「夜用ナプキンでもすぐに漏れてしまう」「夜は漏れが不安でぐっすり眠れない」
生理中の悩みの1つである、経血の漏れ。その漏れの原因が経血量の多い「過多月経」によるものだとしたら、それは婦人科疾患の可能性を示すサインなのかもしれません。
経血量が多いのは仕方がないと諦める前に、生理のサインを見逃さず、まずは自分のカラダについてきちんと知って欲しいです。
産婦人科医・宋美玄先生に過多月経の原因や対処法についてお話を聞きました。
過多月経って?原因は?
ーー過多月経とはどのような状態のことを言うのでしょうか?
月経は7日以内で経血量が140ml以内が正常の月経です。ですので、月経の期間が7日より長い場合は過長月経、経血量が140mlより多い場合は過多月経と呼んでいます。
とはいえ、自身の経血量が何mlでているかを把握することは難しいでしょうから、例えば1番多い日に普通のナプキンが30分しかもたなかったり、夜用ナプキンですら1時間しかもたないことがある場合は過多月経なのではないかと考えています。
ーー過多月経の原因はなんなのでしょうか?
過多月経の多くは子宮筋腫や子宮腺筋症などの婦人科疾患が考えられます。ですが、とくに要因となるような疾患がないこともあります。若いうちはホルモン量も多いため、子宮に病気がなくても過多月経になる場合もありますし、子宮が大きいため経血量が多いという方もいます。
その他のケースでは、血液が止まりにくい血液疾患などが見つかる場合もあります。
ーー年齢が上がるにつれて経血量が多くなってきたと感じている人もいます。加齢にともなって経血量が変化することもあるのでしょうか?
ありますね。ただ、その場合は子宮内膜が異常に分厚くなってしまう子宮内膜増殖症や内膜ポリープなど、単にホルモン量の問題というよりも、それらによって子宮内膜に腫瘍性の疾患が増えるせいもあります。
単にホルモンの分泌が盛んなのではなく、排卵が頻繁になったり、不規則になり、結果的に生理の回数が縮まることになどより、総合して経血量が増えている可能性もあります。
それに、子宮筋腫や子宮腺筋症、内膜疾患も、閉経するまでの間は年齢とともに増えていく病気ですからね。
ーー過多月経に影響を及ぼすような婦人科疾患がある人は増えてきているんですか?
確実に増えていますよ。昔と比べて初潮年齢が早くなり、かつ出産回数も減っているので、生涯の月経回数が10倍近くに増えています。そのため、子宮内膜症や子宮腺筋症は増えています。
子宮がある人なら誰しも可能性がある病気なので、月経量も1つの健康の指標だと知って欲しいですね。生理痛や過多月経は、受診、治療の対象です。
過多月経の治療法は?
ーー過多月経の処置はどのような方法がありますか?
まずは過多月経の原因となるような器質的な病気、例えば子宮腺筋症や内膜ポリープなどが子宮にないかを診察します。その上で、ある場合もない場合も過多月経と診断した場合は経血量を減らしていく治療を提案します。
基本的にはホルモン療法です。その他、止血剤としてトラネキサム酸を処方することもありますが、多少経血量は減るものの、効果はあまり高くありません。妊活中などはホルモン療法ができないので止血剤などで対応します。
その他、子宮内膜の直下に筋腫ができてしまう粘膜下筋腫などが原因の場合は、患者さんの状況に応じて手術することもあります。
また、過多月経の方の多くは、経血量が多いことにより貧血をともなうこともあるため、その場合は鉄剤なども処方します。
ーーホルモン療法による処置の場合、どのような選択肢があるのでしょうか?
