少子化やセックスレスなどの社会問題が深刻化している現代では、セックスの必要性について考える機会が増えました。また、性的マイノリティに対する理解が進みつつあり、恋愛や性生活の多様性も重要視されはじめています。恋愛のあり方がさまざまなように、性生活やセックスのあり方も自分自身で選択することができるのです。

恋人やパートナーとの関係にセックスは必要でしょうか?それとも不必要でしょうか?

「セックスは生きる上で絶対に必要だとは言えない」

そう語るのは交際5カ月の20代・学生カップル、Oさん(男性)とKさん(女性)。おふたりにとってのセックスのあり方や価値観についてお話を聞きました。

“男性らしさの押し付け”に悩んだ過去

ー過去にセックスに関して悩んだ経験はありますか?

Oさん:男女関係において男性側が頑張らないといけない風潮を感じています。その「男性らしさの押し付け」に悩んだ時期があり、特に中学生や高校生の思春期には童貞がバカにされる空気感もありました。そんな考え方に違和感は持っていましたが、世間一般的なレールから外れるのが怖くて……。当時は周囲と足並みを揃えるのに必死でした。

セックスでは、”セックス中は男性側がリードしなくてはいけない”というプレッシャーも感じていました。

ー男性らしさの押し付けに悩んだ過去があったんですね。昔と比べて今の心境には変化がありましたか?

Oさん:今はインターネット上で、”男性らしさからの開放”を体現している人たちがたくさんいます。インターネットに触れる中でさまざまな考え方を知ることができ、周囲と足並みを合わせる必要はないと感じ始めました。セックスの進め方も人それぞれだと思えるようになったので、考え方が変わったんだと思います。

大学に入ってから性について学ぶ機会が増えたこともあり、今は昔のように男性らしさのプレッシャーを感じることはありません。

ーKさんは、男性らしさからの開放を経験した彼とお付き合いしてみてどう感じていますか?

Kさん:とてもいい関係を構築できていると思います。プレッシャーに縛られないというのは、より自然体で過ごせることに近いと思うんです。素の姿を自分に見せてくれていることが素直に嬉しいです。彼にとっても私にとってもいい影響を与えていると思います。

セックスはあくまでもプラスアルファの要素

ー率直に、セックスは必要だと思いますか?

Oさん:生きる上で確実に必要だとは言い切れません。セックスをしたい気持ちを否定する必要はないけれど、無理にセックスをする必要もない。

セックスをするのが普通だと思い込んでしまうと、かえって自分が追い込まれることもありますよね。お互いに無理のない範囲で、必要性を模索していくことが大切だと思います。

Kさん:私にとってセックスは必要で、したいという気持ちはあります。でも、彼と同じように、絶対に必要かと言われるとそうでもないような気持ちもあります。お互いがセックスをしたいならすればいい、したくないならそれでもいい。セックスは自由に選択できるものではないでしょうか。


ーセックスは絶対に必要ではないと考えるおふたり。交際を始めてからセックスについて話し合う機会はありましたか?

Kさん:付き合っているうちに自然と話題に出たことはありました。改まって話すことはなかったですが、セックスの頻度やタイミングについて話す機会はありました。

例えば、どちらかがセックスをしたいけれど、もうひとりは気分じゃないときは、片方の押し付けにならないように自分で発散させよう、とルールを作ったり……。

ールールはとても大切でよすね。Oさんはアンケートで理想と現実のセックス頻度に差があるとお答えされていましたが、その点はいかがですか?

Oさん:そうですね。理想とするセックスの頻度よりも、現実にしているセックスの頻度が少ないです。でも、だからといってふたりの関係に不満はありません。

理想の頻度といっても変動することもあったり……。自分自身の気分の波もあるのでセックスという行為に固執することはないですね。「性欲の解消」という点ではオナニーや、熱中できることに打ち込むなどの対処法はいくらでもあります。自分はダンスをしているので、ダンスに熱中することもひとつの対処法です。

恋人との関わりはセックスが全てではないので、無理にするものではないと思います。

ー理想のセックス頻度に達してはいないものの、おふたりの今の関係に満足されているんですね。

Oさん:はい、満足しています。僕たちは会えない日でもLINEや通話でコミュニケーションを取っていますが、それだけで十分幸せです。セックスはある意味努力目標だと考えていて、タイミングが合えばできたらいいなという感覚……。

理想の頻度はあくまでも理想なので、セックスの頻度よりもふたりの時間をいちばんに考えたいです。

Kさん:私も、彼との今の関係にとても満足してます。セックス以前の問題として、会う時間や、遊ぶ時間といった、同じ時間を過ごすことの方が重要です。セックスがなくても会えるだけで尊いというか、嬉しいと感じます。

セックスがあるから満足するわけではなく、一緒にいる時間そのものに幸せや満足感を持っているんだと思います。ふたりの時間があり、かつセックスができたらもっと幸せ、というように、セックスはあくまでもプラスアルファの要素です。

Photo AC

ふたりにとってベストなセックスのかたちを模索した

ーセックスをしたいと感じたときは、お互いが言葉で伝え合うのでしょうか?

