【お悩み】
結婚生活6年、出産後のセックスレスで悩んでいます。
夫とはもともとスキンシップが多いほうではありませんでしたが、妊娠・出産の後はほとんどなくなりました。
ときどき夫の方からセックスを求めてくれることがあるのですが、私は出産前とは違ってそれに応えることができません。彼とのセックスにあまり気乗りしないため、拒否してしまいます。
夫は私に拒否されて落ち込んでいるように見えますし、私は彼に対して「ごめんね、嫌いになったわけじゃないよ」と言うのですが、結局その場しのぎにしかなっていないかなと思ってしまいます。
私は決して夫のことが嫌いになったとか、子どもができて夫への気持ちが変わったかというとそうではないんです。家族やパートナーとして愛しているし、信頼もしています。
私としては、セックスなしでも夫と夫婦仲よく過ごしていきたいのですが、どのように夫に伝えればいいのでしょうか?彼を傷つけない方法を知りたいです。また、セックスがなくともお互い心地よいパートナーシップのあり方を知りたいです。
(35歳・女性)
まずはあなたの体と心を優先して大丈夫
こんにちは。露の団姫(つゆの・まるこ)です。
夫を嫌いになったわけではないけれど、セックスには応えられない…。とても複雑な心境にあると思います。今後のよりよい夫婦関係のためにも、一緒に考えていきましょう。
まずは、夫婦間におけるセックスそのものについて整理してみます。
第一に、たとえ夫婦であってもセックスは決して義務ではありません。まして、強制されるものでもありません。人間には、自分の心のことも体のことも、自分自身で決定する権利があります。それは結婚した途端に失われるものではありませんし、結婚がお互いの合意によって行われたように、セックスも、都度お互いの同意にもとづいて行われるべきものです。
では、セックスレスとは何でしょうか?
そもそも、セックスレスとは「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1カ月以上ないこと」の状態をいいます。
お互いにセックスレスの状態であることが快適、というカップルであれば問題ないと思いますが、どちらか一方がセックスを望んでいる場合は、どうしても関係がギクシャクしてしまいます。
しかし、相談者の場合は、「特別な事情がない」には該当しないと考えます。なぜなら、妊娠・出産という大きな出来事を経験されているからです。
妊娠・出産は母体に大きな負担がかかります。そして、回復するには長い時間を要するものです。ホルモンバランスのことなどを考えても、「産後、セックスに応じる気分になれない」というのは、起こりうることであり、自身を責める必要もなければ、他者から責められるようなことでもないのです。
では、そのような体の事情を、夫さんにどのように理解してもらえばいいのでしょうか?
大事なことは雰囲気に任せず、ふたりで話し合う
仏教では、「苦しみ」とは「思い通りにならない」ことをいいます。その「苦しみ」を軽減できるのは、欲望を満たすことではなく、智慧(ちえ)です。
そこでセックスレスの夫婦におすすめしたいのが、「寝ている以外の時間に夫婦で話し合う」ということです。
ところがこの提案をすると、「セックスってその場の雰囲気もあるので、昼間からは話せません」と言う人も多いでしょう。
しかし、そこで思い留まっていてはいけません。なぜなら、セックスはスキンシップの意味もありますが、同時に妊娠の可能性を伴う行為でもあるからです。
例えば、ふたりのセックスのあり方について話し合うべきときに話し合っていなかった場合、避妊をするか否かも、そのときのその場の雰囲気で決めたり、女性は避妊をしないことを受け入れざるを得ない状況を招く恐れがあります。
セックスのときに気持ちが高まって「もうひとり子ども作っちゃう?」などというセリフをドラマや漫画で目にすることがありますが、それはあくまでもフィクションの話です。最終的に妊娠・出産するのは女性です。
また、妊娠・出産のみならず、その後の子育てのことも考えると、自分自身のワークライフバランスに大きく関わる子どものことを、話し合いの時間をもうけずにその瞬間に決めていいのでしょうか。
だからこそ、しっかりと夫婦で話し合うことが必要でしょう。
「心の余裕」を作って夫婦のすれ違いを防ぐ
では、事前に話し合うメリットとはなんでしょうか?
例えば旅行に行ったとき、旅の目的としていたケーキ屋があるとします。やっと到着した瞬間、閉められたシャッターに「本日休業」と書いてあればどのように感じますか?
なんともいえない絶望感や、「せっかくここまできたのに!」という怒りを感じることもあるでしょう。まさしく、思い通りにならなかったから、苦しいのです。たとえ他のケーキ屋を探したところで、本来望んでいた満足感を得られることはありません。
しかし、事前に行きたかったケーキ屋が休業であることを知っていればどうでしょうか?もしそうだったら、「今回は残念だけど、それなら、ほかのお店でいいところがないか探してみる?」と、休業という事実をポジティブに変換したり、絶望感を回避したりすることができます。つまり、「事前に知っておく」ことが、苦しみを軽減するコツなのです。
性欲は、一部の人にとっては人間の本能のひとつですが、欲を直前に抑えなければならないことがもっとも苦しみを生みます。そして、苦しみの真っただ中で理由を説明されても、それこそ、苦しむ人にとってはその場しのぎの言葉にしか聞こえず、納得もしづらいでしょう。
だからこそ、欲がでてきた「そのとき」に言うのではなく、事前に伝えるのです。
では、どうやって伝えればいいか?相談者さんのお便りに書いていただいたとおりに、夫さんへの素直な気持ちを伝えればいいのです。同じ言葉でも、状況によっては相手のとらえ方も全く違ってくるでしょう。
また、相談者さん自身も、夫さんに理解してもらうことで精神的な負担が減れば、今後、体のフットワークが軽くなることもあるかもしれません。
今は「セックスに応じなければ」「断ると関係が悪くなるのではないか」とご自身を追い詰めていることもあるかと思いますが、相手の気持ちに余裕ができれば、こちらにも余裕ができ、「気負いすることなかった」と思えるものです。
お互いの心の力が抜けたとき、初めて、ふたりのありのままの形が出来上がってくるでしょう。
自分の心も相手の心も大切にして、より良い夫婦関係を築いていってくださいね。
*本記事の内容は個人の見解です。必要な場合は専門家への相談をおすすめします。