「あの時、離婚を選択した自分たちを褒めてあげたい」

僕たち夫婦は、ファイナンシャル・アドバイザーの夫と、ファイナンシャル・プランナーの妻。お互い30代後半に離婚を経験したあと、僕らは再婚しました。

過去の離婚の理由は、不倫や家庭内暴力など「決定的な何か」があったわけではなく、夫婦仲が極端に悪かったわけでもありません。ただどこか満たされない気持ちを抱いたまま、生きていたことが原因だったように思います。

「このまま一生を終えるのかなぁ」

そう思いながら淡々と生活していたわけですが、ある年の誕生日に「これからは自分らしい人生を生きよう!」と決心。 パートナーと話し合いの末、お互いに納得して円満離婚となりました。パートナーの引っ越しや家電購入も一緒に行い、協力してそれぞれの新しい生活をスタートできたと思います。

新たな人生をスタートさせた今は、日々楽しく「自分の人生」を生きていると実感しています。離婚を決意したとき、僕はようやく自分のことを本当の意味で大切にすることができたのだと思います。

離婚の理由ベスト5

さて、「どこか満たされない気持ち」が原因で離婚をするというのは、どうなのでしょうか。少しデータを見てみましょう。

下表の司法統計によると、夫、妻共に離婚申し立ての動機としてもっとも多いのが「性格が合わない」となっています。「性格が合わない」には多くの意味が含まれていそうですが、考え方などの違いによって精神的な負担を感じるのだと思います。

(注)申立ての動機は,申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査、集計したもの。【参考】裁判所 司法統計平成28年度婚姻関係事件数  申立ての動機

家事分担やお金の使い方など、日々の些細なことが積み重なって嫌になってしまうことも多いのかもしれません。

夫婦で話し合って解決できればいいのですが、それができない場合、離婚を考えたくなるのは、ある意味当然のようにも思えます。

では、どのくらいの夫婦が離婚するのかというと、厚生労働省の調査によると年間約21万組なので、一日平均すると約600組弱です。これを多いと思うか少ないと思うかは人それぞれですが、離婚は「特殊なこと」ではないと言えそうです。

【参考】厚生労働省 令和元年(2019)人口動態統計(確定数)

夫婦で合意したうえで、夫婦と証人2人で離婚届を記入し役所に提出すれば離婚の手続きは完了します。実は、驚くほど簡単に離婚できるのです。

以上のことからわかるように、実は離婚自体は大変なことではなく、誰もが幸せに生きる選択肢として離婚が選べる時代です。大変なのは離婚に際して揉めること。離婚原因によってはどうしても揉めることがありますが、自分の気持ち次第では円満離婚できることもあるのです。

僕たち夫婦が、過去の離婚のときに思ったことは、「あれっ、思ったより大変じゃないのかも」でした。あまり難しく考えすぎず、明るい未来に向けた前向きな選択肢と捉えてみてもいいかもしれません。

離婚の選択肢を考えるとき

結婚されている方であれば、まずは、自分自身に質問してみてください。

  • 今の生活で自分は幸せか?
  • 結婚生活で何か問題があるなら、パートナーとの話し合いで解決できるだろうか?
  • 離婚せずに幸せになる方法はあるだろうか?
  • 離婚後のお金や子どもの不安がないとして、離婚したいだろうか?

まずは、自分自身と向き合ってみることが大切です。場合によっては、離婚という選択肢について、一度考えてみるといいのかなと思います。その際、短期的な損得では自分自身が本当に望む選択ができないかもしれません。長期的な視点で冷静に考えてみることをおすすめします。

離婚に向けた、お金にまつわる「準備」とは?

Photo by Mathieu Stern on Unsplash

離婚について考えるとき、多くの方が気になるのが「お金」のことではないかと思います。人生を選択するために苦労しなくて済むように、お金のことを知って準備しておけるといいでしょう。

まず、結婚してから夫婦の協力によって形成した財産(建物や土地、預金、株式など)は、夫婦の財産です。そのため、離婚時に財産を分ける制度として、離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる、財産分与というものがあります。

一方の名義で取得した財産であっても、実質的に夫婦の共有財産とみなされる場合は、財産分与の対象になり得ます。例えば、パートナー名義の証券口座であっても、夫婦のお金を入れていれば夫婦の財産ということです。

そうなると、離婚時にきっちりと半分の財産を受け取って当然だという考えになるかもしれません。ですが、それがスムーズな離婚を遠ざける可能性があるのです。お金のことで揉めると、時間もお金も労力も、そして気力もかかります。

ただし、パートナーの暴力や不貞行為など、ご自身が不当な扱いを受けた場合には、弁護士の方にご相談し、ご自身で納得のいく解決の道を選択できるといいと思います。あなたは法律で守られているのですから。気持ちが弱っているときには誰かに頼ることも大切です。

ここでは「性格の不一致」などを理由に合意の上で離婚する際に、必要なお金について、「夫婦のどちらが家計を支えているか」という側面からお話します。

①パートナーがメインで家計を支えている場合

離婚に際して必要なお金を受け取れるように、なるべく夫婦もしくはご自身の預貯金を蓄えておきましょう。上記に財産分与についてお伝えしましたが、財産がなければ分けることもできません。日頃から、パートナーの預貯金口座残高がわかるような環境づくりをしておくことが理想です。

離婚してから最低限必要なのは、離婚後の引っ越し費用と、新生活を始めるために必要な費用、そして離婚後に、自立して生活できる収入が得られるまでの期間に必要な生活費です。財産分与で半分を受け取れると仮定すると、これらを2倍した金額を預貯金として貯めておく必要があります。

