写真=本人提供/Laundry Box

「そろそろ結婚相手を見つけないとね」

「花嫁姿を早く親に見せてあげて」

このような言葉、あるいは「忠告」は、言われている本人に結婚願望がない限り、いくら言われようともピンとはきません。

むしろ、将来結婚することを前提にした会話をされることに違和感を抱く人もいるでしょう。一方、結婚願望があって相手を探している人にとってはプレッシャーに感じるでしょう。

いずれにしても、このような言葉は未婚の人をいい気分にさせないですよね。

かくいう私も、結婚する前はいつも結婚について聞かれていたため、「偽装結婚してすぐに離婚すればバツイチになる。そうしたら周りは遠慮して結婚の話をしなくなるのでは…」とまで考えたことがありました。実現はしませんでしたが。

それくらい結婚について聞かれることを面倒くさく思っていたのです。

自分が経験して感じたことは否定しなくてもいい。けれど、他人には押し付けないで

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言う側は、正しいアドバイスをしているつもりでも、言われる側にとってはただの「余計なお世話」に感じてしまう…。

このような経験をした人も多いと思います。

他にも、こんなことがあるでしょう。

やんわり話を終わらせるために「結婚には興味がないんですよ」と言っても、「余計なお世話」なアドバイスをしてくる人は「幸せに気づいていないだけ」「早く幸せになってほしい」という一心で「ズレた」アドバイスをし続けてしまう。

なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか。

きっと結婚を勧める人たちは結婚から幸せを得る経験をしていて、結婚には価値があると思っているのでしょう。子育てで幸せを感じている人が「子どもは産んだほうがいいよ」と言うのと同じです。

その人が経験して感じたことなので、「結婚は幸せを与えてくれる」と心の内に思うことは間違っていないと思います。自分の人生に幸せを見出せるなんてすばらしいことですよね。

何が問題なのかというと、それを他人にも当てはめようとすることです。

「結婚の価値をあなたも知って幸せになってほしい」という善意の気持ちから結婚を勧めるのかもしれませんが、どんなことで幸せを感じるのかは人それぞれ違います。そのため、自分の価値観を他人に押し付けたら、それは「余計なお世話」になってしまいます。

押し付けないようにするためには、まずは自分の価値観を自覚することが大切です。人の価値観は、それまでの経験によっていつの間にか出来ているもの。そして、大抵が無意識、無自覚だと思います。だからこそ厄介です。

「価値観の違い」「価値観のズレ」

よく言いますよね。

「価値観を変えよう」「周りに合わせよう」という極端な話ではありません。価値観の違いやズレを認め、自分の価値観を押し付けちゃダメだよということです。

職場の上司に言ってしまったある言葉で、私が気づいたこと

Photo by Xie lipton on Unsplash

そういう私も、日常の何気ない会話で無意識に価値観を押し付けていたことがあります。

15年ほど前、出版社に勤務していたときのことでした。

既婚者の男性上司が、「夕食は100パーセント外食で、ひとり飯だよ」と言ったとき、私はとっさに「奥さん作ってくれないんですか?」と口走ってしまったのです。今なら冷ややかな空気が漂うであろう発言ですよね。

私がこのような言葉を言ってしまった裏には「妻はご飯を作って当然」という価値観があったのだと思います。「どうして奥さんはご飯を作らないんだろう…」と不思議にさえ思っていました。

夫婦は、お互いが幸せになるために結婚をするのだと思います。

しかし、そんな私には「夫をサポートするのが妻の役割」という古い価値観がありました。そして「妻はご飯を作って当然」という価値観も重なって、私は自分の夫でもない人に対して「奥さんのサポートがないなんてかわいそう」と思ったのです。余計なお世話ですよね。

それだけじゃありません。私が「余計なお世話発言」をしてしまった後、上司本人から「奥さんは忙しいし、ついでに俺よりも年収が上なんだ」という話を聞きました。それを聞いた私は「夫婦どちらも自立していてすばらしいな…」と納得してしまったのですが、ちょっと待って。

「妻の方が年収が上」という言葉に納得してしまった、というのはどういうことか。私は、自分のなかにさらなる偏った価値観があると気づきました。それは、

「年収が低い方がご飯を作る」「年収が高い方は家事を免除される」といった暗黙の了解のように存在している、年収の差によって決まる家事の役割分担です。

価値観の違いに出会ったら、自分の中の当たり前を見直すチャンス

そもそも、私のなかで「ご飯を作るのは妻、母」という価値観はどうして生まれたのか。その理由として、2つ思い当たります。

1つは、私がその当時直面していたことが関係していました。当時の私は不妊治療に行き詰まり、子どもがいない夫婦の生活が気になっていました。子どもがいないと夫婦はバラバラになるんじゃないかと不安に思っていた頃です。

私が15年前に出会った、男性上司には子どもがいませんでした。私は、彼やそのパートナーに対して、「子どもがいなくても夫婦2人で幸せに暮らしてほしい」という期待を抱いていたのだと思います。

そして、当時の私がイメージしていた「幸せな家族」は、妻の手料理を仲睦まじく囲む食卓の風景でした。妻の手料理があれば、子どもがいない夫婦でも、2人はバラバラにならず幸せに暮らせる…と思っていたのです。

実際は、妻が手料理を作っていれば幸せが保証されるなんてことは全くないのに。私の勝手な思い込みでした。

2つ目は、幼少期の影響です。

思い返すと、私の母は専業主婦で、手料理をよく振る舞っていたのを覚えています。「母=専業主婦」以外の姿を知らなかったし、周りの家庭でも母親または妻は専業主婦が多い時代でした。これが普通なんだと思ったまま、月日は流れていきました。

今は、性別で家事の役割を決めるのはナンセンスだし、その家庭の状況でそれぞれ決めれば良いと心底思っています。外食も大賛成。

価値観は、育った環境や経験してきたことの積み重ねで無意識のうちに作られていることが多々あります。自分が積み上げてきた価値観は大事にしていいんです。

けれどそれと同時に、価値観は自らの学びや、出会った人からの刺激で日々アップデートできるものだとも思っています。私も失敗を重ね…アップデートしているところです。

最後に。結婚の話に戻りますが、結婚しない人が増えても、結婚している人の人生を否定しているわけではありません。ほかにも幸せの道があるというだけ。そんな選択肢もあるんだな、と自分が歩んでいない道でも尊重できれば素敵ではないでしょうか。

気持ちのいい対人関係を作るには、価値観を押し付けないことが鉄則。自分とちがう価値観を持っている人に出会ったとき、耳を傾けてみると、どんどん価値観の幅が広がりますよ。

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