら経過観察をしていた。30代半ばには、不妊治療も経験した。

3年間がっつり不妊治療をしたが、残念ながら子どもには恵まれなかった。、

その後、子どもが欲しい気持ちに折り合いをつけ、やっと壁を乗り越えたぞ!と子なしの人生を謳歌しはじめた矢先、今度は「このままいくと子宮がんになる可能性あり」、「子宮全摘」というどデカい壁が登場した。

子どもを望んでいなくても、取りたいわけじゃない

医師からは「子宮はただの袋。ホルモンは卵巣で作られているものなので子宮を取っても生理がなくなるだけで、あとは特に変わりなく生活できますよ」と言われた。

いやいやいや。そんなわけないじゃん。そんな簡単に言わないでよ。理論上はそうかもしれないけど。

もう子どもを望んでいるわけではないけれど、だからと言って「子宮取るんですか、はい、そーですか」と子宮を要らない臓器とは考えられなかったし、子宮を取ることはそう簡単に受け入れられるものではなかった。

子宮を取ったら女性ではなくなってしまうような喪失感、今までずっとあった臓器が丸ごとひとつなくなるって、じゃあその空いたスペースはどうなるの?子宮を取ったらセックスってできるの?など、頭と心が疑問と不安でいっぱいになった。

検査を受けた病院は小さな町の個人病院でこれ以上の治療はできないため、その後、手術を受けられる大きな病院へ転院した。

転院先でも同じことを言われた。

「40歳以上は子宮全摘かどうしても残したいなら子宮を残しながら一生がんになるリスクを持ち続けるか。子宮を残す場合は、30%の確率でがんに移行する可能性があります」

究極の二択である。

女としての臓器を失くすことが怖かった

もし取るべき臓器が他の部位だったら、私は何のためらいもなく「手術を受けます」と即答できていたと思う。

全身麻酔だから寝ている間に終わるだろうと手術自体への怖さもないし、臓器を取ることでこの先がんのリスクが0になるのであれば当然取ることを選ぶ。

でも今回すぐに決断できなかったのは「子宮」という女性にしかない臓器だったから。

手術を受けるかどうかを決断しなくてはならない場面になって、私は自分自身がずっと「女として欠けている」と思いながら生きてきたんだな、ということに改めて気付かされた。

高校1年生、生理不順で人生初の婦人科へ行ったときのこと。

当時、男性経験のなかった私は、あの“足パッカーン”の診察台に乗ることすら怖かったのに、出てきたおじいちゃん先生が何の前触れもなく内診と触診をした。

そして、痛がる私に「これくらいのことで痛がるんじゃない!女は子どもを産むとき、この何百倍も痛いんだ。それにこんなホルモンのバランス崩してたら子ども産めないぞ!」と言い放った。

まだまだ若かったが女としてバツをつけられたようでとても傷ついたし、帰り道で「私って将来子ども産めないかもしれないんだ」と思ったのを今でも鮮明に覚えている。

その後も、20代で月経過多、30代前半で子宮内膜増殖症の診断を受け、常に何かしらの婦人科系疾患を抱えている状態だった。

そして極め付けは30代半ばの不妊治療。

治療を始めた当初からAMH(卵巣年齢)は低いし、体外受精までチャレンジしたものの、一度も妊娠することはなかった。検査結果が陰性であるたびに「女なのに子どもを産めないなんて」という思いが積み重なった。

子宮とか卵巣とか女性にしかない臓器があることで、かろうじて自分の女性性を保っているようなところがあったが、今回手術を受けて子宮を失ったら、自分がとうとう女性ではなくなってしまうような怖さがあった。

男性医師が教えてくれた「アンジェリーナ・ジョリー」

子宮全摘出の担当医は男性で、とても親身になって私の話を聞いてくれたし、手術の詳細や術後の生活についても、私の疑問がなくなるまで丁寧にわかりやすく説明してくれた。

それでも喪失感が怖くてなかなか決めきれない私にこんなことを言った。

「最後に手術を受けるかどうか決めるのはあなた。だからどっちを選んでも良いんだよ。

ただ、あなたはまだ若い。僕は医師としてあなたには手術を受けてがんのリスクを0にして、これからまだまだ長い人生を楽しく生きて欲しい。

子宮がなくなると女性でなくなってしまうような感覚は女性だったら当然あるでしょう。

でもね、アンジェリーナ・ジョリーはおっぱいも卵巣も切除しているけど、彼女を女性じゃないって思う?彼女はどう見ても女性じゃない?」

確かに、と思った。

家に帰ってアンジーの記事を色々と読むなかで、彼女は当時パートナーだったブラピや家族の支えもあって、術後も女性として何かを失った喪失感もなく、さらに年々女性としてどっしりとした感じがする、とも言っていた。

そうか、女性にしかない臓器を失っても女性としての感覚はあるんだ、と私からは遠い遠い存在でしかないアンジーから勇気をもらった。

男ならこういうことかな?夫の当事者意識が決め手に

そして、私が最後の最後で決意できたのは夫のおかげだ。

手術が必要かもしれないという検査結果を夫に伝えたとき、開口一番「絶対に手術を受けて(子宮を)取って!」と言われた。

夫は昨年母親をがんで亡くしている。

しかも、発見当初はすでにステージ4で手術も出来ず、2年に渡って抗がん剤治療を繰り返しながらの闘病生活を経てのことだった。

「これ以上、大事な家族をがんで亡くすのは耐えられない。手術が怖いとか色々あると思うけど頼むから手術を受けて」と。

夫の気持ちはよくわかる。私が逆の立場だったら、まんま同じことを言ったはずだ。

もう手術を受けるしかないんだな…と頭で理解できているものの、女性としての喪失感に耐えられるかという不安が私にはまだ残っていた。

彼は続けてこう言った。

「俺が同じ立場だとしたらタマを取るか、取らないでがんのリスクを負うかということだと思うんだけど、やっぱりすごく悩むと思う。

タマを取っただけじゃ普段の生活に何の変化もないよって言われたところで、いつもあったものが失くなることで男としての自信が失くなりそうな気もする。

別に誰も見てないだろうけど恥ずかしくて温泉とかジムとか行けないと思うし、トイレも個室しか使えなくなるかもしれない。

だけどじゃあ取らないかというと生きたいから取ると思うし、あやちゃんだって俺に取ってって言うでしょ?

手術を受けることの怖さとか喪失感は仕方のないことだと思う。

この先は悲しい、辛い、苦しいとかそういう感情は一切我慢せずに俺に吐き出して、泣きたいときは泣けばいい。だけど頼むから手術受けて長生きして」

夫は男性だし、私の気持ちなんてわからないだろうなとどこかで思っていた私をぶん殴りたかった。

夫は私の立場になって、男性バージョンで子宮をなくす喪失感について考えてくれていた。

彼が予想する不安や怖さは私の感じることと全く一緒で、ここまで理解してくれる夫を持って私は本当に幸せだな、夫の力を借りれば手術も乗り越えられるかもしれない、と思った。

ちなみに後日この話を担当医にしたところ、「まさに子宮を取るのとタマを取るのは同じようなこと。そんな風に考えてくれる旦那さんは初めてだよ。良い旦那さんだね。僕もその例を使わせてもらう!」と絶賛された。

子宮全摘について悩んでいる女性でパートナーがいる人は「あなたがタマを取るとしたら」という例を使って話してみてほしい。きっとあなたの不安や怖さがわかってもらえるはず。

そして私は、アンジーと夫に勇気づけられながら手術を受けることを決めた。

次回、手術編につづく。

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