画像=Laundry Box

近年、日本の大企業も「フェムテック」に注目し、続々と参入しています。

今までは海外発の便利で素敵なフェムテックのアイテムやサービスを、指をくわえて見ている状況でしたが、それが変わりつつあります。

今回ご紹介するのは日本企業から立ち上がったフェムテックのプロジェクト。経済価値だけではなく、社会課題解決に焦点をあてた女性たちが主導しています。

リコーのインド柄下着ブランドの「Rangorie」

Rangorie(ランゴリー)はインド人女性向けの下着ブランドで、インドの農村部の女性の雇用創出にもなるブランドです。リコーで社内起業された綿石早希さんに話を聞きました。

画像=Rangorie提供

ーー社内起業を志したきっかけを教えてください。

綿石さん(以下、綿石):きっかけは3つあります。

1.男女の役割意識から解放されるようなサービスをつくりたいと考えていたこと。

私は愛知県の保守的な家庭で、男女の役割意識を強く感じながら育ちました。社会人になりアメリカに駐在した際、窮屈だと思っていた男女の役割意識に自分自身が強く縛られて生きていることに気がつきました。そして、その殻を破るのに苦労しました。

日本に帰国してからは、女性の同僚や後輩たちが同じように役割意識にとらわれて、思いっきり活躍できない現状がより目につくようになりました。そんな経験から、性別による役割意識から解放できるような商品やサービスを開発できないかと考えていました。

※詳しい経緯はこちらのNoteから。

2. 社会人経験が10年を超え、経験・人脈・自信がついてきたこと。

一方でソフトウェアエンジニアとして3年、海外のITシステム構築商談の技術支援を3年、ITシステム導入のコンサルタントを2年、商品企画を2年、デジタルマーケティングを1年と、システム商材の川上から川下までひととおりの経験を積んできました。

さらに2018年からカナダの大学でのMBA取得に取り組んだことで、周囲に事業を興している人や社外のプロフェッショナルたちが増え、自分でも作りたいサービスをつくることができるんじゃないかと思えるようになりました。

もともと画像認識系のエンジニアだったため、当初は3Dスキャンで身体をスキャンし、一人ひとりの身体に合った下着や靴を製造するシステムを考えていました。

3. インド女性の置かれている状況を知ったこと。

そんなとき、現在の事業パートナーである江副と日本で久しぶりに再会しました。彼女は2010年に滞在したインドの農村部で男女の格差を感じた経験や、男性が下着を販売しているという状況から下着を作りたいと思っていたと打ち明けてくれました。そこで、ぜひ一緒にやろう!とビジネスプランを書き上げ、社内起業プログラムに応募したのがきっかけです。

※江副さんの農村部での体験談をつづったNoteはこちらから。

インドのかわいい!を世界中に届けたい

ーーフェムテックの領域でもある吸水ショーツやナプキン生産のプロジェクトも計画中のようですが、事業を通じてどのようなメッセージを伝えたいと考えていますか?

綿石:Rangorieは「一人ひとりが可能性を最大限に発揮できる社会をつくる」ことを目指して活動しています。

その手段として、インドのかわいい!を世界中にお届けしたい。かわいい!とテンションの上がる下着で、生理の日でもパフォーマンスを最大限に発揮してほしい。さらにはかわいい下着を身に着けることで、インドの農村部に雇用を生みだし女性同士の連帯を強める一助となりたい。

仕事を通じて家計や社会に貢献することで、今まで職業機会に恵まれなかった女性たちが自信をもって笑える社会にしたい。

欲張りですが、そんな想いで事業開発しております。

※月経用ショーツ及びナプキンプロジェクトの詳細についてはこちらの連続Tweetで詳しく書いていますのでもしよろしければ見てみてください。

クラファン開始から10時間で目標達成

ーーサービス提供(発表)後の反響や今後のサービスに向けた展望を教えてください。

綿石:当初はインド市場に向けて販売する予定でしたが、コロナ禍の影響を受けて一時的に日本での販売活動を展開しております。

日本市場で経験を重ね、品質向上に取り組みながらインドでの生産体制を整える計画です。

その第一歩となるクラウドファンディングを2021年3月1日から開始していますが、「インドの伝統柄をあしらった下着」に対する反応は当初予想していたよりも好評で、目標金額の50万円(ブラの枚数にして75枚)をクラウドファンディング開始から10時間ほどで達成しました(編集部注:現在、募集終了していますが、約300%の達成率で成功していたようです)。

日本にも一定のニーズがあることが分かったので、次のステップとして、クラウドファンディングで支援してくださったお客様の声に確実に応えながら、品質向上を図ることを目指しています。

