子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮がんなどの婦人科疾患の治療のために、子宮を摘出するという選択をする、あるいは選ばざるを得ないことがあります。
子宮を摘出することで、子宮筋腫や子宮がんなどの病気を根本的に治療し、再発の心配がなくなるほか、月経がなくなるため、生理痛や過多月経といった症状は起こらなくなります。
ランドリーボックスでは、これまでも子宮全摘出に関するコラムを公開してきましたが、子宮全摘をした方や、検討している方から多くの質問が寄せられています。
「どんな手術方法があるのか」「生活に支障はないのか?」
婦人科疾患の治療として子宮摘出を検討する際、多くの女性が抱える疑問や不安について、産婦人科医の松岡和子先生にお話を伺いました。
本記事では、子宮摘出における手術方法と、それぞれの特徴について紹介します。
子宮全摘出の手術方法は?
子宮を摘出する場合、摘出術にはいくつかの方法があります。
開腹子宮摘出術は、お腹を切開して子宮を摘出する手術です。
腹腔鏡下手術は、お腹に数カ所の小さな穴を開け、そこからカメラと手術器具を挿入し、モニターで確認しながら子宮を切除します。
比較的新しいvNOTES(経膣腹腔鏡下手術)は、膣の奥を少し切開して腹腔鏡のカメラや器具を挿入し、手術を行う手術です。
それぞれのメリット、デメリットには、どのような違いがあるのでしょうか。

開腹手術のメリット・デメリット
ーー 開腹子宮摘出術のメリットデメリットについて教えてください。
開腹手術のメリットは、手術中に見える範囲が広く、安全性が確保しやすいことです。また、触覚で細部を確認できるため、筋腫核出などで残存(取り残し)リスクを抑えられます。
デメリットは、患者さんにとって傷あとが大きいことです。開腹手術の場合、子宮の大きさや状況にもよりますが、一般的には最低でも約10cmは切開します。
また、腸が空気に触れる時間が長いため、将来的な癒着リスクは腹腔鏡より高いと言われています。
ーー 開腹手術だと入院が長いとも聞きました。
20年ほど前は、開腹術後の回復に時間がかかりましたが、今は開腹手術だからといって入院が長くなるわけではありません。多くの場合、術後5日程度の入院です。
痛みに伴う回復の遅さが、現在は麻酔による痛みのコントロールが進み、格段に改善されています。痛みをコントロールし、術後早期から動けるようにすることが、回復に良いとわかっています。
腹腔鏡下手術、vNOTES(経膣単孔式腹腔鏡下手術)のメリット・デメリット
ーーー 腹腔鏡下手術についてはどうでしょうか?
メリットは、傷が小さいことです。手術内容にもよりますが、5mm程度の穴を下腹部に数か所あける程度です。
デメリットは、カメラ操作による手術のため、どうしても死角が生じやすい点です。術野が限られるため、腫瘍の大きさや癒着の程度によっては、手術の安全性が担保できず、症例が制限されます。安全性が確保できない場合は、開腹手術に移行します。
腹腔鏡手術の入院期間は、術後3〜5日程度が一般的です。
ーーー 最近では vNOTES(経膣単孔式腹腔鏡下手術)もよく耳にします。
vNOTESのメリットはお腹に傷がつかないことです。膣から器具を挿入するため膣壁には小さな穴を開けますが、外見上の傷は残りません。vNOTESの入院期間は、腹腔鏡手術と同様に術後3〜5日程度です。
ただ、現状は、vNOTES に適応できる状態かどうかを厳しく判断した上で実施します。vNOTES は膣から挿入してカメラ操作で手術をするため、膣が狭い方、癒着がある人、腫瘍が非常に大きい方、肥満の方は安全性の確認が難しいため、不適応となります。
手術においては、傷の小ささよりも安全面を最優先して手術方法を選択する必要があります。
ーーー 子宮筋腫などの場合、子宮の全摘出ではなく筋腫核出術もありますよね。
はい。筋腫核出術は、子宮を残しつつ筋腫部分のみを取り除く手術です。
筋腫核出術を腹腔鏡で行う場合、触覚による確認ができないため、筋腫の残存リスクが高いことが指摘されています。将来的な再発リスクを極力抑えたい場合は、触覚で確実に除去できる開腹手術が推奨されます。
ただし、そもそも筋腫核出術は子宮を残す以上、筋腫が残る可能性を前提とした手術であり、婦人科医の間でも評価が分かれる手術法です。
ーーー 患者さんの希望と体の状態のバランスが大切なのですね。
そうですね。最近は、事前にネットで情報を調べて来られる方もいます。ただ主観的に調べているので、医療機関としては客観的な視点で安全に行えるかどうかを第一に考えます。
もちろん、患者さんの希望がある場合は、術式に適した病院を紹介することもあります。
選択肢を多く持っておくのはいいことですが、最終的には手術法の新しさよりも、その方にとって必要な治療は何なのか、安全性が担保されるか、そして、それに納得できるかどうかが重要だと思います。
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後編では、子宮全摘術後の体の変化や性行為への影響、手術を検討する際に考えておきたいことについてお聞きしました。
後編:子宮全摘出による排尿・更年期・性行為への影響は?【医師が解説】
<お話を伺った人>

松岡和子先生
杏雲堂病院 産婦人科医。滋賀医科大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医・指導
医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医・指導医。婦人科腫瘍を専門とし、子宮筋腫
や卵巣腫瘍など良性・悪性腫瘍の診断と治療に長年従事。腹腔鏡手術をはじめ、患者一
人ひとりの状況とライフプランに寄り添った、丁寧な医療を提供している。
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ランドリーボックスでは子宮の治療に関するアンケートを実施しています。治療を検討する上で、気になることや聞いてみたいこと、ご経験談などお寄せいただけますと幸いです。














