子宮全摘出の手術を終えた後、退院1カ月程度で普段通りの生活が送れるようになった。術後には定期的な検診があるが、3カ月、6カ月検診を終えた今、この記事を書いている。

*子宮全摘出に至るまでの決断編手術編はこちら

今回は、手術前に不安だった「子宮を全摘出した後の生活」について書いておきたいと思う。

私が手術前に不安だったことは次の3つ。

・子宮を失ったことへの喪失感

・体調やホルモンバランスの変化

・今まで通りセックスできるのか

術前の不安は、事前に担当医師に質問したものもあるけど、「こんなこと聞いていいのかな?」と遠慮や恥ずかしさもあって、医師にちゃんと聞けなかったこともあった。

だからこそ、これから「子宮全摘手術」を受ける予定の人で、私と同じような不安を抱えてる方がいたら、少しでも役立ててもらえたら嬉しい限りだ。

術後の不安1「子宮を失ったことへの喪失感」

photo by unsplash

手術前は、子宮を取ったら「子宮を失った」とか「もう女性ではなくなってしまった」という感覚にならないか不安だったし、そうなるかもしれないと思うと怖かった。

当時、医師からはこんな説明を受けた。

「手術後の感覚は本当に人によって違います。子宮を取って生理がなくなって、毎月の煩わしいものがなくなったわ!と喜ぶ人もいれば、子宮を失ったという喪失感で精神的に落ち込んでしまう方もいます」

話を聞いた時、私は昔から「女性であること」に今ひとつ自信が持てないまま生きてきたので喪失感で落ち込むタイプの人間だろうな、と予想していた。

では実際にどうだったかと言うと、自分でもびっくりするくらい喪失感ゼロ!

蓋を開けてみたら、生理がないってサイコー!温泉もプールもどんと来い!という側の人間だったらしい。

まず、術後すぐに思ったのが「子宮がなくなった感じが全然しない」だった。

そもそも私が子宮の存在を意識する場面は、生理痛でお腹が痛い時や婦人科検診のエコーで子宮内を見せてもらうときくらいのものだったし、子宮は外から見える臓器でもない。

さらに、子宮自体が40〜50gのたまごくらいの大きさなので「なくなった」を感じるほうが難しかったのかもしれない。

そして、「生理がなくなった=女性性の喪失感」は術後から今まで一度も感じていない。

皮肉なことかもしれないが、「子宮があってもなくても私は何も変わらなかったんだ」ということに、子宮をなくして初めて気づいた。

私が手術を決めるときに勇気づけてくれたアンジェリーナ・ジョリーの言葉。

「術後も女性として何かを失った喪失感もなく、さらに年々女性としてどっしりとした感じがする」まさにこれだった。

私はこれからも女性で、きっと女性として年を重ねるごとにどっしりするのだと思う。

「自分が女性であるかどうかを決めるのは自分。子宮がなくなっても女性性は失われないよ」が私が抱えていた喪失感という不安への答えだった。

術後の不安2 「体調やホルモンバランスの変化」

photo by unsplash

「術後は1カ月程度で普段通りの生活が送れるようになります。それから、ホルモンは卵巣から分泌されるものです。子宮はただの袋だから摘出してもホルモンバランスが崩れることはありません」

術後の体調の変化について数名の医師に聞いたが、みな同じ答えだった。

では実際にどうだったかと言うと、まあ1カ月で普段通りの生活には戻れたけど、ホルモンバランスの揺らぎはとても感じているぞ?が正直なところ。

まずホルモンバランスの前に体力面で言うと、術後1週間はベッドからひとりでは起き上がれなかった。

お腹に力を入れると痛いので、毎朝夫につかまって起き上がり、毎晩夫にそっと布団の上に私の身体を載せてもらう日々だった。

術後2週間目くらいまでは歩くスピードは通常時の半分くらい。早く歩くと傷に響く感覚があって痛いような気がするので亀のごとくのっそり歩き、お腹に力を入れないように荷物を持つことは避けた。

3週間目くらいから初めてスーパーの重い買い物袋が持てるようになり、犬の散歩を再開して歩く距離を伸ばすことで徐々に体力が回復していくのを感じた。

さて、問題のホルモンバランス。

術後すぐは何も変化を感じなかったが、体力も回復して普段通りに出かけられるようになってきたあたりで、あれ?と感じることが増えた。

当時は夏だったから最初はあまり気にしていなかったが、秋冬になっても今までかいたことのないところに汗をたくさんかくようになった。

暑いという感覚はないのに汗びっしょり、みたいな感じ。具体的には胸の間とか首と肩の後ろとか。

さらに毎晩寝る時にどんなに着込んでも肩のあたりにうっすら寒気を感じることが増えた。

最初は風邪かな?と思ったけど、そうじゃない。

自分の体感温度と実際の体温がズレていて、体温調節がうまくいっていない感じだ。

2つの症状を検索するとやっぱり出てきたのが「更年期」というワード。

年齢も40代半ばに差し掛かろうとしていることだし、もともと更年期のタイミングだったのか、それとも手術で早まったのかな?とも考えたりした。

医師からは、こう伝えられた。

「年齢的には少し早い気もするけど更年期に近い症状が出てきているのかもしれないですね。まだそんなに強い症状は出ていないので、大豆製品を多めに取るとか『エクオール』という大豆由来のサプリメントをとってみるのも良いです。しばらく試してみて、それでも改善が見られない場合はホルモン剤などその他の方法について考えましょう」

