毎月の生理で出血する女性は「鉄欠乏性貧血」になりやすく、40代になると約25%が鉄欠乏性貧血に該当するといわれています。さらに、生理のある女性の約半数は鉄欠乏状態です。
立ちくらみや動悸・息切れ、疲れやすいなどの症状を感じている人は注意が必要です。この記事では、生理による貧血の症状や原因、対処法について説明します。
貧血の症状は動悸、息切れ、立ちくらみ、疲れやすい
鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄が不足することで、身体に酸素を届けるために必要な赤血球内のヘモグロビンが作れなくなってしまい、身体の組織が酸欠状態になることを指します。
そのため、以下のような症状がでます。
・動悸、息切れ
・疲れやすい
・立ちくらみ
・ふらふらする
こうした貧血の症状を度々感じている場合は、婦人科に相談してみましょう。女性の場合、血液検査でヘモグロビンの値が12g/dL以下になると、貧血と診断されます。
鉄欠乏性貧血の原因
女性の鉄欠乏性貧血には、定期的に血液を排出する生理が大きく影響しています。婦人科疾患である子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などが原因で経血量が増え、鉄欠乏性貧血になることもあります。
また、鉄分の必要量が増える妊娠中や出産、母乳によって鉄分を消費する授乳期は、鉄欠乏性貧血になりやすいので注意しましょう。
生理による貧血の治療や対策
生理による貧血の治療や対策は以下の通りです。
1.原因になっている病気を治療する
婦人科系疾患が原因の鉄欠乏性貧血の場合は、根本となっている病気を治療します。
2.鉄剤の服用
貧血がある場合は、鉄剤を服用して体内の鉄分を増やします。身体の中の鉄分が足りていない場合は、食事だけで貧血を改善することは難しいことが多いため、サプリメントや鉄剤の内服をお勧めします。
3.低用量ピルの服用やミレーナの使用
生理の経血量を減らすために、低用量ピルの服用やミレーナを使用するという選択肢もあります。低用量ピルを飲んだりミレーナを使うと子宮内膜が厚くなりにくいため、経血量が減少するためです。
避妊のために使うピルやミレーナは自由診療なので基本的に保険適用外ですが、経血量が多い過多月経の治療でピルやミレーナを使う場合は保険診療となり、3割負担と安くなります。
低用量ピルについては、「ピルを服用する7つのメリットと服用方法。気になる副作用もチェック(医師監修)」の記事でくわしく説明しているので、確認してみましょう。
生理による貧血を予防するためにできること
1.鉄分を多く含む食材を積極的に食べる
貧血の症状が重くなく、貧血を予防したい場合は、食事療法やサプリメントで鉄不足を補いましょう。
食材が摂取できる鉄には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。
・ヘム鉄
ヘム鉄は、肉や魚などの動物性食品に含まれていて、身体への吸収率が高い性質があります。
例:レバーやまぐろ、かつお、あさり、豚肉や牛肉など
・非ヘム鉄
非ヘム鉄は、植物性食品や卵・乳製品に含まれます。非ヘム鉄はタンパク質やビタミンCと一緒に摂取すると体内の吸収率がアップします。
例:小松菜やほうれん草、納豆、豆腐、卵など
こうした食材を意識して日々の食事に取り入れてみましょう。
2.ビタミン類を摂取する
血をつくる効果のある以下のビタミンを、食材やサプリメントで摂取しましょう。
・ビタミンC
ビタミンCは、先ほど説明した非ヘム鉄の吸収を高めるのに役立ちます。
・ビタミンB12と葉酸
ビタミンB12と葉酸は、ヘモグロビンを含んでいる赤血球をつくるために必要です。以下の食材は、鉄分を多く含む食材でもありますので、積極的に摂取しましょう。
ビタミンB12:牛レバー、豚レバー、魚介、貝、卵黄、チーズなど
葉酸:牛レバー、豚レバー、卵黄、大豆、納豆、ほうれん草など
貧血が慢性化している人は、知らず知らずのうちに疲れやすかったり、体調が万全ではない状態に慣れてしまっていることがあります。貧血を治すだけで、体の調子がよくなったり快適に日常生活を送れたりすることも。
まずはご自身の生理の量や貧血の状態を一度確認して、治療や対策を始めてみてください。
現在、貧血の症状がそこまで重くない人も、女性は鉄欠乏性貧血になるリスクが高いので、日頃から鉄分やビタミン類を意識して食事をとるようにしましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。