そうすることで、インド市場の期待を上回る商品をインドで生産できるようになり、日本発のインド柄下着ブランドをインドで立ち上げる道筋も見えてきます。成長著しいインドの市場をつかむことができれば、現地でより多くの職を生み出し地球規模で女性同士の連帯を強めることができ、自分らしく可能性を発揮できる人がもっと増えると考えています。

大手総合商社の丸紅がフェムテックに参入する理由

フェムテックへの参入を発表した大手総合商社の丸紅。女性だけのチームを作って新規ビジネス創出を狙っている。丸紅の経営企画部・野村優美さんに話を聞きました。

ーー丸紅が「フェムテック」ビジネスへの参入を決めたきっかけを教えてください。

野村さん(以下、野村):丸紅では、昨年度より国内ビジネスをいっそう推進すべく専門組織ができました。既存事業の強化や連携創出に加え、これまで丸紅として取り組んでいなかった新しい事業分野でのビジネス開発を進めており、世の中の大きなトレンドを捉えつつ社会課題を解決する形での取組みを進めています。

フェムテック分野は、「女性の社会進出」「健康経営」「企業の多様性」といった切り口からも、解決していくべき潜在的な課題も多くあります。そのため、取り組む意義があり、市場成長も見込めると判断し、事業化に向けたプロジェクトを開始しました。

多くの産業(ICT、ヘルスケア、アパレル、生理ナプキン製造販売、海外事業会社など)や国内・海外企業に接する総合商社ならではの切り口でできる事があるのではないか、と考えています。

まだまだ男性社員の割合が多い商社が、率先して女性の健康課題を考えるのも面白いと思い、チャレンジしています。

セミナー参加の男性社員からも反響

ーーフェムテック領域の参入に向けて、社内で生理痛などで悩む女性社員のための福利厚生制度を導入されたそうですね

野村:事業化にむけてはメンバー間でディスカッションを進めています。一方、フェムテック事業を検討するからには自分たちでも実装してみよう、という意見があり社内導入を決めました。

実際のユーザーとして社員の声を聴いたり、潜在需要・ペインポイントを拾い上げることで、ヒントとして事業化につなげていきたいと考えて導入したものです。

第1弾の「女性のカラダに関する知識セミナー」は、参加した男性社員からも反響がありました。男女ともなんとなく「話題にしてはいけない」と思い込んでいるものの、実はしっかり知る機会があれば、ハードルは高くないのかもしれない、ということも実感できました。

導入にあたり多くのフェムテックプレーヤーさんと関係を構築できたことも、今後の事業化に向けた良いネットワーキングになりました。

ーーサービス提供(発表)後の反響や今後のサービスに向けた展望を教えてください。

野村:フェムテック市場は新規事業分野として、社内でも後押しを受けており、事業参画・社内導入については、産業医を含め社員からポジティブな反応が多くありました。

プロジェクトに参加したいと言ってくれるメンバーも国内外で増えており、チームも強化されてきていますので、スピード感を持ち事業化に向けて推進していきたいと考えています。

当社の取り組みが少しでも市場の成長の補助にもなり、結果として女性の社会進出支援やウェルビーイングに繋がり、ひいては企業の多様化が進み日本企業の競争力強化に貢献できればと考えています。

誰もが知っている企業も変化する価値観に着目

ビジネスの領域で女性の健康課題解決が進むことで、課題が可視化され、男性と対話する機会も増えます。女性の健康課題は解決するべき範囲が広く、内容によっては経済面だけではなく公的な支援が必要です。

しかし、まだまだ男性が多くを占めるビジネスの領域で女性が活躍しやすい変革も必要です。

今回取材した2社とも、経済価値のためだけではなく、女性が社会で置かれた状況をより良くするため真摯にフェムテックに取り組もうとしている姿勢が伝わってきました。

誰もが知っている企業がフェムテックに取り組むことで、日本でフェムテックが広がり、誰でも手に入れやすいアイテムやサービスが増えることを期待しています。

フェムテックとは?

Female(女性)×Technology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、生物学的女性の健康課題をテクノロジーで解決するヘルスケアのジャンルです。

「生理」「更年期」「婦人科系疾患」「不妊・妊よう性」「出産・育児」「セクシャルウェルネス」などのカテゴリがあり、それぞれの問題をタブー視せず、前向きに解決するためのサービスやアイテムが数多くあります。フェムテックの市場規模は、2025年には5兆円規模に成長するといわれています。

(グローバル有力市場調査会社Marcket Research Future調べ)

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