子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮がんなどの婦人科疾患の治療のために、子宮を摘出するという選択をする、あるいは選ばざるを得ないことがあります。

ランドリーボックスでは、これまでも子宮全摘出に関するコラムを公開してきましたが、子宮全摘をした方や、治療法を検討している方から体験談や疑問が寄せられています。

子宮をとったら女性じゃなくなる気がしてた私が、子宮内膜増殖症・異形成診断で子宮全摘した話

子宮全摘出など手術後のセックスは、いつからできる? 痛みの原因や注意点を医師が解説

今回は、産婦人科医の松岡和子先生に、子宮全摘術後の体の変化や性行為への影響、手術を検討する際に考えておくといいことを聞きました。

※子宮全摘術の種類については、以下の記事をご覧ください。

子宮摘出術にはどんな方法がある?開腹・腹腔鏡・vNOTESの違いを医師が解説

子宮摘出手術後の体と生活の変化。手術後にお腹が膨らむのはなぜ?

ーー 手術後にお腹が膨らむという声があります。原因について教えてください。

主な原因としては、ガス残留とむくみ(浮腫)です。

ガス残留は、 腹腔鏡手術の場合に、手術中に注入したガスがわずかに残ることによるものです。これは時間の経過とともに自然に吸収されます。

むくみは、 開腹・腹腔鏡手術のいずれの場合でも、手術の侵襲によって組織が一時的にむくむことで起こります。

「大きな腫瘍をとったのになぜお腹がへこまないの?」と質問されることもありますが、摘出する子宮や筋腫は1kgを超えないことが多く、見た目の変化はそれほど大きくない場合がほとんどです。

手術後は、お腹を締め付けるベルトやボタンのあるボトムは避け、ゆったりとしたワンピースやウエストがゴムのズボン、スカートを準備しておくといいと思います。

子宮摘出術後に排尿の違和感がある…。原因は?

ーー 術後に排尿障害があったという声も寄せられました。排尿障害になることもあるのでしょうか?

術後に排尿障害が起こる可能性は、手術内容によって異なります。

たとえば子宮頸がん手術では、骨盤内の神経の近くまで手術操作が及ぶため、排尿障害が起こる可能性も挙げられますが、子宮摘出術そのものが原因で、排尿障害が後遺症として残ることは通常ありません。

また、子宮内膜症で癒着が多く、手術操作が大きくなる場合には、子宮頸がん手術同様に、間接的に神経へ影響を及ぼす可能性があると説明しておいたほうがいいと言われています。

とはいえ、実際にはそのようなケースはほとんどありません。ただ、「排尿の違和感」を感じる場合はあると思います。


ーー 排尿の違和感?

はい。違和感の原因の一つは、尿道カテーテル(排尿のための管)です。手術中から、翌日ベッドから降りて歩けるようになるまで、カテーテルをいれます。

1日カテーテルをいれているだけでも「排尿ってどうするんだっけ?」と、一時的に排尿の感覚が分かりにくくなることがあります。これは手術直後の一過性のもので、通常すぐに回復します。

もう一つは、筋腫が大きかった方の場合です。何十年も子宮が膀胱を圧迫していた状態から、急に子宮がなくなることで、膀胱の位置や感覚が変わり、尿意や排尿のタイミングに違和感が出ることがあります。

排尿はそもそも無意識でしているものなので、頭で考えようとすると難しいんですよね。ただ、こうした違和感も短期的なもので、排尿機能自体は時間とともに、数日から長くても数ヶ月で慣れて戻るのが一般的です。

ーー便秘になったという声もありました。これはどうでしょうか?

手術そのものが直接の原因となって、便秘がひどくなるとは考えにくいです。

便秘の訴えは、もともと便秘傾向があった人が、術後に体を動かす量が減ったり、心理的要因で腸の蠕動(ぜんどう)運動が緩慢になったり、排便時に術前と同じ様な腹圧をかけにくくなったり、水分摂取不足などが複合的に重なり、便器が起こることはあります。

子宮と直腸周囲の癒着が強い場合などを除き、物理的に子宮がなくなったこと自体が排便機能に影響を与えることは、基本的にはありません。

子宮を摘出したら更年期はどうなるの?子宮摘出後のホルモン変化と更年期の考え方

ーー 子宮摘出による更年期への影響や、閉経タイミングがなくなることで更年期かどうかの判断がつかない不安があるという声も寄せられました。

子宮を摘出しても卵巣が残っていればホルモンは出ます。子宮を摘出したから更年期症状が出る、早まるということはありません。

その上で更年期かどうかについては、更年期症状に「困るか、困らないか」で判断します。

月経、子宮の有無にかかわらず、40代頃に発汗、動悸、気分的な落ち込みといった更年期特有の症状があれば、婦人科で血液検査などによる検査やホルモン治療が可能です。

もし「更年期かな?この症状つらいな」と思ったら子宮の有無に関係なく婦人科に相談してみてください。

子宮がないことのメリットは、ホルモン補充療法をする際、子宮がある場合は子宮体がんなどのリスクを鑑みて、2種類のホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の併用療法となりますが、子宮がない場合は子宮体がんのリスクがないため、エストロゲンの単独投与となり、補充療法はシンプルになります。

また術後に「メンタルの落ち込みがあるので、これは更年期ですか?」と相談に来られる方で、症状が周期的に発生している場合はPMS(月経前症候群)の可能性があります。

子宮があった時は生理痛などの症状が重すぎてPMS症状にまで気がまわっていなかったけれど、子宮をとった後にPMSに気づく方もいます。

子宮があった場所はどうなるの?排卵した卵はどうなるの?