  • 引っ越しの費用
  • 新生活を始めるために必要な費用(家具、家電、日用品、賃貸契約に必要な資金)
  • 収入が得られるまでの期間に必要な生活費

夫婦の建物や土地がある場合、財産分与しやすいように売却して現金化するか、建物や土地をパートナーに譲って代わりにお金を受け取る方法があります。ただし、建物や土地の評価額が低かったり、ローンが多く残っていたりする場合は、あまり期待しない方がいいでしょう。結婚前のパートナーの預貯金や、パートナーが贈与や相続で得た資産については財産分与対象外なので注意しましょう。

また「年金分割」といって、パートナーが支払った厚生年金を分割して受け取ることができる制度もあります。

そして、離婚後の経済的自立のために、自身のスキルアップも意識しつつ、就職先や転職先を調べておくといいでしょう。その際には、ハローワーク、母子家庭等就業・自立支援センターなどを活用できます。必要に応じて、求職者支援制度、職業訓練受講給付金、自立支援教育訓練給付金、高等職業訓練促進給付金といった制度についても、知っておくといいです。

②あなたがメインで家計を支えて働いている場合

あなたが働いて得たお金とはいえ、結婚後に得た収入であれば、パートナーにも権利があります。ですので、①と同様にしっかりと預貯金を確保したうえで、離婚時には少し多めにお金を渡せるとベストです。

婚姻中に、パートナーの無駄遣いが多かったとか、そういったことはいったん水に流しましょう。離婚すればパートナーは一人で生きていかなくてはなりません。これまでのことより、これからのお互いのことを考えて判断できると円満離婚のためにもいいと思います。

もし財産分与を渋ったことでパートナーから離婚を拒否されてしまうと、「離婚をして新しい一歩を踏み出す」という目的が達成できなくなってしまいます。

その場合、離婚協議や離婚調停で弁護士費用が掛かったり、時間や労力を掛けたりしなければなりません。揉めると精神的にも金銭的にもダメージが大きいので、避けたほうがベターです。

③夫婦とも経済的に自立している場合

対応としては、基本的には②と同じです。

ただし、パートナーの預貯金残高が不明な場合には財産分与時に不公平感を感じてしまうこともあるかもしれません。日頃からパートナーの預貯金口座残高がわかるような環境づくりをしておけるといいですね。

なるべくご自身名義の口座に、離婚後に必要となるだけのお金を確保しておきましょう。お互いに合意の上で、経済的にも自立している場合は、お金で揉めるケースは少ないと思いますが、どうしても互いに納得感が得られず話し合いが難航する場合は、弁護士に相談する選択もありだと思います。

お金よりも「円満離婚」を選ぶ理由

離婚は、よりよい人生を生きるためのひとつの手段です。現状のふたりにとって、離婚がベストだと思うから離婚をする。それは、結婚したことを否定するものではありません。これまで連れ添ってきたパートナーに、感謝の気持ちをもつ。それが、円満な離婚につながるのだと僕たちは考えます。

この前提で考えると、離婚に際して「金銭的に損をしたくない」といった考えは持たなくなるのではないかと思います。もちろん、離婚後に生活が成り立たなくなるようなケースは避けなければなりませんが、「パートナーより得したい」といった考えは持たない方が、最終的にいい結果を生みます。

なぜなら、もしお金に執着して相手と揉める期間が長くなればなるほど、負の感情を引きずることになり、心身ともに健康ではなくなるからです。お金は、健康な体があって働けば稼げるもの。そう考えると、少しだけ損をとったとしても、心身に負担のない「円満離婚」を選ぶのがベストです。

離婚が難しければ「卒婚(そつこん)」の選択肢も

ここまで、「離婚とお金」について話してきましたが、お金以外の何かしらの理由、例えば、お子さんがいる場合など親権の問題で、離婚という選択が難しい場合があるかもしれません。

そんなときは「卒婚(そつこん)*」という選択肢もあります。卒婚とは、離婚はしないけれど、夫婦が互いに干渉することなく個々の人生を自由に歩んでいくという生活スタイルのことを言います。同居、別居は問わず、経済的な自立も問いません。

(*教育ジャーナリスト・杉山由美子氏の著書『卒婚のススメ』で使用した造語)

ぜひ、ひとつの夫婦の形、生き方として知っておくといいのかなと思います。

人生の新たなスタートのために

本記事は、決して離婚を勧めるものではありません。離婚したいと思っていたけど、パートナーに感謝して生活するようになったら、夫婦関係もよくなるかもしれませんし、「卒婚」が今のベストな選択になるかもしれません。

人生は、選択の連続です。これまでの選択が今の自分と環境を作っています。そして、みな等しく過去に戻ることはできません。これからの人生は、あなたの選択によって決まっていきます。また、今のところ離婚する予定がなくても、いつ状況が一変するかわかりません。

もしも離婚の選択をするのであれば、適切な準備をしたり、これまで連れ添ってくれたパートナーへの感謝の気持ちを持ったりすると、次の人生のいいスタートが切れることでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございます。

あなたが幸せな人生を送ることを願っています。

ランドリーボックスでは、特集「#わたしたちの離婚」をはじめました。

「おめでとう」という言葉をもらって結婚した日。
「お疲れさま」という言葉を自分に投げかけて離婚した日。
どちらも私の人生の選択で、どちらも私の人生の通過点でしかない。

私が私らしく生きるため、貴方も貴方らしく生きるため、それぞれが決めた選択を労いたい。

ランドリーボックスでは、新たな一歩を踏み出したそれぞれの「離婚」をテーマに、個々人の生き方について考える特集「#わたしたちの離婚」を開始します。

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