年齢によっても処方するものが異なりますが、10代から30代の場合は、低用量ピルや子宮内黄体ホルモン放出システムIUS(ミレーナ)、黄体ホルモン剤になります。
40代以降は、もともと低用量ピルを処方されてきた方以外は、血栓症のリスクなどを鑑みて低用量ピルは第1選択ではないので、それ以外の方法を提案します。
子宮筋腫や子宮内膜症が要因の場合は、専用の治療薬を処方します。
ーー患者さんのライフステージによって様々な選択肢があるんですね。しかし、経血量が多いという理由で病院に行こうと考える人は、実際には少ないようです。
経血量が多くて生活に支障をきたしていると感じるならぜひ婦人科に来てください。実際に、経血量が多いのを何とかしたいとお越しになる方もいらっしゃいますし、会社の健康診断で貧血だと判断されクリニックにきた結果、過多月経だったとわかった方もいます。
もちろん、生理痛など痛みがある方も多いので、生理痛を理由にお越しになっても全然構いません。
生理を我慢してしまう傾向があったり、生理用品の進化もあり、不快感をご自身で対処できてしまうことも要因の1つかもしれません。なんとか対処できてしまうと、経血量の多さは当たり前だと思って過ごしてしまう人もいるのではないかと思います。
生理のつらさや不快感を我慢しないで。
ーー確かに慣れてしまうことも多いですよね。先生としては、婦人科をどのように活用して欲しいと感じますか?
まず、生理がはじまったらかかりつけ医を持って欲しいです。多くの方は小学校高学年から高校1年生頃までに初潮がくると思うので、その時に婦人科にいき、子宮頸がんワクチンを
接種する(小学校6年生から高校1年生までは公費で無料接種できる)。
その後は、年に1度は婦人科検診を受けてほしいですね。若い子は、婦人科に恐怖心を抱いているかもしれませんが、内診は必ずしも必要ないんです。お腹の上から腹部超音波で見ることもできます。
もちろん若いうちからかかりつけ医をもっていなくても、避妊や、生理、妊活、更年期など、年齢や悩みに応じていつでも相談ができます。
女性のカラダで生まれてきている方は、女性ホルモンとのお付き合いは一生です。思春期以降は、健康であり続けるためにかかりつけ医を持つことが大切だと思っています。
かかりつけ医を探す際、通いやすい場所にあるクリニックのホームページで、理念を確認してみて、ご自身が違和感を感じないかどうかは大事です。医師の性別が気になる方は事前にチェックすることもできます。
かかりつけ医がまだ見つかっていない方も、まずはご自身の都合がいい時に行ってみてください。合わないと感じたら、変えることもできますので、まずは一歩踏み出して欲しいです。
もちろん、私たち医師は、せっかく腰をあげてきてくれた患者さんに「行かなきゃよかった」という思いをさせないように努力し続けなければならないと思っています。
ーー生理を我慢せず、まずはかかりつけ医に相談ですね。
思春期で生理を迎え「おめでとう、大人の仲間入りだよ」と祝われたり、「生理だからお腹が痛いこともあるかもしれないけれど我慢してね」と言われてきたこともあるかもしれません。
ですが、生理に特別な意味はありません。生理は「子宮内膜がはがれて、妊娠しませんでした」の意味合いでしかありません。経血が出ることによる体へのメリットは何もないし、ありがたいことでもなんでもないんです。
もしあなたの生理が、あなたの健康やQOLを蝕むようなことになっていたら、それはきちんと医療的にコントロールする方法があります。
そして、それは将来の子宮内膜症、それによる不妊症や悪性腫瘍のリスクを下げることでもあります。
過多月経で、経血量が多い人向けのナプキンを使うほどの場合は生理のサインの可能性もあるので経血量を無視せず、信頼できる医師を見つけるきっかけにして欲しい。
一方で、医療機関は病気の範疇にあるものを治療する場所なので、生理の不快感をなくすためのアプローチはできないこともあります。
最近は生理の悩みに特化した生理用品も増えているので、自分の生理の状況や悩みに適したアイテムを活用することで、みなさんが少しでも快適に過ごせるといいなと思っています。
丸の内の森レディースクリニック院長
宋美玄(そん みひょん)
産婦人科医、医学博士、丸の内の森レディースクリニック院長。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動中。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。
ランドリーボックスでは、過多月経の方のための生理ナプキン「エリス クリニクス」とともに「#お願いクリニクス #生理のサイン見過ごさないで」プロジェクトを実施しています。過多月経に悩む方々の選択肢となるアイテムをご紹介するほか、婦人科受診の啓蒙を行っています。
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