写真=サンリオエンターテイメント提供

女性が働き方やキャリアを考えるとき、からだの話は切っても切れないもの。そうわかっていても、日々の忙しさに流され、心とからだのケアを怠ってしまうことも。

株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長の小巻亜矢さん、ワーク・ライフバランスコンサルタントの小山佐知子さん、株式会社GoodMorning代表取締役の酒向萌実さんの3名をお迎えして、「女性のキャリアとからだ」について対話する国際女性デーの特別企画。

今回は、小巻さんの乳がんや子宮全摘出のご経験から、自分のからだと向き合うことの大切さ、そしてこれから年齢を重ねていくうえでの「心とからだの変化」について考えます。

1/3「生理のつらさ抱えながら働くひとの「評価制度をどうするか」問題。私たちにできることは?

2/3「不妊治療と仕事の両立」の壁にぶつかり離職も。ライフプランと女性のキャリア

乳がん経験で「駆使していた自分のからだに謝った」

──身近な人から、婦人科系の疾患が見つかったという話もよく聞かれます。皆そろって「仕事どうしよう」といいます。女性のからだと働き方を考えるとき、定期的に検診に行くのはとても大事なことですよね。

小巻さん(以下、小巻):私が強く伝えたいのは、とにかく「自分のからだと向き合う習慣を身に着けてほしい」ということ。私はいま、子宮頸がん予防啓発プロジェクト「Hellosmile(ハロースマイル)」を推進しています。

プロジェクトを始めたきっかけは、私自身、子宮内膜症と子宮筋腫がひどくて子宮全摘出をした経験から。若いうちからもっと、自分のからだに意識を向けておけばよかった——と大反省したんです。そして、若い人たちに検診の大切さを伝えなければと思った。

株式会社サンリオエンターテイメント 代表取締役社長の小巻亜矢さん
Photo by Laundry Box

私も20〜30代の頃はまともに検診に行っておらず、からだを酷使しすぎていました。そして48歳で乳がんを患ったとき、心の底から「からだを大切にしなきゃいけない」と思いましたし、自分のからだに謝りました。「ごめんなさい、辛かったでしょう」って。

家族やパートナー、周りの人たちがどんなに心配してくれても、痛みや不調に気づけるのは自分だけ。だからもうとにかく、みなさんには検診に行ってほしい。

酒向さん(以下、酒向):検診に行くことで、自分のからだや女性性について真剣に考えるようになりますしね。たとえ病気が見つからなくても、検診をきっかけに意識が変わることもある。

小山さん(以下、小山):生理は毎月のサインで、女性の生き方を左右する大事なことだと、あらためて思いますよね。婦人科に行くことで、妊娠や出産を身近に感じる人も多いと思います。

もっとクリニックを身近なものに

小巻:その一方で、婦人科にいくハードルが高いことも事実。社会問題だと思います。まずは近寄りがたいイメージをどうにか払拭したい。もしかしたらフェムテックがそういう課題を解決してくれるひとつになるかもしれませんね。

小山:医師との間で良質なコミュニケーションが取れている人は少ないように感じます。不妊治療と仕事の両立に苦しむ方の中には、スケジュール調整に苦労する方が少なくありません。私も、治療中、仕事との時間調整の話をすると嫌な顔をされたりコミュニケーションが難しいと感じた医師が何人かいました。ちょっとしたことかもしれないけど、病院や医師の理解が得られるだけで患者さんの心も軽くなり、アクションもだいぶ変わるのではと思います。

酒向:私は幸いにも、自分に合う先生に出会えて「体調が悪くなって何科に行けばいいかわからなかったら、とりあえず相談においで」と言ってくれる。でも相性のいい先生を見つけるのは本当に大変で、私もようやくたどり着きましたし、友達からもよく相談を受けます。

株式会社GoodMorning代表取締役の酒向萌実さん
Photo by Laundry Box

不調を感じてから「なにかあるのでは…」と思って緊張したまま行くより、「地域にある身近な診療所」くらいの距離感に思える婦人科がもっと増えるといい。ヨーロッパだと、ティーン向けのユースクリニックなどが身近にありますよね。日本にも少しありますが、まだまだ認知は低い。思春期の性の相談ができる場所や、何かなくても気軽に相談に行けるような「保健室」みたいな場所も必要ですよね。

小巻:気軽に相談できる場所が必要なのは、社会人も同じ。一部の企業では、産業医のところに行く手前の段階で、社員が不調を相談できる部署を設置しているところもあります。こうした取り組みはこれからもっと広がっていくんじゃないでしょうか。

更年期の知識や情報が広がれば、対策したり、寄り添ったりできる

──女性がキャリアとライフを両立し構築していった先に、次なる試練としては「更年期」が待ち受けています。

小巻:私が更年期に悩まされたのは、乳がんと同じくらいのタイミングでした。乳がん治療をしていたので更年期の症状に合わせたホルモン補充療法ができず、子宮内膜症がさらにひどくなってしまった。仕事にも生活にも支障をきたしたので、子宮を全摘出しました。