Oさん:言葉にするときもあれば、しないときもありますが、基本的には言葉で伝えるようにしています。セックスをしているときに感じたことや違和感も、今は言葉で伝え合うことを心がけています。最初のころは「痛いときのサイン」を決めていました。

ー「痛いときのサイン」ですか。具体的にどんなサインですか?

Kさん:例えば、痛かったら背中を2回叩くみたいな簡単なサインです。痛い、嫌だっていう気持ちって、セックス中はなかなか伝えられなかったりもしますよね。痛いけど我慢をして気持ちいいふりをする女性もいるかもしれません。男性も女性の気持ちを上手く汲み取れない場合もあります。

今でこそ言葉で伝えられるようになったのでサインを使う機会はなくなりましたが、はじめのうちは伝えるのが難しかったです。「やめて欲しい」という思いを伝えるためにサインを作って、ふたりにとってベストなセックスのかたちを探しました。

ーセックスについてしっかり話し合えるのは素晴らしいことですね。付き合った当初からオープンに話し合えていましたか?

Oさん:そうですね。最初からそこまで抵抗なく話し合えていました。彼女がオープンに意見を言ってくれるので、いい関係性を育めているんだと思います。あらたまって話すことはないですが、普段の会話と変わらない温度感で自然に話せます。

Kさん:彼は性や性教育について学んでいるので、ふたりの性生活についてきちんと考えてくれているのも、理由のひとつだと思います。彼がしっかりと考えてくれているので、オープンに意見を言いやすい関係性になっているのかなと。「無理せずもっと自分のことを大切にしていいんだよ」って話してくれたこともあり、私の中ではとてもありがたかったです。

ーOさんは性に関して学んでいるんですね。

Oさん:はい。大学で学んでいるわけではなく、個人的に学び始めました。文献を読んだり、勉強会に参加したりという形で学んでいます。独学ではありますが、今は性について発信されている人も多いのでとても勉強になります。

セックスは自由に選択できるコミュニケーションのひとつ

ーおふたりにとってセックスとはどういうものですか?

Kさん:私は、セックスはふたりが自由に選択できる手段だと思っています。セックスという単語だけ聞くと、AVやネットのセックスをイメージすることも多いかもしれません。「ネットに書いてあるから自分たちもこうしなきゃ…」といったように、情報に囚われてしまうこともあります。

でも、そうではなく、セックスって自分たちに合った方法、合った頻度で自由に選択できる関わりじゃないかなって……。彼との関係を構築する上で、そういった考え方をするようになりました。

Oさん:僕は、セックスはひとつのコミュニケーションだと思っています。生物学的にしなきゃいけないとか、子どもを望まないからしてはいけないとか、そういう捉え方はしていません。

コミュニケーションは双方の思いがあるからこそ成り立つものです。セックスに限らず、コミュニケーション全般において言える話ですが、どちらかの押し付けになるべきでないのは確かです。

お互いの合意があった上で、お互いが幸せになれるかたちとしてセックスがあれば、すごく素敵なコミュニケーションの手段になると思います。


「セックスはコミュニケーションのひとつ」強要するものでもされるものでもないと話すおふたりの会話から、お互いの信頼と思いやりを感じました。

セックスに対する考え方や選択肢はひとそれぞれです。あなたも、自分にとってベストなセックスのかたちを模索してみませんか?

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「セックスって必要ですか?」

セックスレス大国とも言われ、深刻な少子化も問題視されている日本。コロナの影響を受け、人とのふれあいにも変化があったのではないでしょうか。

仕事、恋愛、家族、育児…それぞれの社会の中で生きるわたしたち。あなたにとって、セックスは必要ですか?

本特集では、みなさんからたくさんの意見が寄せられました。

セックスをしたい人・したくない人、必要な人・必要でない人、どんな人も、世間の当たり前に囚われることなく、自分らしい選択ができる社会になることを願っています。

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