大型連休は、お家でじっくりBL漫画に浸ってみませんか? これまでBL作品をあまり読んだことのない人にも、入門的に楽しんでいただけるおすすめの漫画を5つ選びました。
今回は、ネタバレはせずに、その魅力を紹介します!
『ロンリープレイグラウンド』 全スパダリ好きにおすすめしたい三角関係BL
本作は、駅前の中華料理屋でバイトをする慧介(21)と地味だけど上品な雰囲気の会社員・雪文(26)、そして雪文の不倫相手で妻子持ちの雨津木による三角関係BL。
ゲイの慧介は、バイト先で見かける会社員の雪文が密かに気になっていた。そんなある日、高架下で一人佇み、「7年付き合っていた不倫相手に捨てられた」と話す雪文と偶然出会い、二人は成り行きで一夜を共に。予想以上に“エッチなお兄さん”だった雪文にたちまち惚れてしまう慧介と、自分に真っ直ぐな愛を向ける慧介に惹かれていく雪文…。しかし、雪文の不倫相手・雨津木は、彼を手放そうとしてくれなくて——!?
本作の見どころはなんといっても、雨津木に「性のおもちゃ」として扱われていた雪文を、「スパダリ*王子様」こと慧介が溢れんばかりの愛で救済・解放していく様。「慧介、お前はあまりにもかっこ良すぎる…!」と心の中で何度も叫んでしまいました。
*スパダリ:「スーパーダーリン」の略。一般的にはハイスペックな男性のことを指すが、その定義には個人差がある。
また、慧介と雪文のセックスシーンの多さも本作の特徴だと思うのですが、これも雨津木に支配されていた雪文の解放を表すポイントになっていて。雨津木に7年も調教された雪文の体は、“開発済”な体なので、エッチなことが好きで抗えない。ただ、当の雪文は、慧介と体を重ねるときに心のどこかでそんな自分を恥じてしまうことがあって…。
慧介は、雪文の抱える「支配」をどう解いていくのか、そして雪文は過去をいかにして乗り越え慧介に応えるのか、雨津木の心中は…?など、3人の三角関係の行く末をぜひみなさんにも確かめてほしいのですが…最後にひと言。めちゃくちゃ泣きました!
・上下巻完結済
※本作は一部、アウティングを想起させるような描写が含まれています。
『百と卍』重層的な人間模様と運命のいたずら的ストーリーに目が離せない、江戸時代BL
遠出しづらい今年のGWは場所さえも超えて、BL漫画でタイムスリップしてみませんか?
次にご紹介するのは、第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門 「優秀賞」も受賞した江戸時代BL『百と卍』。
時は江戸時代・後期。ある雨の日に出会った元・陰間(江戸時代、客に男色を売った男娼の総称)の百樹(ももき)と、元火消しの卍(まんじ)は、恋人として共に暮らしていた。義兄弟の契りを交わし、お互いの存在がなくてはならないものだったが、百樹と卍はそれぞれが辛い過去を背負っていて…。
本作は百樹と卍の2人をメインに話が進みますが、もう1つ注目なのが、作中で繰り広げられる重層的な人間関係です。
卍の火消し時代の元相棒で肉体関係にあった千(せん)や、その千に想いを寄せる妻子持ちの美男子・兆(きざし)。はたまた百樹の陰間時代の同期や、卍の火消し時代の仲間たちなど…。「そこで出会ってしまうのかー!」と、思わず叫んでしまう運命のいたずら的な展開にも目が離せません。
そして、メインのカップリングである百樹と卍の愛くるしい日々は、まさにトキメキの嵐。こちらもしっかりと噛み締めて、ページをめくり続けました。
また、紗久楽さわ先生が描き出す江戸時代の暮らしや文化の時代考証性も本作の魅力のひとつ。当時を再現するため、現代では聞き慣れない言葉も使われていますが大丈夫!紗久楽さわ先生が紡ぎ出す言葉のリズムと、見事な伏線回収をきっと楽しんでいただけるはずです!
・1〜4巻まで発売中
『さんかく窓の外側は夜』ホラー、謎、愛がぎゅっと詰まった心霊探偵コンビBL
今年1月に実写映画が公開され、さらにはテレビアニメ化も決定している本作。
出版元の「libre」では非BL作品としてカテゴライズされていますが、作者のヤマシタトモコ先生が述べているように、作中では2人の男性の愛の話が描かれているため、今回はBLとして紹介したいと思います!
昔から霊を視る能力に長けていた書店員の三角康介(みかど こうすけ)。そんなある日、警察の未解決事件などにも手を貸す除霊師の冷川理人(ひやかわ りひと)にその才能を見い出され、無理やりコンビを組まされてしまう。以来、三角と冷川コンビによる「除霊」のお仕事が始まるが、ある殺人事件の現場に「呪い」が残されていて…!?
