画像=特定非営利活動法人Alazi Dream Project プレスリリース

シエラレオネ共和国において教育支援活動を行う特定非営利活動法人Alazi Dream Project(以下、NPO法人アラジ)が、シエラレオネの男女平等社会の構築を目指し、中高生男子に対する性教育プログラム「ハズバンドスクール」の活動を100校・1万人に届ける。

西アフリカの西部、大西洋岸に位置するシエラレオネでは、予期せぬ若年妊娠や性暴力により、10代の女の子が教育機会を失う社会問題が存在している。NPO法人アラジは問題の根本的解決を目指して、ケネマ県にあるパートナー団体「Global Village Network」と協働で中高生男子に向けた性教育プログラムを2021年に開始した。

ハズバンドスクールとは

ハズバンドスクールでは、コンドームの正しい装着方法をレクチャーする。
画像=特定非営利活動法人Alazi Dream Project プレスリリース

NPO法人アラジが活動するシエラレオネ共和国ケネマ県では、約17%の10代女性が若年妊娠によって初等・中等教育を退学、教育を受け続けることが困難な現状がある。ボーイフレンドとの間に子どもができたものの、相手が経済的責任を果たせずシングルマザーになってしまうケースが多いという。

その解決のために立ち上がったハズバンドスクールでは、1人1冊テキストを配布し、男子中高生へ向けた1時間のセッションを実施。

プログラム実施前にアンケートで知識・意識レベルを把握し、女性の身体の仕組みや避妊具の正しい使用方法、女性の尊厳・権利、10の性的同意パターン、性加害を起こした場合の具体的な刑罰、性暴力を受けた場合の適切な連絡機関や、治療・アフターケア・訴訟のサイクルなどについて、専用のテキストを元に授業を行う。

テキストは、シエラレオネ地域特有の課題や価値観、認識などに留意して、シエラレオネ国内の法律・規則・政策等に沿って制作を行った。

ハズバンドスクールで使用するテキストの一部。
提供=特定非営利活動法人Alazi Dream Project

セッションで扱う項目は以下の通りだ。

  • 女性の権利・教育の重要性
  • 生理や出産などのリプロダクティブヘルス
  • 性加害を起こした場合や示談した場合の刑罰
  • 女性が被害者となった場合の適切な連絡機関と電話番号
  • 女性が被害者となった場合の治療・アフターケア・刑事訴訟のサイクル
  • 性的同意の10パターン

NPO法人アラジが行った事前調査によると、ケネマ県の学校では、性教育がまったく行われていないことがわかった。またシエラレオネの5割の小・中学校は水道設備や給食設備等が不十分で、ほとんどの学校には保健室がないという。

今回のプログラム実施前に行ったアンケートにおいても、対象となる30名の男子生徒のうち全員が、家庭・学校で性教育を受けたことがなく「今回はじめて知った」という回答をしている。

多感な時期の中高生を対象にすることに効果がある

画像=特定非営利活動法人Alazi Dream Project プレスリリース

プログラムの対象を中高生の男子に絞った理由について、NPO法人アラジ代表の下里夢美氏は「女性の健康や権利についての価値観が固まってしまう前に、男性のマインドセットを変える必要があり、多感な時期にプログラムを実施することに効果があると考えている」と語る。

今回の取り組みでは、ケネマ県の男子中高生の3〜8割をカバーできる予定だという。しかし、シエラレオネにおいては男子高校生に該当する年齢の男性のうち、3分の2しか高校に進学していない。

「学校にいない男子や大人の男性にプログラムを提供するには、地域で参加者を集めるためにリフレッシュメント(軽食などのインセンティブ)を用意するなどの必要があり、今回の実施予算では困難でした。まずは中高で実施することといたしました」(下里氏)

また、実施地域をシエラレオネ首都のフリータウンでなくケネマ県に選定をした理由についてはこう語った。

都市部より農村部のほうが女性差別的慣習が色濃いこと、また農村部でありながら比較的都市化が進むケネマ県では事業のロールモデルが作りやすいと考えたため、まずはケネマ県で大規模に実施したいです」(下里氏)

シエラレオネにおける若年妊娠の現状

画像=特定非営利活動法人Alazi Dream Project プレスリリース

NPO法人アラジではハズバンドスクールの開始に先立ち、2021年5月から「10代のシングルマザー復学支援」を実施している。若年妊娠によって初等・中等教育を中退している10代のシングルマザーが、再び教育の機会を獲得し、経済的な自立や夢への実現を後押しすることを目的とした活動だ。

シエラレオネにおける10代女子の若年妊娠には、「レイプなどの性暴力の蔓延」や「学校での十分な性教育の不足」「家庭内での性教育のタブー視」「避妊具へのアクセスの難しさ」が理由にあるという。

2020年まで、シエラレオネの政府は妊娠中の女子生徒の通学を禁止するという処罰的措置を施行していた。復学可能となった現在もスティグマが残り、女性たちはもう一度学校で学ぶことに対してさまざまなトラウマを抱えている。

また、シエラレオネにおける10代女子の死亡原因の1位は「出産」だ。10万人あたりの妊産婦の死者数は1,000人を超えている。日本における10万人あたりの妊産婦の死者数は3.3人であることから、出産が命の危険と隣り合わせであることがわかる。

NPO法人アラジは、男性側が避妊に理解を示さず子育ての責任も取らないため、女性だけがスティグマを負っている現状を変えるためにも、問題の根本解決を目指してケネマ県全体でのハズバンドスクールの実施を進めていく予定だ。

下里氏いわく、3月8日の国際女性デーには毎年大規模なパレードが開かれる。大統領夫人や女性市長の影響で、女性の権利意識の向上にも近年注目が集まっているそうだ。

新型コロナウイルスによる影響は、一時ロックダウンや学校閉鎖などもあったが、現在は普段どおりの生活が続いている。その一方で、物価高騰やインフレなどの経済悪化によって、初等教育を完了することなく、現金を稼ぐためセックスワークに就職する女性も多くいるという。

女性の尊厳が守られる社会を築くための第一歩

シエラレオネの子どもたちと、NPO法人アラジ代表の下里夢美氏。
画像=特定非営利活動法人Alazi Dream Project プレスリリース

NPO法人アラジは、「最貧困に陥る子ども達と家庭に対する支援を軸とした2050年までの活動目標」を掲げている。

「すべての事業をまずは行政とともにスケールアップできる体制を整えていくことを2030年までの理想としています。2050年には教育に関する現在のSDGs目標が達成され、弊団体の資金を『シエラレオネの貧困家庭の高校生が、大学進学時の奨学金(返済)として充てられること』が理想と考えています」(下里氏)

後発途上国であるシエラレオネでは、世の中の社会変容から取り残されている国のひとつだ。SDGsが共通言語、共通認識として世界中で語られる現在においても、シエラレオネの最貧困家庭の子ども達はSDGsの存在すら知らない。

女性の尊厳が守られ、誰にとっても等しくチャンスを手にできる豊かな社会をシエラレオネで築くための第一歩として、未来を担う中高生男子に対して「ハズバンドスクール」を届けていくという。

New Article
新着記事

Item Review
アイテムレビュー

新着アイテム

おすすめ特集