更年期については、やっぱり知識や情報が大事だなと思います。私の母親世代が更年期に悩まされていたとき、私たち娘世代はそれを知らなかった。「お母さん、急にイライラしたり泣き出したりして、どうしたんだろう」と思っていたし、父や家族の理解もなかった。でも今思えばそれも全部、更年期の症状だったんですよね。

更年期はからだや心に大きな変化が起こります。突然うつっぽくなったり、からだも火照ったり太りやすくなったりと、日々急激に変わっていく。人前に出たくなくなったり、仕事のパフォーマンスももちろん下がる。とてもシビアな問題なんですよ。

──生理についてオープンに話すようになった世代がこれから更年期を迎えていくと、そうした情報がよりオープンになっていくかもしれませんね。

小巻:更年期でどんな症状が出るのか、あらかじめ情報があれば治療や対策ができるかもしれないし、家族や周りの人が正しい知識を得ることで、理解して寄り添ってあげられる。私も、母が更年期だったときにちゃんと知識があれば、もっと優しくできたかもしれないって思います。生理にせよ更年期にせよ、女性のからだの変調を理解して、思いやりのある社会になるといいですよね。

小山:最近は晩婚・晩産化しているなかで、親の介護と子育ての両立が重なるという難しい状況に悩む人も多いですよね。そこに自身の更年期の問題も入ってきたらと思うと…。

ワーク・ライフバランスコンサルタントの小山佐知子さん
Photo by Laundry Box

小巻:私の周りにも、自身の更年期とご両親の介護が重なり苦労している人がいます。あらかじめ分かっていれば対策を考えたり誰かに頼ったりできたかもしれないけれど、更年期で自分を責めるモードになってしまうんですよ。ああしておけば、こうしていれば…と、メンタル的に落ち込むと本当に苦労してしまう。

小山:自分のからだの変化と、育児や介護など環境面での変化の重複は、防ぎようがないですよね。

小巻:人生のタイミングは人それぞれ。思うようにいかないことが多いですけど、情報をちゃんと把握して知識を身につけることで対応できる部分もあると思います。世の中でどんなことが起きているか、どんな制度があって、どんな行動ができそうか。見たくない現実はたくさんあるけれど、そのぶん知っておくべきこともまた、たくさんあります。

何が起こっても、自分から逃げなければ大丈夫

小巻:今回、若いおふたりの話を聞いて、それぞれの世代の悩みをとても前向きに克服しているんだなと思いました。勇気をもらいますし、ワクワクします。私は今年62歳になるのですが、60歳を越えてすごくラクになりました。歳を重ねるとどんどんラクになっていくから、ふたりとも楽しみにしてて。

株式会社サンリオエンターテイメント 代表取締役社長の小巻亜矢さん
Photo by Laundry Box

酒向・小山:心強い!

小巻:生理も更年期も終わり、キャリアも落ち着いてきました。ポジションとしてではなく、歳を重ねるとともに自分のやりたいことに向き合ってきた結果、社会的なネットワークが少しずつ構築されて、活用できる歳になりました。

肩の力が抜けて、できないことややりたくないことにはNOと言いやすくなり、変な見栄もなくなって、ヘルプを出しやすくなった。いい意味で、諦めと挑戦のバランスがとれてきた気がします。だから私からは、「歳をとるって、素敵なことなんだよ」と伝えていきたいですね。

酒向:上の世代の人が、そう言ってくれるだけでポジティブになれます。

小巻:みなさんが今やっていることは、誰かの道を切り開いている。それは間違いないですよ。何が起こっても、自分から逃げなければ大丈夫。私はいつもそう思っています。

お話を聞いた方

株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長、サンリオピューロランド館長

小巻亜矢

1983年株式会社サンリオ入社。結婚を機に退社。出産などを経て、サンリオ関連会社にて仕事復帰。2013年東京大学大学院教育学研究科修了。2014年よりサンリオピューロランド館長に赴任。 NPO法人ハロードリーム実行委員会代表理事、子宮頸がん予防啓発プロジェクトハロースマイル副代表。

ワーク・ライフバランスコンサルタント、共働き未来大学ファウンダー

小山佐知子

1981年生まれ、札幌出身。大学卒業後、株式会社マイナビに入社し広告営業、メディア編集に従事。30歳で“不妊治療と仕事の両立”という壁にぶつかり、不妊離職を経験。フリーランスとして総合職女性向けの妊活コミュニティの立ち上げや執筆、講師業に従事したのちリクルートメディアの営業を経て2016年に独立。現在は事業を行う傍ら、週3正社員としてママメディアの編集長業務にも従事している。

株式会社GoodMorning代表取締役

酒向萌実

1994年2月生まれ、東京出身。2017年1月より株式会社CAMPFIREに参画。ソーシャルグッド特化型クラウドファンディング『GoodMorning』立ち上げメンバーとしてプロジェクトサ ポートに従事。事業責任者を経て、2019年4月に事業を分社化、株式会社GoodMorning代表に就任。一人ひとりが連帯し合える社会を目指し、クラウドファンディングを活用した社会 課題解決や認知拡大などに取り組む。

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