作品の大きな特徴は、まず「ホラー」という点。これがとにかく怖い。幽霊のビジュアルが怖いとかではなく(十分、不気味なんですが)、なにより霊が現れたときの空気感が読み手に痛いほど伝わってきます。一方、三角と冷川が共同して行う「除霊」作業は端的に言うと、エロい。これはセックスの暗示では…?と思うセリフが何度も登場します。
ホラー要素と少しエッチな除霊シーンの緩急にゼーハーしながら読み進めていたんですが、一転、本作は巻を追うごとにさまざまな謎が見えてきます。呪いの言葉を吐く女子高生の非浦英莉可(ひうら えりか)や、「先生」と呼ばれる教団のトップ、そして壮絶な過去を持つ冷川など…。
なかでも、想像を絶する過去を持つ冷川に、三角はどう手を差し伸べるのか。この2人の関係性には、愛を感じずにはいられないはず。そして、
「傷ついている他者に手を差し伸べるとはどういうことなのか」
「“救う”とは一体なんなのか」
そんな問いかけもまた、読者に投げかけられているように感じます。ぜひ、GWのお休みに一気読みしてみてください。
・1〜10巻完結済
『セックスセールスドライバー』エロ・笑い・萌えのバランスが完璧な“お仕事BL”
本作を勝手ながら、「表紙と中身のギャップにいい意味で裏切られる選手権・第1位」と名付けさせていただきます(かと言って、表紙の“ハゼさん”の色気は健在なのでご安心ください)。
元デスクワーカーの恋ヶ谷(こいがや)が転職したのは、超肉体労働の配送サービス業。日々、身も心も削られる業務の中で、唯一の癒しは大好きな先輩の“ハゼさん”。多忙な業務でもようやく慣れてきたある日、仕事のミスをハゼに尻拭いしてもらった挙句、飲み会で泥酔し醜態を晒してしまう。しかし目を覚ましたとき、隣にはあのハゼさんが。そして「恋ヶ谷くん、本当に何も覚えてないの?」と言われ、その後二人は急接近していくが…!?
テンポ良く、コミカルに話が進んでいく本作。恋ヶ谷の職場の同僚たちもギャグ線が高く、終始ニヤニヤしながら読んだのですが、物語の転換点は、恋ヶ谷が抱く「仕事への葛藤」という部分。
これは個人的な考えですが、誰だって一度は、仕事に対するやりがいや自分に向いているかなど、分からなくなってしまうことがあると思うんです。「恋ヶ谷の気持ち、なんとなく分かるな…」と思って読んでいた矢先のハゼさんの言葉が沁みます。仕事ができる人・他人に的確にアドバイスできる人のソレなんです。あっぱれでした。
また、ハゼさんの「合意がなきゃセックスしない」という姿勢も、安心して読める要素なのではないかと思います。
本書を、労働に疲れたときの一杯ならぬ、労働に疲れたときの一作品として推薦します!
・1巻完結済
『マイリトルインフェルノ』ドラマチックな展開が魅力的。天才ハッカーと平凡な大学生の凸凹BL
最後にご紹介するのは、「天才ハッカー×平凡な大学生」という“境遇の違い”が恋愛の1つのハードルとなっていた『マイリトルインフェルノ』。
受験に失敗し地元の大学に渋々と通う、元いじめられっ子の仁(ひとし)。そんなある日、夜道を歩いていたら車から物音がしてトランクから出てきたのは、謎めいたゴツい大男・「まーくん」だった。見るからにカタギではない「まーくん」の強引さを拒否できず、家で匿うことになってしまうが、お金は勝手に使うわ泣かしてくるわで、彼との出会いはまさに“最悪”。
けれど、そんな「まーくん」は朝ごはんも作ってくれて、話も聞いてくれる。なんなら昔のいじめっ子も追い払ってくれた…。そんな得体の知れない大男「まーくん」は、ハッカー時代の元相棒(で元カレ)のナカモトに、なぜか執拗に追われる身で…?
本作において、一際異彩を放って登場するまーくんですが、実はその正体は天才ハッカー。彼の才能に魅せられた元彼のナカモトが、まーくんを取り戻すため仁の家族を巻き込むあたりから、物語はドラマチックに展開していきます。
読了後、まるで一本の映画を観た気分になりました。特に、まーくんとナカモトがコンビを組んでいたハッカー時代のストーリーは必見です。享楽的な裏社会で、次々と犯罪をやり遂げていく2人…。これがまた最高に痺れます。
また、平凡で孤独な大学生の仁が、まーくんと過ごしていくうちにどのような変化を遂げるのかも本作の見どころのひとつ。クライマックスを迎える下巻では、仁、まーくん、そしてナカモトによる三角関係の決着に思わず唸ってしまいました。
ドラマチックな展開が魅力的な本作をぜひ、連休のお供として楽しんでいただければ幸いです!
・上下巻完結済
※本作は一部、性暴力を受けた人にとってフラッシュバックを起こす可能性のある描写があります。
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漫画以外にも、こちらの記事では連休中に観たくなる映画作品も紹介しているので、ぜひ覗いてみてくださいね!