生理のときに、レバー状の血のかたまりが出てきて心配したことはありませんか?少量なら心配いりませんが、大量に出る場合は過多月経の可能性があります。過多月経の症状や、原因となっている可能性のある病気、治療法について伝えます。
経血量が多いと、血のかたまりが出ることがある
本来、生理の経血はプラスミンという酵素の働きによって、サラサラになって子宮から外に排出されます。出血の量が普通のときは、酵素によって経血は固まらずに子宮からスムーズに排出されます。
しかし、過多月経などで経血量が多い場合、酵素の働きが追いつかず、サラサラにできなくなりドロッとしたレバー状の血のかたまりが出ることがあります。
レバー状の血のかたまりが出ただけで、なにかの病気ではありませんが、血のかたまりが多かったり、経血量が多かったりする場合は「過多月経」の可能性があります。
過多月経とは、生理用ナプキンが1時間もたないくらいの出血がある状態
過多月経とは、日常生活に支障が出るくらい経血量が非常に多い状態を指します。正常な経血量は、個人差はありますが1回につき50cc~140ccくらいです。
普段、生理の出血は測らないので次のような目安があります。生理用ナプキンを替えて1時間ももたなかったり、夜用のナプキンでも血があふれてしまったり、動悸や疲れやすいなど貧血の症状があるときは、過多月経の可能性があります。
過多月経の場合は大量に出血が続くため、貧血になっていることが多いです。
過多月経の原因となる病気
過多月経は、以下のような原因が考えられます。
・子宮に関連する病気
子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症などの病気が原因の可能性があります
・女性ホルモンや血液の異常
女性ホルモンが乱れていて排卵がうまく起こらず、子宮内膜が厚くなってしまい、経血量が増えていたり、血を固める成分が不足しているために出血が止まりにくくなっている。
過多月経の治療方法
過多月経を治療する方法は以下の通りです。いずれの場合も婦人科で相談してみましょう。
1.薬物療法
・IUS(ミレーナ)
IUS(ミレーナ)は、女性ホルモンである黄体ホルモンが少しずつ溶け出てくる仕組みがある子宮内避妊器具で、避妊だけでなく過多月経の治療にも使用されます。
IUS(ミレーナ)から放出される黄体ホルモンには子宮内膜の増殖を抑える働きがあり、子宮内膜が厚くなりにくいです。そのため、生理の量が減り、生理痛を軽くする効果があります。
病院やクリニックにより金額は異なりますが、過多月経の治療で使用する場合は、保険適用となるので、3割負担の場合で約1万2,000円で、5年間入れておくことができます。
IUS(ミレーナ)については、「IUS(ミレーナ)の効果、費用、注意点を解説(医師監修)」の記事でくわしく紹介しているので、興味のある方はご確認ください。
・低用量ピル
低用量ピルを服用すると子宮内膜が厚くなりにくいため、過多月経や生理痛の症状が緩和します。避妊用のピルは自由診療なので基本的に保険適用外ですが、過多月経や生理痛の痛緩和のために処方する場合は保険診療となり、1シート3,000円前後です。
低用量ピルについては、「ピルを服用する7つのメリットと服用方法。気になる副作用もチェック(医師監修)」の記事でくわしく説明しているので、確認してみましょう。
2.外科的治療
子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症などの病気が原因で、過多月経になっている場合は、病気そのものの治療をする必要があります。それぞれホルモン治療や手術などの方法があります。
レバー状の血のかたまりは少量であれば心配する必要はありませんが、量が多い場合は過多月経の可能性があります。気になる方は、早めに婦人科の医師に相談してみましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。