「骨盤底筋が弱くなると尿もれしやすい」「出産後や更年期は骨盤底筋がゆるみやすい」などと聞いたことがある人もいるでしょう。尿もれに悩んでいる人はもちろん、骨盤底筋を鍛えるのは女性にとっては大事なこと。今回は骨盤底筋を鍛えるメリットや骨盤底筋体操を紹介します。
骨盤底筋とは
骨盤底筋は、お尻にある尾骨から恥骨にかけてつながっている筋肉の集まりです。骨盤内にある子宮や膣、膀胱、直腸などを下から支えています。
骨盤底筋は、骨盤内の臓器が正しい位置にあるように支えたり、尿道を締めて排尿をコントロールしたりする役割をもっています。
そのため、骨盤底筋が弱くなってしまうと、尿もれを起こしやすくなってしまうのです。
骨盤底筋はなぜ弱まってしまう?
骨盤底筋が弱くなる理由はいくつかあります。
妊娠・出産
妊娠中はお腹にいる胎児の重さで骨盤底筋に負担がかかった状態になっており、尿もれを起こしやすいです。また、経腟出産では骨盤底筋にダメージがおき弱まってしまうことがあります。
更年期・閉経
骨盤底筋の筋力は女性ホルモンであるエストロゲンが影響しているといわれています。閉経が近づくとエストロゲンの分泌量が減少して、骨盤底筋がゆるんでしまうのです。
肥満
肥満によって脂肪が増え、その重みを骨盤底筋が支えることになり、たわんだ状態になってしまいます。
便秘
便秘がちな人はいきんで排便をすることが多いため、骨盤底筋が弱まる可能性があります。
骨盤底筋が弱まると、尿もれを起こしやすくなる
尿もれにはさまざまな原因が考えられますが、骨盤底筋がゆるむことで尿もれを起こしてしまう場合は「腹圧性尿失禁」といわれます。
その名の通り、お腹に力が入ったときに尿が漏れてしまう状態のことです。重い荷物をもったり、咳やくしゃみをしたりするときに起こります。人によっては笑ったときや性行為時に尿もれを感じる人もいます。
骨盤底筋以外が原因の尿もれについて知りたい人は「尿もれの原因や対処法について(医師監修)」の記事を確認してみてください。
軽度の尿もれは、骨盤底筋トレーニングで改善が期待できる
骨盤底筋は鍛えられる筋肉なので、トレーニングをすることで筋力を高められます。
軽い尿もれの症状がある人や尿もれを予防したい人は、骨盤底筋トレーニングを行ってみましょう。
具体的には、以下の2~3を1日5セット以上行います。(1日数回に分けて大丈夫です)
1.仰向けに寝て膝を立て、足を少し開きます。膝の間はこぶしひとつ分くらい開き、体の力をぬきます。
2.肛門を閉めながら、腟と尿道も10秒くらいギューと締め、息を吸いながら肛門と腟を胃の方に吸い上げるように力を入れます。その後、30秒くらいリラックスします。ここまでを1セットとして、10回繰り返しましょう。
3.同じように肛門、腟、尿道を閉める動作をさらに速いテンポで行い、この「キュッ(締める)、パッ(緩める)」を1セットとして、10回繰り返します。
椅子に座った状態でトレーニングをする場合は、椅子に浅めに腰かけて、背筋を伸ばし、両足は肩幅に開き、肩の力をぬきます。お腹に力を入れないようにして、上記の2~3の動きを繰り返しましょう。
また、軽度の尿もれが気になる場合は、尿もれ専用の吸水パッド(例:natracare オーガニックコットン 吸水パッド)などを使用すれば、ニオイや衣服の濡れを心配しなくてもすみます。
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40歳以上の女性の40%以上が尿もれの症状があるといわれています。骨盤底筋が弱くなったことによる軽度の尿もれは、トレーニングにより症状の改善が期待できます。
ただし、尿もれの原因によっては治療や手術が必要な場合もあります。尿もれがひどい方や、骨盤底筋トレーニングでも症状が改善しないときは、泌尿器科やウロギネ科(女性泌尿器科)などを受診して、検査や治療方法を相談してみましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。