今まで「更年期」は遠い存在で、どこか「イライラしているおばさん」「女も終わりかけ」と思っていたけど、私もついに更年期世代に突入したんだな、と思った。

更年期に対して失礼すぎるイメージを抱いていたが、自分がこれから迎えるのならぜひ更年期と仲良くしたいし、できるだけ快適に過ごしたい。

なんなら更年期のイメージアップにも貢献したい。うまくつきあっていくためにやれることは全部試してみるつもり。

今のところ、『命の母』と『エクオール』をダブル使いしている。

汗は出るときは出るのだけど、夜眠るときの寒気を感じることが少なくなったし、なんとなく前よりも体温調節がうまくいっている気がする。

結局、ホルモンバランスに関しては手術の影響なのか年齢的なものなのかはわからないけれど、諦めずに自分にあった対処法を見つけていくことはできるんじゃないかというのが答え。

術後の不安3 「今まで通りセックスできるのか」

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子宮全摘の手術が必要だと言われた最初の頃から、子宮を取ったらセックスはどうなるのだろう?という疑問があった。

でも私は普段からセックスのことをオープンに話すタイプの人間でもないし、恥ずかしいのもあって自分からはなかなか医師に質問できなかった。

それでも最初に手術の詳細や術後の生活について説明してくれた男性医師は、私から質問する前にセックスについても教えてくれた。

「術後の性生活はほぼ今まで通りできる人のほうが多いです。ただ、子宮を取ると膣が若干短くなるので、場合によっては男性器が入りきらないことはあるかもしれない。でもそれ以外は特に制限はありませんよ」

なるほど、膣が短くなるのはわかった。

じゃあ、セックスの痛みは?濡れるの?しちゃいけない体位とかあるのかな?

女性側は変化がないとは言え、男性側は?

いつもと感覚が違うとか、お腹の傷口を見たら怖くなってしたくなくなったりしない?とか次々と疑問が湧いた。

でも、医師が子宮全摘後の女性とセックスした経験があるわけでもないだろうし、私のパートナーと同じ価値観かどうかもわからないのだから、聞いても仕方ないだろうなと思った。

なによりセックスのことを人に質問すること自体が恥ずかしすぎて結局ひとつも聞けなかった。

こうなったら、医師に聞くかわりに検索だ。

全く支障がない人もいれば「痛い」、「濡れない」、「もうしたくなくなってしまった」と性欲自体がなくなった女性もいた。

そんなエビデンスはどこにもないのに、術後のパートナーとセックスしたらガンがうつる/ガンになりやすくなってしまうのでは?と怖くてセックスできない男性の体験談もあった。

これまた十人十色。いくら不安に思っていても自分が経験してみるしかないんだな、と思い、そのときが来るのを待つことにした。

術後にもらった「術後の生活のしおり」には術後3〜6カ月、医師からGOサインが出るまでセックスは控えましょうと書いてあった。

術後の1カ月検診ではセックスの話はまったく出ず、3カ月検診でも出なかったので、意を決して、でもすごく小声で「先生、いつからセックスできますか?」と聞いた。

なにも今すぐしたい!ってわけじゃない。でも、情報として知っておきたいだけですから!と心の中では叫んでいた。

「傷口も綺麗だったし、3カ月経ったからもうしてもいいですよ。激しいことはしないように。それから感染症は怖いのでコンドームはしてくださいね」

激しいことってなに!?と心の中でツッコんだけど、もちろん実際に聞けるはずもなく病院をあとにした。

そして術後4、5カ月目くらいで実際にセックスをしてみたけど、本当に今まで通りなにも変わらなかった。

私が心配していた疑問はすべてクリア、男性側も違和感はなかったそう。

強いていうならば、私の場合は、私が普段の生活では感じない「子宮がない」という感覚がセックスをしたときだけはある。

今まで子宮があるときは子宮の入口がクッションになっているような感じ、子宮がなくなってからは、うまく言えないのだけどクッションがなくなってフラットな壁になった感じ。

実際に子宮を取って膣を縫い合わせているので壁になっているんだろうけど、それを実感している。

痛みも全くないし、男性側にはその違いがわからないそうなのだけど、とにかくそんな感覚がある。

内臓は自分の身体の一部なのに、普段その形を感じることはほぼない。

でも、子宮がなくなったことで、あったときとなくなったあとの両方の感覚を持てるのはなんだか面白いなと思った。

子宮全摘手術後の不安と向き合ってわかったこと

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子宮をとったら女性じゃなくなる気がしてた私だったけど、今、子宮がなくなっても私は私、女性である気持ちに一点の曇りもない。

そして、手術は確かに身体には負担だったけど、気づきがたくさんあった。

人間は生きているだけで十分素晴らしいこと、自分の体調やどこに痛みがあるかなどをちゃんと自分で体感すること、いつもより自分の調子に敏感になりケアできるようになったこと、普段私を支えてくれている家族や周りの人のありがたさに気づいたこと。

私が手術を受けて失ったものは、案外子宮だけだったなと今なら思える。

だからこそ、これから子宮全摘の手術を控えている人全員に伝えたい。

今不安に思っていることも、術後ひとつずつ越えていけるから大丈夫。

術後のあなたもなにも変わらないから大丈夫。 

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