全国各地でさまざまな企業が、新入社員を迎え入れた4月1日。オーダースーツを手掛ける株式会社シーアールエーは、ジェンダーにとらわれず”自分らしく働くことの大切さ”をコンセプトにした入社式を開催しました。

同社が積極的に取り組んでいるのは「LGBTQ+採用」。

2021年6月には千葉県船橋市にLGBTQ+向けオーダースーツ専門店「FabricRainbow(ファブリックレインボー)」をオープンし、性別を超えたスーツづくりと当事者に寄り添ったサービスを展開しています。

今回は、同社の入社式の様子をレポートするとともに、若者が注目している「自分らしく働く」ことの重要性について、インタビューしました。

「自分らしさを見つけて」人生の先輩からのエール

シーアールエーではこの日、6名の新入社員を迎えました。

入社式後の記念講演では、LGBTQ+の「T」、トランスジェンダー(FTM:Female ​to Male)当事者であり、元なでしこリーグ女子サッカー選手の大嶋悠生さんが登壇し「自分らしく働くこと」について講演しました。

大嶋さんは引退後、男性として同リーグの元選手あさひさん、まささんとともに、YouTubeを中心にユニット「ミュータントウェーブ」として活動中。講演では「自分らしく生きることは簡単ではない。

しかしどんな人でも存在しているだけで価値があり、自分を好きになったり素敵な仲間と出会ったりして広く柔軟な心を持つことで、その先に”自分らしさ”の発見があるのではないか」と伝えました。

大嶋悠生さん/photo by しるさき

また、女性リーダーシップ教育など人事コンサルティング業を行うInstitute of Women’s Leadship株式会社・代表取締役/CEOの川嶋治子さんはインクルージョンをテーマに講演。自身の経歴を交えながら「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性についてお話しされました。

今や社会全体の共通認識となっているダイバーシティだけでなく「インクルージョン=包括性」も重要であり、「一人一人が助け合い、力を合わせて生きていくのが新しい社会の在り方」と訴えました。

川嶋治子さん/photo by しるさき

LGBTQ+当事者が働きやすい環境は、そうでない人にも働きやすい

6名の新入社員のうち、トランスジェンダー(FTM)当事者として入社したSさんとKさん。入社したきっかけや「自分らしく働く」をテーマにインタビューしました。

ー就職先をシーアールエーに決めた理由を教えてください。

Sさん:私は今までトランスジェンダーであることを”ハンデ”だと思っていましたが、この会社を知り自分の性の在り方を”強み”にして働けると感じました。

Kさん:就活で着たレディーススーツに違和感を抱き、メンズスーツを着用してみたところ”これが自分らしい”と感じたことがきっかけで、入社しようと思いました。

ー周りの友人はジェンダーレスな働き方についてどう考えていますか。

Kさん:周りの友人は、積極的にLGBTQ+採用をしている会社があることに驚いていましたが、同時に『ホワイトそう』という印象も持ったそうです。

トランスジェンダー当事者が働きやすい職場は、当事者でない人たちにとっても働きやすい環境。そう捉える人がいるように、ダイバーシティーやジェンダー平等に取り組む企業に”入社したい”と考える若者は増えているのではないでしょうか。

ー「自分らしく働く」とは何だと思いますか。

Sさん:自分にとっては”性別による区別がない働き方”でした。例えば、男女別で制服がある職場は、トランスジェンダー当事者にとって働きづらいです。髪型が自由に決めることができ好きな服を着られるこの会社では、自分らしく働けると感じています。

Kさん:自分自身、メンズスーツと出会い「自分らしくいられる」と思えました。入社後は『ファブリックレインボー』でメンズスーツへのこだわりを強みにして、お客様の体型に合った提案をしていきたいです。

トップがこだわる「自分らしく働くこと」の大切さ

ジェンダーに捉われない働き方を提唱する株式会社シーアールエーの代表取締役社長 井出俊信さんにも、今回の入社式を実施した背景を聞きました。

井出俊信社長:LGBTQ+当事者がアウティング(望まない暴露)をきっかけに自ら死を選んでしまったという報道を目にし、LGBTQ+に向けた取り組みを始めました。当事者の経歴や能力とは関係なしに差別され、自分らしく働くことさえできない世の中に、ショックを受けました。

そこで、本業のスーツづくりを活かし、2016年にLGBTQ+向けオーダースーツの販売を開始。

同時期にLGBT求人サイト「JobRainbow(ジョブレインボー)」に登録したところ、これまで100名以上のエントリーにつながりました。当事者の有無に関わらずエントリーがあるため、幅広い人材の確保が可能となりました。

しかし一方で、本サービスを必要としているユーザーにどう情報を届けるかという点で苦労しています。また、コロナ過でスーツの需要は急激に落ち業績は決していいとは言えません。それでも、一人一人が自分らしく働ける環境作りは経営者として当たり前にやらねばいけないことです。

そのため、苦しい状況でも人材育成や働きやすい職場環境の構築に尽力しています。挑戦し続けている今、自分自身も「非常に楽しい」と感じています。今後は、1年間に1店舗ずつファブリックレインボーを開設することを目指しています。

これからも「ひとりでも多くの方が自分らしく生きていける世の中を、経営者として社会に貢献する」を ビジョンに、LGBTQ+当事者だけでなく、全てのお客様に対し真摯に向き合い「あなたらしく輝けるスーツ」作りに努めて参ります。

株式会社シーアールエー代表取締役 井出俊信さん

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