ーー子宮があった場所はぽっかり穴が空くの?という質問もありました。

いいえ、子宮をとった場所に空間ができることはありません。

子宮はもともと、鶏の卵くらいの大きさで、何メートルもある大腸や小腸で埋め尽くされるお腹の中の一番底にあります。

子宮がいなくなった瞬間から、周りの腸がすぐにその空間を埋めるように動くため、空洞になることはありません。

むしろ、筋腫などで圧迫されていた膀胱は本来のかたちに膨らみ、腸管は本来の動きができるようになります。

ーー卵巣が残っている場合、排出された卵子はどこに行くのか?という声も。

卵巣の機能は変わりません。

排卵された卵子は、子宮があってもなくても、ほとんどが卵管に取り込まれるとは限らず、お腹の中の腹膜に吸収されて消えていきます。

「子宮をとったら卵がお腹に溜まるのでは」とよく聞かれますが、その心配は不要です。

子宮を摘出しても、卵巣が残っていればホルモンは出続けますが、ホルモンが働きかける場所の子宮がないので、月経だけが来ません。

子宮摘出後の性行為への影響は?子宮頸部が性感帯(ポルチオ)だった場合はどうなる?感覚の変化と心理的な影響について


ーー性行為への影響はどうでしょうか?子宮頸部(ポルチオ)が性感帯の場合に感覚が変わってしまうのではないか不安という声もあります。

術後の性行為は、治癒期間を経て再開可能です。子宮頸部が性感帯だった場合、その部位がなくなることで感覚が一部減る可能性はあります。

一時期、北欧で子宮頸部を残して手術をすることが盛んに行われていましたし、希望される方もいました。

しかし、そこを残すことによるメリットが定かではない状態なので、一般的な手術ではありません。

また、オーガズムを感じる場所は一つだけではなく、物理的なものだけでもないため、包括的に考えた場合にオーガズムへの影響は少ないと考えられます。

ただし、手術前と比較して感覚が違う感じがするということは十分に考えられます。術後は、ご自身もお相手も心理面が影響することもあると思います。

※子宮全摘出後の性行為についてはこちらの記事もご参考ください:子宮全摘出など手術後のセックスは、いつからできる? 痛みの原因や注意点を医師が解説

子宮摘出のタイミングは?考えておいてほしいこと


ーー 症状によっても治療方法は異なりますが、手術を検討する際に考えておくといいことはありますか?

私は医師や家族に勧められたからではなく、自分が手術をした方がいいなと思った時にしか手術をしないでと伝えています。ご自身で「やるしかない」と思った時が、手術のしどきだと。

手術もリスクがないわけではありません。お金も時間も、精神的な負担もあります。だからこそ、後悔する手術をしてはいけないと思っています。

手術を頑張ってよかったと思うには、今、手術をした方がいいと思う理由が必要です。

先生に言われて仕方なくした手術は、術後の痛みでさえ悲しく感じてしまいます。ご本人が「しないといけない」と決断した手術は、結果的に良い手術になります。

だからこそ、子宮をとるかどうかを選択する際に「今は手術を決められない」でもいいんです。

仮に3年後に手術を決断したとして、それは、3年頑張ったからこそ、やっと取ろうと思えたということです。

手術後は「もっと早くに手術しておけばよかったかも、なんでこんなに症状に耐えてきたのか」と思うかもしれませんが、手術に関しては早く決断し、腹腔鏡で傷を小さく摘出できたら満足、納得できるというものではありません。

筋腫が大きくなり開腹手術になっても「もう子宮を持っていなくてもいいかもしれない。とった方がいい」と思えた時に子宮はとればいいと伝えています。

その決断までの労力は決して無駄ではありません。

ご自身で決断し、子宮をとった患者さんたちの多くは、数ヶ月後には「こんなに楽なら早くとっとけばよかった。めっちゃ楽!」とガハハと笑っている方が多いです。

月経や付随する症状は、女性にとって体だけでなく心にもストレスが大きいんだなと実感します。

手術はご自身がハッピーになるためにするものです。ご自身の決断を最優先にしてくださいね。

ーー

前編では、子宮全摘術後の手術方法について紹介しています。
前編:子宮摘出術にはどんな方法がある?開腹・腹腔鏡・vNOTESの違いを医師が解説


<お話を伺った人>


松岡和子先生
杏雲堂病院 産婦人科医。滋賀医科大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医・指導医。婦人科腫瘍を専門とし、子宮筋腫や卵巣腫瘍など良性・悪性腫瘍の診断と治療に長年従事。腹腔鏡手術をはじめ、患者一人ひとりの状況とライフプランに寄り添った、丁寧な医療を提供している。

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ランドリーボックスでは子宮の治療に関するアンケートを実施しています。治療を検討する上で、気になることや聞いてみたいこと、ご経験談などお寄せいただけますと幸いです。

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